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運命(さだめ)の迷宮  作者: 刹那玻璃
再び登場!!本当に順応が早い景虎くんです。
39/87

所でその頃采明ちゃんは……?と言うと、

 身ごもった采明あやめは、落ち着くまで静養することになる。

 初産の時の橘樹たちばな程ではないが一時期かなり痩せ細り、神五郎しんごろうが大騒ぎして、毎回、


「采明が!!采明が!!」


と言うのを周囲が……特に、様子を見に来たあずさと橘樹とその夫のけやきが、


「うるさいぞ!!子供か、そなたは!!」

「本当に、采明の邪魔になるようなら貴方……」

「何処かに捨ててきましょうか?」

「欅兄上まで!?昔はあんなに!!」


欅は遠い目になる。


「昔は昔、今は今!!」

「あら?どういうことかしら?貴方?」

「すまん、一言多かった」


 4年の間に、立場が逆転している夫婦である。


「ごほん……それよりも、采明は初産だが、食が細くなっているのは悪阻だろう?もう少しすれば元に戻るはずだ……橘樹は最近は良く食べる……」


 ちらっと見る。

 4年の間に貫禄十分の肝っ玉母と成り果てた妻は、美しいが現在第五子を身ごもり、良く食べ、良く笑い、良く暴れる。


「仕方ないじゃない。一人の体じゃないんだもの」

「だからそういって食べすぎるなと!!子供を産んでから体型を戻すのが大変だと、何時も言っているだろう!?」

「ほほほ……」


 がっしっ!


夫の首に腕を回し、


「締めていい?」

「やめろ!!怪力!!」


即座に逃れ、


「本当に……あの昔の事が懐かしい……」

「昔?ふふふ……お兄様たちとお会いして、こんな風にいられるとは思いませんでした」


采明の横には、明子あきこが潜り込んでいる。

 采明にべったりの甘えたい盛りもあるものの、


「おかあしゃまのお腹の赤ちゃんは、あきちゃんの弟!!まさくんのじゃないの!!」


と言っているのに気がつき、


正明まさあきくんと喧嘩したの?」


双子の兄妹同士でとても仲が良かったのだが……。

 明子は俯き、


「まさくん、男の子でお兄ちゃんだから、まーくんときっくんと遊ぶって。女の子のあきちゃんとあそばないって」

「う~ん……そうねぇ?じゃぁ、お母さんと遊びましょうか?正明くんが一緒に遊ぼうって来てくれるまで」

「女の子だから……駄目なの?女の子だから……って、ふわぁぁ~ん!!あきちゃんも一緒がいいのぉ~!!おかあしゃま!!なんで?まさくんいじめるの?意地悪言うの?」


泣きじゃくる娘を抱き寄せ、よしよしと頭を撫でる。


「大丈夫よ?今は正明くんは、お外で遊びたいなぁって思っているかもしれないけど、ほら?」


 障子を引くと正明と正樹まさき橘信きつのぶが、隣の家の与次郎よじろう藤三郎とうざぶろうと共に顔を覗かせる。


「あきちゃん……いる?」

「正明、正樹、橘信!!」


 叱りつけようとする橘樹を止めて、采明は手招きをする。


「皆?こっちよ?」

「おかあしゃま!!あきちゃんいないもん!!いないもん!!」


 三人は明子が隠れている横に座ると、


「ごめんね?あきちゃん。意地悪言って」


正明が声をかける。


「あんね?あきちゃん!!ましゃね、あきちゃんのだいしゅきなのをお隣のゆきお姉ちゃんにおしえてもらったの」

「なの。きっちゃんも!!」

「内緒に内緒にしようと思って……だから、ね?あきちゃん、仲直りしよう?」

「本当?仲直り?一緒に遊ぶ?」

「うん!!」


 ピョコンと顔を覗かせる明子に、3人はうんうん頷く。

 起き上がった明子は、


「じゃぁ、遊ぶの!!あきちゃん、まさくんとまーくんときっくんと遊ぶの!!」

「あ、そうだ!!はい、あきちゃん。僕が作ったの」


正明が差し出したのは、ひも……。


「雪お姉ちゃんに教えてもらったんだ!!采明お母さんが、今年お嫁に行ったはるお姉ちゃんに贈ってくれたって。僕たちの大事なあきちゃんにってあげようと思って」

「だからね?お嫁ちゃん駄目なの!!」

「いっしょなの!!」


 必死な言い方に、大人たちはようやく意味が解ったと言いたげに頷く。

 晴が嫁に行き、そして内々に明子も縁談がまとまったと両親に聞いた3兄弟は、幼馴染みであり姉妹の明子がいなくなると思い、慌てたのだろう。

 必死な男の子たちに、背後から障子が開かれ、


「神五郎兄上。申し訳ありませんが……」


現れた少年に、


「あぁぁ!!弥太郎やたろうお兄ちゃん!!あきちゃんはあげないからね!!」

「そうなの!!あきちゃんはまーたちの!!」

「駄目~!!」


明子にぎゅっと抱きつく3兄弟を見て、弥太郎は、


「あ、いたな?又いたずらして、障子を破っていただろう?ほら!!おいで。直してる悠真ゆうしんおじさんにごめんなさい言いに行くよ」

「わぁぁ、あきちゃん!!」

「一緒に遊ぶ~!!」

「あきちゃんは、ここでね?先にごめんなさい言いにいかせるからね?じゃぁね?」


明子の頭を撫で、3人を引っ張って出ていった弥太郎に、


「あぁ……正明たちが、明子を嫁にと言う話に慌てたんだな」

「でも、嫁ぎ先と行っても……」


生け垣にさりげなく小さな通り抜ける簡易戸があり、その向こうに連れていかれた3人は、


「悠真おじちゃん、ごめんなさい」


の声が響く。


「と言っても、後8年後なんだけどな?」

「嫁ぎ先も、そこなのに……おほほ、お間抜けは誰に似たのかしら」

「……橘樹」

「なんですって!?」


 夫と橘樹、欅の一言に、采明はクスクス笑う。

 その横で、不思議そうに首をかしげ、


「あきちゃんは弥太郎お兄ちゃんのお嫁しゃんになるだけなのにね~?まさくんたち、変!!」


と、明子が言ったのだった。

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