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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
再び登場!!本当に順応が早い景虎くんです。
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ボロボロと泣きじゃくる咲夜ちゃんが本当にいじらしく大切に思う皆です。

「……診察をするからの?痛くないようにするので、いい子にの?」


 花岡医師の声に、ビクビク怯えている咲夜さくやと呼ばれるようになった少女。


「しんさつ……?」

「怪我の様子や、お腹が痛いと言っていたのだろう?私は医師。診察をする。見て、察する。本人も解らないことを見てあげないといけないからの。解らないことがあったら聞いてくれると、じいちゃんも嬉しい。で、父親でも、警備でも、男が女の子の体を見るな!!」


 医師の言葉に、慌てて父になった圭吾けいごはるかが後ろを向く。


「大丈夫よ?お母さんがいますよ?」


 蓮花れんげが優しく肩を抱く。

 そして聴診器ちょうしんきで心臓の音と、内臓を確認し、脈を診ると、


「まだしばらくは……痛み止を適宜飲ませるか、点滴に入れておいた方がいいのだが……痩せておるからのぉ……それに、針が怖かろう?」


その言葉にべそをかく。

 縫い物はある程度繕い等は出来るが、自分の体に刺されるのは本当に怖い。

 怯える様に、圭吾がなるべく痛くないようにと頼み込む。

 自分達の事も余り慣れていないのに、余計に泣く様なことはさせたくない。


「咲夜?お薬を飲むのと、注射とどちらがいいかな?お薬は苦いのと、数が今の倍になると思うんだ。注射は薬を取り替えるだけにしてもらえるから、一回だけちくっとするだけだよ?見てるのは怖いけれど、苦い薬を一杯飲むのとどっちがいいかな?」

「……」


 顔を歪め、瞳に涙が溜まる。

 どちらも苦手なのだ。

 すると、蓮花が、


「元気になったら、景虎かげとらくんも一緒に住んでいる、大きなお屋敷があるのよ?早く元気になったら、お屋敷にいきましょうね?」

「ほ、本当ですか!?景虎様に、お会いできますか!?」

「会うよりも、同じ建物に住むの。百合ゆり孔明こうめいもいるのよ」

「百合様……ですか?あのお姉さんですよね?采明あやめ様の妹さん……」


動こうとする咲夜をそっと休ませる。


「咲夜?早く治してお姉ちゃんたちとお屋敷にいきましょうね?だから、頑張りましょうね?お父さんもお母さんもいるわ」

「……か、景虎様に会えるのなら、が、頑張ってちゅ、注射……頑張ります」


 半泣きの咲夜に、よしよしと頭を撫でる。


「いい子ね。お母さんも良くなるまで、一緒にいますよ」

「お母様はお仕事とか、それにあの、実明さねあき様が……」

「あぁ、実明はね?この後、この部屋に連れてくるのよ。小さいのに本当にむーって、もう、眉がキリッとしていて、りりしい子よ。お姉ちゃんに会いたいみたいよ?だっこしてみましょうね?」


 寝巻きを治して貰い、横たえられる。


「あぁ、もう少し元気になったら、点滴はしたままではあるが、車椅子で移動も構わないからの」

「車椅子……?」

「これよ」


 葉子ようこが部屋の隅から持ってくる。


「大きな車輪の間にここは座る場所。手で自分で移動もできるし、後ろでお母さんたちが押してあげるわ。色々な物を見ましょうね?」

「お、お母様……?」

「あぁそうだわ。貴方?」

「あぁ、そうだった」


 袋の中から箱を取り出す。


「咲夜?これをね?景虎くんが咲夜にって」

「か、景虎様が!?わ、私に!?」


 目を丸くして、受け取った箱を丁寧に丁寧に開ける。

 すると、ふかふかとした……。


「これは……」

「クローバーというのよ?テディベアと言うぬいぐるみなの」

「わ、私が貰っても良いのですか?景虎様が大事に……」


 ばたーん!!


扉が開かれ、現れるのは3人の子供たちとその保護者達らしい。


「大丈夫だぞ!!琉璃りゅうりに了承を得て、お前にとリボンも百合たちと選んだんだ。それと……」

「はい、咲夜ちゃん……私の妹に」


 近づいてきたのは百合と、やんちゃ盛りの3才くらいの幼児。


「ねーたん。ねーたん。だぁれ?」

「孔明のお姉ちゃんの咲夜ちゃんよ。咲夜お姉ちゃんって呼んであげて?」

「んと、んと……さ、ちゃくやちゃん!!ちゃくやねーたん」


 てててっと近づき、やんちゃそうな顔でニコッと笑う。


「ねーたん元気になったら、あしょぼうね?こうたんとあしょんでね?」

「こうちゃん?」

「しょうなの。こうたんよ。ちゃくやねーたん。こうたんだいしゅきよ」


 弟を思いだし微笑む。


「お姉ちゃんもこうちゃんと、百合お姉ちゃん大好きよ。遊んでね?」

「うん!!わーい!!景虎より、こうたんしゃきにだいしゅきよ!!」

「何だとぉ!?弥吉……じゃない、咲夜は私の幼馴染みだぞ!!」

「おしゃななじみよりも、こうたんおとーとだもん!!」


 えっへんと胸をそらせる孔明に悔しがる景虎。


「ムカつく!!この……」

「はいはい、やめなさい」


 景虎の頭をポンポンと叩く。


「景虎?咲夜ちゃんが心配だったでしょう?何かいうことはないの?」

「咲夜ぁぁ!!無事か!?無事で本当によかったぁぁ!!」


 駆け寄った少年は、咲夜を見る。


「本当に……心配で、良かった!!」

「あ、ありがとうございます!!景虎様にそんなに心配していただけるとは。本当に本当に!!」

「様はいらんと言うのに。咲夜は、私は景虎だ。幼馴染みだろう?忘れるな。それとそのぬいぐるみは、幸せを呼び寄せてくれると言ういわれのあるものなんだ。私には、一杯たくさん幸せが来たんだ。だから、大好きな咲夜に譲る!!そして、体を直すのは大変だろうけど、負けるな。咲夜は絶対に頑張れる。応援してる!!」


 その言葉に涙ぐむ。


「か、景虎様……」

「えーい、泣くなと言うのに!!これから、月英げつえい先生が、咲夜に似合う服を作ってきたんだ。スッゴク可愛いんだぞ!?ビックリするがいい!!」

「こんにちは咲夜。私は光来月英こうらいげつえいです。可愛いドレスとナイトドレスを作ってみたんだ。サイズが合うと良いんだけれど」


 大変美人な人物に微笑まれ、ボーッとする。


「どうしたのかな?」

「い、いえ……こんなに美しい人を見たのは、初めてです。艶やかな、空の天の川のような髪に、空色の瞳……天女のようです……」

「天女……」

「わ、私は本当は死んでしまったのでしょうか?こんなに、幸せなことがいっぱいで、夢を見ているのかも……父や母を悲しませて……親不孝な子供なので、罰を……」


 ボロボロと涙をこぼす。


「本当に……本当に、父上にはご迷惑しかっ……ごめんなさい……父上。私は、弥太郎やたろうは……父上に恩をお返しできない……はるを嫁に出していただけて、母上やゆき達を、あんなに大事にしていただいて……それなのに!!」

「咲夜!!」


 蓮花は数えで13才でも、本当に小さい娘を抱き締める。


「大丈夫よ。咲夜。向こうのお父様は、貴方のことを本当に愛しているわ。貴方を可愛く思っているから、貴方はこんなにも優しく思いやりのある子供に育ったのよ。戻りたいと思うのは当然なのよ。だから頑張って体を治しましょう。お母さんも、本当のお母様ほどにはなれなくても、傍にいるわ。甘えてもいいのよ。だから我慢しないでね?お母さんは、咲夜が元気になって笑って欲しいわ」

「お、お母さん……。甘えてもわがまま言っても……」

「良いわよ。じゃぁ、まず、お母さんは、咲夜に可愛いお洋服を着て貰って、家族写真を撮りたいのよ」

「家族写真?」

「お父さんとお母さんと、お姉ちゃんと孔明と実明と撮りましょうね?」


 咲夜は、可愛らしいふわふわのドレスを着せて貰い、ニコッと笑う顔を写真に撮って貰ったのだった。

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