第7話 計画と黒幕2
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雨が降ってきた。
「千代!……千代!!」
光輝が必死に雨水と共に流れ出る血を止めようとする。
だが、雨は止む所か強くなり…
「……ぁ…あぁ」
血と共に、今にも消えそうな声で答えようとする千代の声を消し…流していく。
……………そして、
「さ……よう…」
千代は死んだ。
「なんでだよ……なんでだよ明!!」
「それが私の使命だからです」
光輝の睨みを気にすることなく答えた。
「使命……それが何なんだよ? 千代は死んだんだぞ!?」
「仕方が無いことです………使命ですから」
「ふざけんな!! 使命の為なら何だってするのかよ!?」
『あたり前じゃない』
突如女性の声が響いた。
それと同時に魔法陣が現れる…
数は徐々に増えていき。
「『英雄』には使命があり、守るものよ」
10人ほど出て来た。
「ほ、全員来るとわのぅ」
「元帥、ですか」
その中で中々の容貌をした男が口を開いた。
「ケッ、ただの爺だろ……ソイツ」
何処からかそんな声が聞こえてくる。
「どう言う事ですか?」
「今回の黒幕です」
「黒幕?」
光輝が怒気を含んだ声で聞く。
千代を殺した明を許せない、そんな気持ちの光輝だったが……
「千代さんに魔力の暴走を起こさせ、裏から人殺しの称号を付けた人物」
この言葉で吹き飛ぶ。
「……どう言う事だ?」
「思い出してください。何故彼女は……いつから、何があって暴走したのか」
千代は言った。
『襲われたの』
「襲われた……」
「はい、彼女は暴走する前、襲われた………貴方に」
「そうだょ~、楽しかったな~あの時は……」
明の言葉にどこか恍惚とした表情で語る。
「家に忍び込んで寝てる彼女を縛ってね、こう……弄ったの。必死になって暴れる彼女を、泣きながら…助けを求めながら、絶望した顔を見ながら………ね」
「お前が!! お前が千代の、お前が千代の人生を! 俺達の幸せを!!」
「はぁ? あんた達の幸せなんて知らないしぃ~第一興味ない」
「ひどい」
恵美の言うとおりだ。
この女はどこかが壊れてる。
「そして全ては彼女が仕組んだ事です」
人殺しになるよう部下を送り、殺させた。
そして彼女を人殺しにし、裁判で死刑にさせる。
全ては彼女が楽しむために………
絶句。
皆は千代の死体をニヤニヤとした表情で見ている女性を見た。
「ふ~ん、そこまで気づいてたんだ?…………いつから?」
「最初からです」
「じゃあ何で彼女、千代ちゃん助けなかったの?」
「お前!!」
女性の言葉に光輝が殴りかかろうとするのを明が止める。
「なんで止めるんだよ!?」
「彼女は、私に任せて下さい」
明は静かに口にした。
その声だけは、激しさの増した雨の中でもしっかりと聞こえた。
明の言葉には殺気が篭っていた……光輝の怒りでさえその殺気に凍える。
「アンタが? 私を止める?」
周りがニヤニヤと笑い出す。
「はい、貴方は……いえ、貴方方は一つの過ちを犯した」
「過ちねぇ……どうでもいいけど。それに今は新しく面白いものがあるし♪」
「女、準備できたぞ」
そこに一人の男が現れた。
「む? お主か」
「ああ、俺だ」
元帥はその人物に覚えがあるそうだ。
男の報告を受けてか、女性が明に向き合う。
「どうやら、お別れだね」
「そうですか……残念です」
「明、まさか逃がすのか!?」
「違うよ坊や、ここで君達は死ぬんだ」
また魔法陣が現れる。
皆は一瞬また誰か来るのか? と思ったがすぐに表情を改める。
魔法陣は遥か向こう……それもかなりの数と大きさがある。
「幾ら『英雄』様でも…」
そこから現れたのは……
「万を超える兵と、千を超える戦艦には敵わない」
周りを黒く塗りつぶす数千万の兵と、数千の戦艦だった。
その光景に光輝達は漠然としていた。
幾らなんでも、たとえ『英雄』でも…
「どうだい? 絶望しな………『英雄』様よぅ」
「出来るよなぁ? 何たってあの『英雄』何だからさぁ?」
ニヤニヤクスクスと笑い出す。
「そうですね」
だが、
「何とかやりましょう」
彼らは勘違いしていた。
「『英雄』の名に懸けて!」
明の本当の………力を。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回は第8話 力と思い
これからも、よろしくお願いします(^0^)b