第5話 再開と計画
いつも読んでいただいてる人に感謝します。
翌日、ようやく日が昇り始めた頃には全員が集まっていた。
有紀の姿だけも見当たらないが…
「……早いですね」
明は先程まで作戦について話し合っていた為に一睡もしていない。
「すみません、明様」
セシリアが先程から頭を下げ続けている。
明も許すと言っているが…
「千代は…どの世界に居るんだ?」
「千代さんは今『科学の世界』の機械の国で治療を受けてます」
明のその言葉に皆が驚く。
「治療?」
「ええ、千代さんは未だに魔力暴走が完治していないんです」
「な、治らないのか?」
「いいえ、最近方法が見つかったので……治りますよ」
ほ、と光輝が胸をなでおろす。
「では、時間になりましたので…」
そして皆は科学の世界に向かった。
しばらくゲートを通り、機械の国へと着いた。
「前に比べて慣れたな」
「う~まだきついかな?」
二人も大分慣れた様だ。
機械の国は案外普通で、自然との共存が第一で繁栄してきた国だ。
少し歩けば必ずといって公園もあり、野生の生物もたくさん生息している。
「ん?」
光輝が道端に貼られていた張り紙を手に取る。
「…………どう言う事だ? これは…」
「見せてください」
光輝が漠然とした様子で見ていた紙を取り…
グシャリ…
と握り潰した。
「なんでよ悪魔って!? 『堕ちた英雄』であり魔女!? どういう意味だよ??」
貼り紙には千代の罪について書かれていた。
『人の命を弄ぶ悪魔』『英雄の素質があることを鼻にかけ、暴力でモノを言わせる』
など、様々な事が書かれている。
「正直、甘く見ていました」
「明君……本当なの?」
恵美も紙を見て、明に尋ねてくる。
「……何とも言えません。少なくとも彼女は人を殺しています」
人を殺している…これは紛れも無い事実だ………だが。
「本当に腐っているみたいですね」
皆に気づかれない様に明は呟いた。
そのままそこに居るわけにも行かないので、皆は病院へと向かった。
病院は自然に囲まれた山の中に建てられており、中々の大きさだ。
「明様、我々はしばらくの間周りの確認をしてきます」
一礼して、ローズとセシリアが離れていく。
普通ならありえない事だが、あくまで二人は護衛……身内関係の問題には関われないのだ。
「二人を護衛にして良かったです」
明はそんな二人の心使いに感激していた。
シリアスな雰囲気も壊れたが…
「あ、お兄ちゃん!」
有紀が入り口で手を振っている。
「先に来てたのか?」
「ちょっと用事がね」
有紀は明に駆け寄ると何か耳打ちしている。
「…………はい、わかりました」
話をし終わると、
「ばいばーい」
と元気よく手を振りまたどこかへ行った。
「何かあったのか?」
千代の入院している病院のせいか、心配気味に光輝が話しかけてくる。
「いいえ、特に何も関係はありません」
「…そうか」
「それより、これを渡しておきます」
渡されたのは部屋の番号の書かれた紙と認定証にカード…
「ここに書かれている番号の部屋に、彼女がいます」
入るためにもこの二つが必要らしい。
「…わかった!」
光輝はそれを受け取ると同時に駆け出す。
恵美も後から必死に追いかける。
明はそんな二人を見送り、その場を去った。
光輝と恵美は途中で看護士に走るなと怒られ、仕方なく早歩きで部屋に向かった。
「753…ここか?」
『認定証とカードをお見せください』
「きゃっ!?」
突然の声に、恵美が驚き躓く……そして。
「うわぁっ!?」
認定証を見せ、カードをかざしていた光輝にぶつかり…
ウィーー
部屋の扉が開いた同時に転がり込んだ。
「え!? え?」
突然の事に中に居た人物が目を丸くしている。
「いてて……千代!」
「う~ん」
二人は絡まったまま光輝が部屋の住人の名前を叫んだ。
しばらくして、そんな光景から一旦我に戻り、中に居た人物が驚きの声を上げた。
「え……えーーーーーー!!??」
…千代…
私はあの時の行動を悔いていた。
現に明からは二人がこの世界に足を踏み入れた事は聞いていたのだ。
「馬鹿だなぁー私……」
何で逃げたんだろ?
明の手助けもあり、病院から抜け出したのに……
最初に二人がこっちに来た時は嬉しく思った。
二人に会えると純粋に喜んでいたが…
『堕ちた英雄』
これが今の私の評価だ。
実際、明達が何とかしてくれる様だが……もう無利だろう。
判定が出るのは今日、それも死刑は確定…
もうすでに私を殺す為の準備は出来ているだろう。
いくら明でそこれだけは無理だ。
「逃げなきゃ…良かったのに」
あの時、そのまま話していいたら……今日を嬉しい気持ちのまま迎えていただろう。
「あ~、私らしくないな……ケホッゲホ」
口から血が出てくる。
「私、今死ぬんじゃない?」
千代の体は魔力によりズタボロ……正直何時死んもおかしくわない。
今まで持ってるのが不思議なくらいだ。
あと2時間……それが私の残された時間だ。
不思議と涙は出ない。
「遺書でも書いておくかしら?」
などと紙とペンを取ろうと起き上がったら…
ウィー……ゴロゴロゴロッ!?
二人が転がり込んできた。
…終了…
光輝は千代の名前を叫ぶと同時に気づいた。
彼女の脇に血だらけの紙が置いてある事に……
「ち、千代!? 大丈夫か!? 急いで医者を…」
「ちょっ、いいわよ」
今にも叫びだしそうな光輝を止め、千代が笑い出す。
「な、なんだ?」
「ううん、何にも変わってないなって」
それを聞いて、光輝も笑い出した。
今、数年の時を経て……二人は再開を果たした。
二人の間にはそんな年月は関係も無く、互いに笑い合っている。
ただ、それは限られた時間。
時はそう簡単に………二人を共にしたりはしない。
余談だが…
「え? 二人とも何時の間に…て、血! 血が出てるよ!?」
転がり込んだ時に軽く気絶していた恵美が目を覚まし、血のついた紙を見て、心配性な恵美が少し暴れたのは言うまでも無い。
「血!? 血~~~~~~~!!」
次回 第6話 作戦と黒幕
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