Opening of war Ⅱ
「これは訓練では無い!」
内閣危機管理監、星野の言葉で、危機管理センターは異様な雰囲気に包まれた。
出席者の誰もが何事かと思っているだろうが、かつては党三役や主要大臣も経験しており、党内でも大きな勢力を誇る星野に口を挟める政治家や官僚は少ないようだ。
総理大臣こそ出席していないが、防衛省、外務省、法務省、国土交通省の大臣、事務次官らが全ての予定をキャンセルして出席しているほか、警察庁長官の姿も見える。星野の横には、官房長官と官房副長官補が控えていた。
自衛隊からは特殊作戦群と陸幕。市街地用戦闘服を着用した群司令の山本と目が合うと、スーツ姿の御木を見て鼻で笑っている。常在戦場を是とする山本はスーツ組を下に見る傾向があり、今回も特殊作戦群を出動させたいようだ。
警察庁長官の横に座るのは、事案の特性から考えて、SATの指揮官とNBC対策部隊だろう。特殊作戦群と同様、SATも実働部隊は公の場に出ることはなく、その顔を知る者はごく一部だ。
そして、部屋の隅では、場違いな中年男が項垂れていた。
ざわつく声を遮るように、星野が続ける。
「アフリカ南西部のロウド共和国から、テロリストが入国した。名前はムテバ・バルボア。特殊なエボラ出血熱のウィルスを持ち込み、列車の乗客を人質に新潟から東京に向かっている」
正面のスクリーンに、愛嬌のある丸顔の黒人が大写しになった。
「我々に残された時間は、今から六時間だ」




