表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十五歳、まだ名前を呼べなかった頃 〜メイリーン戦記・ララ編〜  作者: 水戸直樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/26

第19話 王妃のもとへ

「ミサラサ様、部外者を王妃殿下に接触させてはなりません」


 侍女長イザベルは、深く頭を下げながらも、言葉だけは崩さなかった。


 王太子ミサラサは、椅子に浅く腰をかけ、苛立ちを隠そうともしない。


「……わかっている。母上に知られれば、今度こそ終わりだ。廃太子は免れん」


 低く吐き捨てるような声。


 謹慎という名目のもと、権限を削がれ、行動を逐一制限されている今。

 王妃に直接“異変”を悟られることだけは、絶対に避けねばならない。


「……おっしゃる通りでございます」


 イザベルは、なおも視線を伏せたまま続ける。


「問題は、その“部外者”が、すでに王都の正式な手続きを経ている点でございます」

「禁図書館所属。司書の身分を持ち、なおかつ――」


 そこで、わずかに言葉を切った。


「名目上、王妃殿下ご自身の要請により、召喚された存在であること」


 ミサラサの指が、肘掛けを強く掴む。


「……ララ、か」


 名を口にしただけで、胸の奥に不快な感覚が広がった。


 ただの辺境出身の侍女。

 適当に遊んで捨てるはずの存在が、いつの間にか“手を出せない位置”へと移動している。


「ララが王妃殿下に接触しましたら……」


 イザベルの声は、どこまでも静かだった。


「私の管理下から、外れます」


 沈黙が落ちる。


「……なら、急げ」


 ようやく絞り出した言葉は、焦りを隠しきれていない。


「余計なことを話される前に――やってくれ」


「かしこまりました」


 イザベルは、深々と一礼する。


 その口元に、感情は見えなかった。


◇◇◇


「ララが玄関に来たら、そのまま聖女様の居室へ案内します」


 侍女たちを前に、出迎えの動きを指示するイザベル侍女長。


「えっ……?」


 侍女たちの中から声が漏れたのを、イザベルは聞き逃さなかった。


「……誰です?たるんでいますね」


 一人が真っ青な顔をして一歩前へ出る。


 イザベルの気に触ることがあれば……。


 いつの間にか、消えることになるのは暗黙の了解。


「理由を聞きましょう」


「も、申し訳ございません!私、ララを王妃殿下の部屋にお連れするものと思い込んでおり……」


 イザベルは目を見開き、すぐに、表情を消した。


「……そのような話はありません。どこから出てきたのです?」


「いえ、あの、噂になってますし……」


「なんですって!?」


 心臓がギュッとなる。


(あちら側が話を広めている……!)


「……それは間違いです。ララは速やかに聖女様の居室へ。余計なことは口にせず、仕事だけを」


 配置の確認をし、侍女と衛兵を揃え、入り口に立つ。


 王妃には何も知らせていない。


 北宮に入れたら、我らの勝ちだ。


 そのとき――


 ドン。


 腹の底を叩くような低音が、城内を震わせた。


「あっ、あれ!」


 咄嗟に、侍女の一人が西の方角を指差す。


 その先の外郭路が、白く波打つ。


 禁図書館へと続く道。


 波に見えたものは――隊列。


「あっ!ぐ、軍隊!?」


 目を凝らすと、白い軍装の騎兵団。


「し、白騎士」


 一騎当千とされる王国の最強戦力、白騎士。それが三十騎以上、隊列を組んで向かってきていた。


 自国の英雄たちの突然の登場に、兵士や使用人たちが歓声を上げる。


 ただ、一人、青ざめるイザベルを除いて。


(ぶ、武力で突破しようというの……?そんなこと許されるわけが)


 近づいてくる白い一団。


 彼らは、ただ一点。一人を囲むように馬足を揃えていた。


 中央、まるで貴人のように護られ、白い馬に跨るのは、


 ロイヤルブルーの正装を纏った、


 ララ・シルヴェリス


 その人だった――


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ