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第九話 ユーリ/大陸対魔組合

カクヨム様の方でも投稿しており、そっちでは既に40話ほど進んでおります。

かなり好評をいただいているので、こちらでも好評を頂けるかなと思います。

感想、ブックマーク、ポイント評価、よろしければお願いします!!!!

 あてもなく、ただ何となく南へ二週間ほどふらついていると、ジャスティティア大陸東部のデザイアという連合国にオレは漂着していた。世界の中心であるギンヌ大火山に接する唯一の国は、世界の大陸でも三本の指に入る先進国だ。街並みは大都会と言った様相で、ここだけ時間が数百年先行しているような感じがある。どこもかしこも機械仕掛けだったりチカチカしていたり、上下左右どこを見てもハイテクが過ぎるので非常に居心地が悪い。テミス王国も十分に大国なはずだが、これと比べてしまうと随分と田舎であったと錯覚しそうになった。


 ともすれば異世界に迷い込んでしまったような気分だった。霊子エンジン搭載のエアカーゴとやらに乗ったせいでものすごく気分が悪い。精々十数メートル程度の鉄の箱を繋げた乗り物にすし詰めにされて空中でシェイクされる感触はもう二度と味わいたくない。


 いつだったか、アルベドさんが「デザイアのエアカーゴはクソだ」と声高に叫んでいた気持ちが今なら痛いほど分かる。


 フラつきながら吐きそうになるのを我慢してカーゴステーションを彷徨っていると、柱に映し出されたカラフルでうざったいほど眩しい広告が目に入った。


『夢見心地なゴーストウィスキー!! 一口飲むだけで夢のような世界へ貴方を導きます! お値段一本につき二千ニルとお求めやすい価格で提供させていただきます! なお、未成年の飲酒は法律により禁止されています────』

「酒、か」


 やたら大きな声の宣伝に釣られて財布を見てみると、丁度千二ル紙幣が二枚だけ残っていた。国を出る前に口座から最低限の金だけ引き出し、あとは全て匿名で国に寄付したので今のオレにはこの二千ニルが全財産となる。


「…………買ってみるか」


 まだ未成年だが、色々あって老け込んだこの顔なら年確なんかされないだろう。そもそもここはデザイア連合国。欲望の王国なんて二つ名があるくらいなんだから、酒を売ってる自販機なんて探せば一つくらいあるはずだ。財布の中から取り出した二千ニルを握りしめてステーションの階段を上る。


 ソレに出会ったのはそんな時だった。 


「…………」


 階段を昇りきって少し歩いてたら、道の脇に、「拾ってください」と書かれた段ボールの中で三角座りする少年がいた。不意に視界に入ってみたらバッチリ目が合った。


「拾ってください……」


 しょぼんとした顔をしている少年に尋ねるとしょぼんとした顔で食い気味に答えた。年齢はオレの二個下くらいか? パッと見ても身なりは物乞いのような恰好ではないし、むしろ中々上等そうな剣を一本持っている。


「何してんだお前」

「カジノで路銀溶かした……」

「阿呆か」


 ほんとに何してんだコイツ。

 

「せめてご飯だけでも……!」

「自業自得だろ」


 握りしめていた二千ニルにジッと目線を向けてくるのを退かすと少年は案外あっさりと引き下がった。


「うぅ…………お腹すいた……」


 オレにも聞こえるくらいの大きな腹の虫の音が起きた。


「何日食ってないんだ」

「大体三日っす……水は霊臓で出せるから何とかなってるけど、この国物価が高すぎて飯が買えないんです」


 それは確かにそうだ。世界一の歓楽都市の名は伊達じゃない。ただの水を買うだけで五百ニルも消し飛ぶ。それでも不平不満を言う人間がいないのは、皆この国に金を消費するために来ているからだろう。

 

 何か目的のために金を消費するのではなく、金を消費するために目的を探す。この欲望の国を照らす人口照明は、病的なほど明るい光と熱を孕んでいるのだ。


「…………お前、名前は」

「え?」

「名乗らねェならギャンカス小僧って呼ぶぞ」

「ユーリっす。そんなカスみたいなあだ名付けないでください」

「少なくともお前の第一印象はそれだからな」


 なんで不服そうな顔してんだよ。


「まぁなんでもいい。ユーリ、一つ取引と行こう」

「取引?」

「オレの要求を呑めばこの先ずっとお前に飯を食わせてやる」

「え、え!? マジすか?!!」

「あぁ。前払いでこの二千ニルをやろう」


 こんな提案をしたのは、己の方向音痴を自覚しているからである。見たところコイツは裏表のない純粋で素直な性格だし、腕っぷしもわるくなさそうだ。一日の酒で金を使うよりこれから先のことを考えて投資した方が有意義である。


「オレは訳あって世界を旅することにしたんだが、自他ともに認めるほどの方向音痴でな。ジャスティティアの旅の介護役としてお前を雇いたい」

「任せてください兄貴!! 一生ついていくッス!!」

「あと、稼げる職とか知ってたら紹介してくれ。お前に二千ニルあげたから一文無しになった」


 オレがそういうとユーリは途端に可哀想なものを見る目で俺のことをみた。


「兄貴……今、住所不定の無職なんですね」

「その言い方クソムカつくからやめろ。事実だけども」


 悪気が全く感じられないのが余計に質が悪い。


「てっきり俺と同じハンターだと思ってました」

「……ハンター?」


 聞き馴染みのない単語にオウム返しをすると、ユーリははたまた可哀想なものを見る目で見てきた。


「いやいやいや! ハンター知らないは嘘ですって!」

「オレの国じゃそんなの無かったんだが」

「絶対嘘だ! 一体何処の田舎だって話ですよ!?」

「テミス王国だが、悪いか?」

「ててててテミス王国ゥ?!! あの〈百雪不撓〉のフェンリル騎士団で有名なテミス王国ですか!!?」

「そのテミス王国だ」


 補足するとユーリは顎が外れそうな勢いでまた驚愕した。こういう反応をされると少しむず痒くなる。生まれてこの方国の外に出る機会なんて無かったので自分の祖国が世間一般からどのような認知が為されているのか知らなかった。そう考えると、ユーリと出会えたのは結構意味が大きいのかもしれない。


「ほわぁ……道理で覇気みたいなのが凄いわけだ……流石兄貴っす!分かりました!兄貴のリクエストに応じてオレが兄貴をハンターにしてあげましょう!!」

「そのハンターの説明をまずはしてくれないか」

「霊魔退治の専門家っす。大陸対魔組合で手続きすれば誰でもなれますよ! ちょうどデザイアに組合の総本部があるんで今から行きましょう!!」


 そのままオレはされるがままにユーリに先導されていくことになった。


「ウプ……」

「兄貴乗り物酔いするタイプなんすね」


 もう絶対エアカーゴには乗らない。ユーリに肩を貸してもらいながらオレは硬く決心した。



 大陸対魔組合は、大陸北部を除く世界各国に支部を置く超巨大組織だった。政治不干渉の完全中立を掲げ、世界各地で霊魔が発生したらハンターを派遣する代わりに各国からの金銭的支援を受けるというウィンウィンの関係を築いているらしい。


 またハンターにも階級があるようで、下から低い順に五級~一級まであるとのこと。駆け出しは全員五級から始まるそうだ。


 ハンター駅を降りた先、下手な要塞よりも大きな建物の中に入ると、酒場と食堂が併設されているのか色々な匂いが混ざっていた。利用しているのはいずれも武装した人間であり、彼彼女たちがハンターという人間であることはすぐに分かる。そんな景色を横目にしつつ木張りの床を踏んでカウンターへ足を運んだ。


「大陸対魔組合へようこそ。ご用件をお伺いいたします」

「ハンター登録をしたいんだが、ここで合っているか?」

「はい! かしこまりました。準備をいたしますので少々お待ちください」


 そう言って受付嬢は一度席を外した。


「今のお姉さん美人でしたねぇ……」

「何に注目してんだエロガッパ」

「しいて言うなら耳っすね」

「誰もお前のフェチなんか聞いてねぇよ」


 下らない話に意識を割いているうちに受付嬢が数枚の紙を持って戻ってきた。


「お待たせしました。こちらの用紙をよく読みこんでからお名前と生年月日を。それと任意ですが、出身国の記入もお願いします」


 ペンと紙を受け取り、渡された紙に目を通す。どうやらこれは誓約書のようなものらしく、諸々の注意事項のほかに殉職率27%と大きな黒文字が強調されていた。


「殉職率が凄まじいな?」

「補足しておきますと殉職者の半数は駆け出しのハンターです。用紙への記入は己の力量と相談しながらお願い致します」


 毅然とした態度で言う受付嬢は言葉だけなら冷徹なものだったが、声や仕草にはこちらを心配するような雰囲気が微かに漏れ出ていた。今時珍しい対応をすると思いながら、用紙の空欄を埋めて受付嬢に返す。


「スルト・ギーグ……? まさか────」


 用紙に目を通した受付嬢が誰にも聞こえないように小さな声で呟いたのをオレは聞き逃さなかった。ハッとなって顔を挙げた受付嬢に対し、オレは人差し指を口に当てるポーズを見せた。


「……失礼。一つ言い忘れていたのですが、この用紙に記入した名前はハンターネームとして使われるため、()()によっては本名以外の登録も可能です。いかがなされますか?」

「そうか?なら────」


 用紙を一旦返してもらい、さきほど記入した名前を一部訂正してから再び提出した。


「これで頼む」

「はい。承りました」


 しかし、思っていた以上にオレの名前は広がっているらしい。これからは身の振り方も少し考える必要があるか……?


「それでは()()()()様。登録手続きは完了しましたが、まだ実技試験が残っています。可能であれば今から行われる試験に参加することも出来ますが、お時間よろしいですか?」


 チラリとユーリを見ると、綺麗なグッドサインを送ってきたのでとりあえず肯定とみなす。


「構わない」

「では、会場へ案内いたします」


 そう言って受付嬢は二回、手を叩いた。直後、オレの脚元に出現した魔法陣がオレを迷宮のような場所へ転送してしまった。

 

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