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8話

「君はここが好きだねぇ」

「違いますよ」


一日目にしてアーミラにボコボコにされた俺はミズチの元へ連れていかれ、怪我の治療を受けていた。

上を脱がされ、まじまじと見られている。

そして渡されたお湯を飲む。


「元々の鍛え方が足らないんじゃあないかな?」

「それは…そうですね」


元の世界で軽い運動くらいならしていたものの、今日みたいな、全身がボロボロになるような運動なんてしたことが無い。

ミズチは笑いながら体を触る。


「元の素体は悪くないんだ。よく寝てよく食べて、アーミラによく扱かれるんだな」

「ハハハ、はーい」


もはや抵抗する気も起きなく、流されるままミズチに体を触らせている。


「魔力はね、体の強度で決まってくるからね。まあ、君は魔力が見えないから何とも言えないけどね」

「魔力っていうのは?」

「ああ、そこからか。魔力はいわゆる生命のエネルギーみたいなものでね、どんなものにも魔力は宿っているんだ。その辺に生えている雑草や、こういった道具でもね」


ミズチは道具を出して目の前に見せてくる。

目を細めて見てみるが、特に何かが出ている様子もなく魔力というのがなにかはわからない。


「そんなに目を凝らしても、ふつうは魔力を介してないと見えないものだよ」

「どうやってやるんですか?」

「普通は生まれた時から魔力を使っているからどう、と言われると…」


珍しくミズチは戸惑っていた。

魔力が使えるのが普通で、俺はその魔力が使えないどころか見えないと、


「俺、だいぶ異端なのでは?」

「今更過ぎるな。君がここにいるだけでだいぶ異端だよ。そもそも、その魔力がないのが異質すぎて神様は君を神兵にしようとしているんじゃあないのかな」

「タティウス様って意外と物好きなんですかね?」

「神様なんて肩書だぞ。物好きに決まっているさ」


怒られるような言い方だったが、ミズチは笑って同乗してケラケラしている。

確かに神様なんて呼ばれているんだからなんなら周りからしたら俺よりも異質なのかもしれない。

けど俺からしたらこちらのほうが…。

パンッと目の前から手を叩く音が聞こえた。


「さて、そろそろここでの休憩の時間は終わりだよ。自分の部屋に戻った戻った」

「俺自分の部屋知らないんですけど」

「そんなのカーミラに聞いてみるといいさ。これ以上ここに居座るというのなら上も下もひん剥いて…」

「すいませんでした。さっさと出ていきます」


にこにこしながら冗談みたいな事をいう。

この人が言うと冗談に聞こえないのはそういうことなんだろうか。

服を着て追い出されるように部屋を出される。

今日までここで暮らしていたのにどうしろ言うんだ。

周りに人がいる気配はなく、かといって後ろの部屋には戻りたくないので、肝試し気分で屋敷を歩く。

今まで1人にならなかったので気が付かなかったが、この屋敷はまるで他の人がいないかのようにすごく静かで、自分の歩く音だけが静かに響く。

ただ、端を見ても埃すらなかった。

さすが神様の屋敷。


ーー


そして歩くこと数十分、無事、部屋を見つけ、ゆっくり休める…。


「この屋敷広すぎるだろ…」


訳もなく、ほかの人にも会えずただただ迷いに迷って廊下を歩いていた。

ほんの少しの好奇心で結構やばいことになってきた。

どこかの部屋に入ろうにも、大体の部屋に鍵がかかっているので入れない。

外に出ようにも窓、開かないし、窓から外の様子は確認できない仕様になっている。

なので外の位置で自分の位置の確認もできない。


落ち着いて立ち止まって一度深呼吸する

と、深呼吸して気が付いたが横に細い階段を見つけた。

結構わかりやすかったのでなぜ気が付かなかったのかというほどである。

疲れとかで視野狭窄にでもなっていたんだろう。


せっかくなのでその階段を下りてみる。

階段を下りていくごとに段々薄暗くなってきている。

豪華だった廊下と違って質素な空間が広がっている。

階段を下りるとまた更に一本道が続いている。

転ばないように壁に手を当ててゆっくりと歩いていく。


一本道少し歩くと広い空間に出た。

相変わらず異質な空間で何よりも異質さを放っているのは部屋の真ん中ににレイピアのような水色の剣が刺さっていることだ。

その異質の剣が発しているオーラに目を奪われて、触りに行こうかと思ったその時、


「気になる?」

「うわっ!?びっくりした!」


横からいつの間にかいたタティウスに声をかけられた。

本当に真横に並ぶように立っていて目の前の剣をみていた。

ここにこの人がいるのもかなり異質なんですけど。


「えっと…。どうしてこちらに?」

「?わたしがどこにいようと自由でしょ?」

「そう…っすね」


そういうことじゃねえよ。

言おうとしたがさすがに不敬罪だ云々言われたくないので飲み込んだ。

横顔を見ても表情が一切変わらないので何を考えているのかわからない。

ただ、あの時はあまり気にしていなかったので気が付かなかったがこの質素な空間でも白銀な髪と白い肌と紅い瞳が輝いているようにこんなところでも凄くきれいに見える

なんて思っていると紅い瞳がこちらを向いた。


「触ってみる?」

「…。いいんですか?」


まさか向こうから許可を出してくるとは思わず聞き返してしまった。


「大昔からあるものらしいんだけど、私の知る限りいまだに誰も抜いた人がいないの」

「まるで伝説の剣ですね」

「うん」


そのまま頷かれると反応に困るんですけど…。

なんて思っているとまたタティウスの口が開いた。


「伝説かどうかは知らないけれど…使われないものなんてただのガラクタでしかないよ」

「あー…。たしかに」


そういったら風情もくそもないのだけれど…。

これ以上、話しても仕方ないので刺さっている剣の前に立つ。

こうして目の前に立つと何かぞわぞわした感じがする。

多分、後ろからの視線もあるだろうなと思って、剣の柄を握る。


その時、頭の中に電気ショックを受けたかのように何かの記憶が流れ込んできた。

五人の姿が一瞬にして流れてきた瞬間、体がはじかれ思いっきり後ろに飛ばされた。

急に思いっきり飛ばされ、そのまま壁に激突…


「大丈夫?」


することはなく、タティウスが優しく受け止めてくれていた。


「あ、ありがとうございます」


抱き締められるように受け止められたのと、いきなり吹っ飛ばされて少しドキドキしている。

結構、勢いがあったはずなのに軽く受け止められているのを見るとやっぱり神様なんだなと思ってしまう。

礼を言って離れて、地面に座る。


「ダメだったね」

「そうですね」


わかっていたことではあったが少しだけ残念に思う。

もしかしたらあれを抜いて特別な力が手に入って…みたいなことをわずかながら思っていた。

少し落胆し、ため息をついた。

すると頭に撫でられる感触がした。


「気にしなくていいよ。大体の人は触れてすらなかったし」

「あ、はい」


慰められているのかどうかは知らないけれどゆっくりと頭をなでられて何か気恥ずかしい。

ただ、振り払うような無駄な抵抗をせずに受け入れる。


「そろそろ戻りますか?」

「うん。そうだね」


頷くと手が頭から離れる。

一息ついて立ち上がり、戻ろうとして立ち止まる。


「あー…そういえば俺の部屋ってどこですか?」

「今から案内するからついてきて」


そういうわけで神様に部屋の案内をさせてしまうのであった。

なお、その際にカーミラに見つかり、少しだけ怒られたのであった。


あの剣に触った時に映ったあの5人はいったい誰なんだろう。

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