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第四十五話 Fallen Kingdom・Ⅲ

前話が長くなったので今回はちょっと控えめ。

その代わり色々衝撃的な展開を込めております。

「どうすっかなぁ~」


 炎魔との戦闘から少し経って夜。俺は組合支部に戻っていた。この支部は一年前に俺たちが乗っ取った場所で、今は俺がアスガルで活動する拠点として活用している。

 

 今俺の頭を悩ませているのは勿論炎魔だ。どうすればヤツを攻略することができるかずっと考えているが、一向に良いアイデアが思いつかない。


 うんうんと一人で唸っていたとき、玄関口の扉がギギという音を立てながら開く。入ってきたのはファウストだった。


「おかえりファウスト」

「何だ。生きてたのかお前」

「うわひっど。命からがら逃げてきた俺に対してなんて薄情なヤツ」

「ちょっと違うな。俺は端からお前に情なんか持ってない」

「新入りのくせに生意気だぞお前」


 ファウストは、二か月ぐらい前にリーダーがメシアの戦力増強のためにスカウトしてきた新入り三人の内の一人だ。初任務でいきなり『武王』暗殺とかいうクソオブクソのクソミッションをやらされた可哀想な奴だが、それ以上に生意気だ。


 他二人の新人、元フェンリル騎士団だというオッサン剣士とよく分からないクリオネ女は礼儀がなってるが、コイツは俺に対して舐めた口を聞いてくるから嫌いだ。


 それはそれとして。


 今ファウストに話すべきことはそれじゃない。


「お前さ、俺に対して謝らないといけないことあるよね? 聖王の処理現場見られるなってちゃんと言ったよね?」

「一つ弁明させてくれ。確かに女憲兵に見られちまったが、アレはマジで俺のせいじゃない」

「はぁ?」


 シリアスモードに切り替えて追及するが、ファウストは相変わらず舐めた態度。コイツマジで殺してやろうか。いや普通に返り討ちにされるからやめとこ。なんか滅茶苦茶惨めなこと言ってるな俺。


「聞くだけ聞いてやるよ。回答次第じゃ殺してやる」

「あの女憲兵………死ぬほど俺の好みにドストレートだったんだ」

 

 コイツホンマ、どつくぞ。反撃されるからやんないけど。


「マジで可愛かった。連絡先聞けば良かったって後悔してる」

「その憲兵ケリュケイオンのリーダーとデキてるぞ」

「な……」

「ついでにさっき隊長さんが撃ち殺した」


 ファウストはこの世の終りみたいな顔をした。


「畜生!!滅べユスティアくそ野郎!!」


 ワロタ。


「プフ…………しょうがねぇな。ネズミの駆除が出来て結果オーライだったから許してやるよ」


 ファウストの無様な姿が見れて満足したので許すことにした。あーオモシロ。


「坊主はどうなんだ。炎魔の対策は出来たのか?」

「ゼロ!」

「リーダーにチクるからな」

「すみません冗談ですだからそのスマホをどうか納めてくれませんか?」

「チッ……紛らわしい真似しやがって」


 ファウストは舌打ちしながらスマホをポケットに戻した。コイツは冗談が通じないのか。困るよ君、もっと場の空気を読みなさいよ。


 …………とは言ったものの、ちゃんとした対策はまだ思いついてないんだよな。


 俺の万喰者は相手の攻撃も喰えるが、一度で喰える量には限界がある。ヤツのレルヴァ・テインは質量を持つ爆炎を無制限に放出する広範囲殲滅に特化した霊臓。今日の小競り合いで分かったが、あの火の鳥一匹だけでも限界ギリギリだ。控えめに言って相性最悪。


 仮に奴が絨毯爆撃でも仕掛けてきたらその時点で詰み。ファウストなら炎魔相手でも確実に勝てるが、先の『武王』との戦いで負った傷がまだ癒えてない。憲兵共を向けたところで全員仲良く炭焼きになる。


 だが、こっちには情報の優位がある。奴の弱点はリルカ・イエスマリアだ。エルド・L・ラバーでも効果はありそうだが、初見のインパクトはリルカ・イエスマリアの方が強い。


 問題はどうやってヤツの前にリルカ・イエスマリアの姿を見せるかだ。死んだはずのリルカ・イエスマリアを目撃すれば奴は間違いなく無防備になる。しかし、その時間は多分短い。どれだけ甘く見積もってもニ、三秒稼げるかどうかってところだ。だからタイミングを間違えれば全てが台無しになる。


 ホント、ラスボスみてぇだな。クソゲーの。


「……………………そういえば」


 考え続けていると脳が活性化するらしい。ある情報を思い出した俺はそう思った。


「なんだ。クソでも漏らしたか?」

「それは俺じゃなくてお前だろ」

「俺でもねぇよガキ」

「はいはい。ちょっと通話するから静かにしてね」


 ヤケクソになってるファウストに断わりを入れてから俺は通話を掛けた。


『────こんな夜更けに何の用だ』

「やっほ~リーダー。この前リーダーがアトラの遺跡からパチってきたヤツあるでしょ? アレ使ってアスガルに隕石落としてくんない? 時間は明日の────…………」



 解剖が終わったのは深夜だった。結論から言うと、この解剖によって天使病の全てが明らかになった。


 明らかになってしまった。


「何ということだ……!」


 僕は、解剖室に選ばれた無機質な石の部屋の壁を思わず殴りつけた。部屋の中には解剖を終えた医者たちだけが残っている。解剖の途中で死体が動き出す可能性が無いと判断したので、ジョセフたちにはログハウスで休むように促した。


 皆暗い顔をしている。僕も、テレジアも、全員だ。解剖すれば素晴らしい成果が挙がるだろうと期待していた僕達の前に現れたのは天使病という病の全貌。


 それは僕達が望んでいたものだった。しかし、現れたものは僕たちが予想すらしていなかった最低で最悪な現実だったんだ。


「こんな……こんなふざけたものが存在してたまるか……!」


 テレジアが声を震わせて叫んだ。他の者たちも何人かは絶望に打ちひしがれて嗚咽を洩らしている。


「受け入れるしかない……僕らは医者だ」

「バカなことを言うな! 我は、我はこんなの認めんぞ!」

「テレジア!!」

「ッ……!」


 自分でも驚くほど大きな声が出た。テレジアは肩を跳ねさせて、涙を流しながら赤く腫れた目を僕に向ける。


「僕らは、医者だ。例えどんな病だったとしても、患者たちにはそれを知る権利がある……。嘘偽りなく伝える義務が僕らにはあるんだ……!」

「……」


 言いながら僕の声も震えてることに気が付いたが、それでも僕は言葉を吐き出す。それは自分に言い聞かせるためでもあった。


「例え僕らがどれだけ足掻いても、事実は変えられない!」


 頬を伝ったものが脂汗なのか涙なのか、僕には分からなかった。

 

「天使病は、人を霊魔にする病だ」


 そして夜が明ける。

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