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NEON♡RAY、開幕!

夜八時、渋谷ヒカリエ前。

看板には、まばゆいピンク色のロゴが点滅していた。

《NEON♡RAY 1st LIVE – BE THE LIGHT –》


人波が押し寄せ、歓声が絶えない。

スマホの画面が無数に光り、

それぞれの“推し”を映している。


舞台袖では、五人の少女が円陣を組んでいた。


「みんな、緊張してる?」

天沢灯あまさわ・あかりが笑いながら言う。

「ううん!」と最年少の結衣ゆいが両手を上げた。

「灯ちゃんがいるから大丈夫!」


その言葉に、周囲の空気が少しだけ柔らかくなった。


璃音りおんが微笑む。

「センターのあなたが倒れたら、私たちも倒れる。

 ……だから、無理はしないで。」

「うん。」

灯は短く返した。

彼女の表情は穏やかだったが、

ほんの一瞬だけ、手が震えた。


(今日で、すべてが変わる——)


ライトスタッフが指を立てる。

「残り、十秒前!」


その声と同時に、照明が落ち、暗闇が会場を包む。

歓声が大きく膨れ上がる。


——カウントダウン、開始。


10、9、8——


ドラムロールと心拍が重なった。


久城蓮くじょう・れんはカメラを構え、

ステージ正面のファインダーを覗く。

レンズの中で、ネオン色の光が弾ける。


「——NEON♡RAY、開幕ですっ!」


LEDスクリーンが一斉に輝き、

音楽が爆発した。

観客の歓声が波のように広がる。


天沢灯はステージ中央に立ち、

マイクを握る。

一歩、踏み出すごとにスポットライトが追いかけた。


♪ 光れ、光れ、この胸の奥で ♪

♪ 泣いてる昨日を、照らせるように ♪


透明な声。

まっすぐな眼差し。

その瞬間、誰もが彼女に目を奪われた。


モニター越しに見つめる久城蓮もまた、

シャッターを切る指を止められなかった。


(これが——天沢灯の“光”か。)


ステージの端では、璃音がコーラスを入れ、

結衣と愛香がダンスを合わせる。

完璧なフォーメーション。

観客の熱気で空気が震えていた。


曲が終わると同時に、

スクリーンに文字が現れた。


SNSフォロワー 100,000達成!


観客が歓声を上げ、

結衣が涙ぐみ、灯が笑った。

「みんな、本当にありがとう!」


その笑顔は、まるで世界を包み込むように優しかった。


だが、その背後で、

スタッフルームのモニターが一瞬ノイズを走らせる。


「……今の、なんだ?」

音響スタッフが眉をひそめた。


誰も気づかない。

そのノイズのタイムコードには、

“17”という数字が点滅していた。


舞台の上では、灯が最後のポーズを取っていた。

汗が頬を伝い、スポットライトが瞳の中で揺れる。

——その光の中で、彼女はほんの一瞬、

客席の奥を見つめた。


そこに、カメラを構えた久城蓮がいた。

彼女は静かに唇を動かす。


(ありがとう。)


そして、ステージが暗転した。

歓声。拍手。

東京の夜がひときわ輝いた瞬間。


だが、暗闇の奥、誰かが小さく呟く。


「……これが始まりだよ。」

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