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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
再び登場!!本当に順応が早い景虎くんです。
48/87

ところで凱旋リサイタルについて、首相と警視総監は……。

「本当に……本気で、りたいと思ったわ!!あの警察庁長官のあの態度何!?」


 新潟に一応リサイタルを聞きに行くのと、警備に不備はないかと確認のために、身分を隠して出向いたと言うのにあの散々な記者会見に、首相は怒る。


「もう、文謙ぶんけんちゃんだと、普段と、仕事の時のキレかたが恐ろしいって評判だからあいつにしたのに!!妙才みょうさいちゃんだと、あたしが警視庁警察庁を掌握しちゃったって思われちゃうし……」


 ぶつぶつと呟いているのをほったらかし、かかってきた電話に冷静に対処していた元譲げんじょうは声をあげる。


「はぁ!?遠藤……?どういうことだ?」


 しばらく聞き入り、そして、


「まぁ……しばらく考えておけ。後日、見舞い兼話し合いに伺う」


電話を切った元譲は溜め息をつく。


「どうしたのーん?」

「遠藤が、職を辞したいと言っている」

「はぁ!?はるかちゃん、何かしたの?」

「いや、何も出来なかったことを悔やんで、職を辞して、大怪我をおっている咲夜さくやと言う少女のリハビリについて手を貸したいのだそうだ」


 呆気に取られる首相に、


「まだ12才の賢い子供で、突然拳銃で打たれ、それまでは日々動き回っていたと言うのに、自分のせいでと責めているらしい」

「悪いのはあのばかよ馬鹿!!でも……そうね。緊急に春の国の公主が来日されるし……、その時に相談してもいいわ。こっちが本当に全面的に悪いのだし……遼ちゃん自身は悪くなくても部下があんなことをしでかしたら、あの遼ちゃんなら辞職よね……」

「……そうだな」


元譲は溜め息をつく。


「先は先で、瓊樹けいじゅは大泣きするし……帰るのが怖いな」

「あらぁ?浮気でも……」

「するか!!ボケ!!瓊樹は、景虎君がお気に入りで、今日、本当は親友である瑠璃るりどのの厚意でミニコンサートを開いてくれるはずだったんだ。この事件で、それも流れそうで……厳しい」


 妻をそれはそれは愛している元譲は、妻の悲しい顔がものすごく弱い。

 本気で弱い。

 そのためあれこれと考えているのだが……。


 プルルル……


元譲の電話のベルが鳴り、取ると、


「も、もしもし、申し訳ないのですが、警視総監様でしょうか?」


少年の声がする。


「あぁ、わたしは夏侯元譲かこうげんじょうと申します」

「あぁ、良かった!!わ、私はどうしてもで、電話が苦手で……」


 ほっとしたように、声が響く。


「あ、そうでした。私は、庄井景虎しょういかげとらと申します。突然お電話いたしまして申し訳ありません。あの先日、院長先生より、伺っておりました。ミニコンサートの件ですが……」

「あぁ、景虎君……君の幼馴染みの咲夜さんが大事なときでしょう。今回は延期に……」

「あの、わがままを聞いていただいても構いませんでしょうか?」

「わがまま?」

「はい。実は……」


 元譲は、少年のハキハキとした声を聞き入る。


 ようやく10才になったばかりだと言うのに、この少年は性根が真っ直ぐで、きもが座っている。

 喋る言葉も理路整然としている上に、自分の力ではこの程度になってしまうこと、こう出来ないか、こういう風にやってみたいとまではっきりと言える凄まじい才能の持ち主である。

 自分の息子であれば……と心底思う。


「お手数なのですが、お願いできませんでしょうか?奥様も、とても楽しみにしていらしたと伺っておりましたので、遠藤さんたちに無理をいって……」

「だが、本当に大丈夫かな?彼女は……」

蓮花れんか母上は、喜んでいました。レースのカーテンで仕切ることにはなりますが、大丈夫かと思います。日時は後で、院長先生よりご連絡があると思いますので、よろしくお願いいたします!!私のわがままに、付き合っていただくことにはなりますが……」


 少年の気遣いに、フッと力が抜ける。

 10才の少年がここまで伝えられるのに、大人とはどうして馬鹿になるのだろうか?

 少年時代にもっと彼のように賢ければ、違った人生を送れただろうか……だが、そうなると瓊樹に会えなかっただろう……。


「ありがとう。景虎君。では、多分妻のところに、瑠璃どのの方から連絡がいくと思うので、その時にか必ず伺おう。本当にありがとう。感謝しているよ」

「いえ。本当にこちらこそご無理ばかりで、申し訳ございません。では、当日によろしくお願いいたします。夜分にありがとうございました。失礼致します」


 丁寧に言葉が聞こえると、ソッと電話を置いたらしい。

 ここまで徹底してマナーやあれこれを教えると言う、かの国の特別学院の凄まじさに舌を巻く。


「どうしたのーん?」

「いや、庄井景虎君からで、瓊樹が楽しみにしていたミニコンサートをすることになったので、後日連絡をと電話してきてくれたんだ。10才の少年があれほどマナーが出来るのに、お前や妙才は……と思ってな」

「いやぁよ~!!妙才ちゃんと一緒にしないでよ~!!」


 ブーブーと言うが、ふと思い出したように、


「そういえば、元譲。あの現場のことを知っているか?」

「ん?柚須浦采明ゆすうらあやめどのの行方不明になった場所だろう?」

「違う。あの地は、上杉謙信うえすぎけんしんの幼少期に過ごした地域で、柚須浦采明は上杉謙信女性説を調べるのだと言っていたんだろう?」

「そうだな。で?何が言いたい」

「上杉謙信の幼少時代は虎千代とらちよと言い、幼くして元服し、名前を景虎に改めた。柚須浦采明は今おらず、代わりに景虎がここにいる……と思ってな」


にやっと笑う。


「庄井景虎と姓は違うが、姓などすぐに変えられる。あの少年は上杉謙信の幼い頃だった……と言うのは面白くないか?」

「お前のように私はそう言う曖昧な話は気が進まん。私はそれよりも、心を痛めて必死に子供を探す両親や、怪我をした少女を守るために職を辞すと言う遠藤のことが優先だ。そんな暇などあるか!!暇があったら瓊樹と過ごす!!」

「あらぁ、良いわねぇ。夫婦円満で」

「あぁ、とある女性にちょっかいを出したと言うことは芙蓉ふようどのに連絡済みだ」


 その言葉に、顔色を変える。


「な、何ですってぇ!?どうしましょう!!逃げなきゃ!!」

「あーなーた!!」


 窓から逃げようと鍵を開けたベランダに、腕を組んだ芙蓉と、芙蓉の妹の木槿むくげが立っていた。

 ちなみにここは超一流高級ホテルの最上階である。

 そのベランダから逃走を考える孟徳もうとくも孟徳だが、いつの間にベランダまで来ていたのか……?その方が恐ろしい元譲である。


「逃げても無駄よ~?おほほほ!!私にはちゃーんと、情報網に内通者がいるのよ」

「そうなのですわ。おほほほ!!」


 見るとベランダから急襲するのを止めようとしたらしい、妙才がしかばね寸前のボロボロ状態で倒れている。

 律儀に浴衣をかけていると言うことは、別室の妙才の部屋の浴室で襲われ、口を割る羽目になったらしい。

 一応心の中で合掌して、命は多分あるので、骨数本ですんでいることを祈る。

 そして、


「元譲様♪瓊樹様が本当に嬉しそうに待ってましたわ。何やら、お友だちの方から電話があったそうですの。元譲様に一番に報告するのだと、いって教えてくれないんですのよ」

「羨ましいわぁ……元譲お兄様と瓊樹様はいつも手を繋いで。私なんて、最近絞め技を決めるのが楽しい位ですもの」

「い、いや……芙蓉どのに木槿どの……一応、このホテルを壊さないように……孟徳だけお願いする。ついでに、盗聴器を探していただけると嬉しい……よろしくお願いいたします」

「な、何よそれ!!元譲!!助けなさいよ~!!命令よ!!」


そろそろと後ずさり、


「すまん!!私は、お前よりも瓊樹が大事だ!!芙蓉どのに木槿どの!!妙才以上に楽しんでいただきたい!!失礼!!」


元譲は逃走した。




 翌日、全身ボロボロの首相が包帯に眼帯にガーゼ姿で登場したのは言うまでもなかった。

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