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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
目を背けていられない事態に発展しそうです!!
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驪珠こと烏丸は全くわからない場所にいることに混乱しています。

 昔、母名義の屋敷に住んでいた頃はいたずらに、おいかけっこをしていたが、今はストッキングにミニスカート、そして胸の開いた服はよく肩からずり落ちる。

 その度に必死に直しつつ、隠れられそうな場所を探すが、隠れたと思うと幼い子供たちが、


「お母さん!!お化け!!お化けだよ!!ここにいる!!」

「こっちね!!烏丸からすまる!!キラキラ頭は目立つみたいよ!!」

「なんなのよ!!この屋敷は!!日本庭園?どこの豪邸よ!!」


 叫びながら逃げる。


「しかも、何で日本庭園に弓矢とか……うぎゃぁぁ!!鶏~!!」


 庭に放されていた鶏が爪を立てて飛びかかってくるのをよける。


「何やっているの?金ぴかおばちゃん」


 鶏を抱き上げた少女は首をかしげる。


「金ぴか金ぴかってなんなのよ!!」


 怒鳴ると、大きな丸い瞳の愛らしい少女が、くしゃくしゃの顔になり、


「おかぁしゃまぁぁ!!おかあしゃまぁぁ!!おとうしゃまぁぁ!!」


泣きじゃくる声と、抱き締めている鶏の鳴き声に耳を押さえる。


「どうした!!明子あきこ


 現れた長身の男が、鶏を後ろにいた子供に預け、明子と呼んだ少女を抱き上げる。


「ふぁぁぁん!!けやきおとうしゃまぁぁ!!金ぴかおばちゃんが怒ったぁぁ!!」

「金ぴか……ぶぶっ!」


 あははは!!


冷えた眼差しの男が、本当に愛おしげに笑顔を向ける。


「大丈夫。明子?お母さんが呼んでいたよ?行っておいで」

「はーい!!けやきおとうしゃま。あきちゃん、おかあしゃまとお昼寝!!いってきます、なの!!」

「転んではいけないよ。行ってらっしゃい」

「はーい!!」


 走り去る少女を見送っていた男は振り返ると、冷たい眼差しで見下ろす。


「確か、義母上は烏丸と言っていたか?なぜここにいる」

「知らないわよ!!それよりも、どう言うことよ!!ここはどこなのよ!!」

「黙れ!!下女にもなれん者が!!仮にもこの屋敷の当主一族の者に対する物言い、斬られても文句は言えんぞ!!」


 端整な青年の鋭い眼差しに後ずさる。


「な、何なのよ!!じ、時代劇!?どう言うことよ!!」

「……ふんっ、詳しく聞け。神五郎しんごろう

「兄上……あぁ、早速騒動を起こしたか……あの変人の言うことを聞くんじゃなかった」


 現れたのは、りりしい青年。


けやき兄上。姉上は?」

「あの体であれ以上は……本人は良いが、周りが困るので押し込めといた」

「そうですね。でも、采明あやめは……」

「奥さま!!采明さま!!」

「大丈夫よ」


 とことこと姿を見せるのは、右腕を吊った小柄な少女と先程の幼女。

 手を繋ぐ二人を、数人の侍女に見守っている。


「あ、旦那様。欅お兄様……」

「おかあしゃまぁぁ、金ぴかおばちゃん!!金ぴかおばちゃんなの!!」


 少女の手を繋いでいた幼女は、示す。


「金ぴかおばちゃん……あぁ、あれはね?真っ黒な髪を色を抜いて、手入れを怠ったせいなのよ。抜くのなら手入れもきちんとしないとね。髪の毛や肌は大事な宝物よ?あきちゃんはおばあちゃまに似てとっても美人になるから、ちゃんとおばあちゃまのようにね?」

「あい!!でも、あきちゃん。おかあしゃまみたいに可愛いがいいなぁ」

「あら。あきちゃんは可愛いわよ?お母様の自慢だもの」


 にっこりと微笑む。


「何なのよ!!人のことを散々虚仮にして!!何様のつもり!!」


 烏丸の声に振り返った采明は、にっこりと微笑む。


「烏丸だったかしら?きちんと仕事をお願いね?丁寧な仕事、上品な立ち居振舞い、そして、そのはしたないにも程がある服は脱ぎなさい!!そして吉野きつの、貴方にこの子のことをお任せします。良いですね?」

「かしこまりました。奥方様」

「あぁ、その服は染みを落として、綺麗にしたら、子供たちのお人形のお洋服にしますからね。捨ててはダメですよ」

「はい。解っておりますわ!!」


 吉野は微笑むと、


「行きますよ。烏丸。まずは着物から……ついて参れ!!」

「な、なんですって!!この私に、命令?しかも、このブランドのドレスを!!」

「ブランド?」


 戻りかけた采明は、


「ブランドブランドと!!私より年の下の子供が纏うような衣ではないわ!!自分で稼いで購入した訳でもなく、着せ替え人形の貴女程度が着るに相応しい訳はないでしょう!!相応しいのは、義母上のように自分に誇りと自信を持ち、生きる道を正直に生き抜いた存在です!!貴女のような小娘が着て、笑うしかないわ!!」

「な、なんですって!!」

「同じ言葉を繰り返す……知恵がないのかしら?九官鳥以下ね。では、目に入れるのも恥ずかしい!!すぐに連れていきなさい!!爪を切り、裂けたストッキングは、洗って掃除に使いなさい。革のものを磨くと良いわ。そして、髪の色は恥ずかしいので手拭いで隠しなさい。良いですね?吉野」

「はい。ご命令の通り」


 吉野はずるずると引きずって去っていく。

 その姿に、神五郎は、


「あれ、良いのか?」

「厳しいですか?」

「いいや。あの者が毎日暴れまわると迷惑だ」

「大丈夫ですよ。義母上とお姉さまにお願いして、正明まさあきくんたちの遊び相手もさせるつもりです。一石二鳥!!働かぬものは食うべからず!!しかし、彼女は14ですが老けてますね……と言うか、私が成長していないのでしょうか……」


首をかしげる妻に、神五郎は、


「何を言う、采明は本当に花のように美しい、私の自慢の妻だ」

「これからも頑張って努力します!!」

「おい、二人でいつものは良いけれど、あの烏丸がこんなものを落としていったぞ」

「何だ?」

「あぁ、ライターですね……未成年の……特に女性のタバコは将来に影響があると言うのに、こちらにも知恵がないのかしら?」


ため息をつくと受け取ったライターを、シュッシュっと親指で擦り、炎をあげる。


「うわぁ!!まじないか!?」

「いえ、ここまでの機械の原理はある程度わかります。作れませんが、原理をお教えしますね」

「じゃぁ、采明。冷えては体に堪える。部屋に戻ろう」


 4人は戻っていたのだった。


 そして、烏丸の着ていたブランドのドレスは、言葉通り洗われ切り刻まれて、お人形やテディベア、お人形の服に変わり、烏丸は嘆いたのだった。

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