6話
透き通るような声に全員がそちらに向いた。
話した瞬間、紅い瞳が光り、ピリッとした電流のようなものが走った。
いきなり存在感が増した気がした。
アーミラとカーミラは頭を下げた
「その子、どうする気なの?」
「そうですね、とりあえず療養させるために一旦、ミズチに預けて治ったら…」
「どうせ、行く当ても出す当てもないのならもらっちゃうのはどう?」
「それは…危険な気が…」
アーミラは口ごもるが関係なく続ける。
「元から見張る気でいたのでしょう。だったらいいじゃない」
「それはそうですが」
アーミラに向いていた紅い瞳がこちらを向いた。
表情なくこちらを見ているその紅い目はこちらのすべてを見透かしていそうで逃げたくなりたくもなる。
「あなたはどうしたいの?」
「どうしたい、ですか?」
声色は優しいのにどうしてか、圧がある。
「元の場所に戻りたい?」
「…」
言われて少し考える。
元の世界に戻りたい…か。
普通だったら戻りたいというんだろうか。
とはいっても普通だったらの話だ。
「別にそんなこともないです」
あまり間をあけることもなくこたえた。
その言葉にとくに表情を変えることすらせず、手を出してきた。
「そう、なら、私のものにならない?」
「は?」
あまりに急に言われて思わず眉をひそめた。
それに対してアーミラが、
「神兵にならないかって誘われているんだ」
「ああ、そういう」
びっくりした。
おもわず変なことを思い浮かべちゃったよ。
言われてその手を見る。
正直、あまり乗り気ではない。
ただ、多分選択肢はないと思う。
何なら断った瞬間、そのまま処分という形もあると思っている。
なので、
「じゃあ、よろしくお願いします」
その手を握った。
白い美女の手は柔らかくただ、不思議な感覚がした。
「あらためて、わたしはタティウス。この人間の国、パルディアの神よ。よろしくね、ユウリ」
一番、ぶっ飛んだ自己紹介をされたのであった。
ーー
その後、ユウリはカーミラとともに部屋を出てっていった。
残ったのは椅子に座ったタティウスとアーミラだけである。
「よろしかったのですか?」
「いいも何も、ユウリは最初から私のことが見えていたよ」
「…」
はいったときにタティウスのほうから目を向けていたのは気づいていた。
本来ならタティウスに気が付かず、話を終える予定だった。
そして、何事もなければ、そのまま処分するつもりだった。
ただ、ユウリには最初から違和感があった。
「それに、魔力を全く感じない」
「はい、そうでなかったらあの時、タティウス様にお手数をおかけすることはなかったのですが…」
あの時、タティウスの前に血まみれのユウリが来てばったり倒れたのだ。
そして、怪我をある程度直した。
アーミラはその時、ユウリが殺して顔の潰れたゴブリンも見つけ、急いで戻ることになってタティウスとユウリ見つけ、帰還することとなったのだ。
「そんなことはどうでもいいの。生物全てにおいて魔力がなければ生きていけない。あの場の全員が、私も含めてユウリの存在に気が付くことができなかった。それに、来た場所も…」
「二ホンと言ってましたか…。聞いたことのない場所でしたし、やはり外から来たんでしょうか?」
「だからこそ手元に置いておくのがいいと思うの。今のところ脅威はないから。ユウリはあなたに任せるわね、アーミラ」
「お任せください」
タティウスの言葉に頭を下げ、了承するアーミラだった。