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第九十九話 何も知らぬ者たちの声/ガスコインの懇願

今回は冒頭だけ掲示板形式になっています。

これはジャスティティアに存在するインターネットスレッドで、ジャスティティアに暮らす一般人が何を思いながら生活しているかを描写するために掲示板形式を採用しました。

出来るだけリアルにしたかったため、その部分だけ本作の雰囲気とかなりかけ離れたものになっています。

予めご了承の上閲覧していただきますよう、お願いいたします。

苦手な方はその部分だけ読み飛ばしてもらっても構いません。

[メシアとかいうイカれたテロリストwww]


111 名無しのハンター

笑いごとではない


113 名無しのハンター

普通にヤバいぞ

あの動画に感化された奴が世界中で暴れまわってる


115 名無しのハンター

元動画もう消されたん?

いくら探しても出てこんのよな

拡散されまくったやつも見つからんし


117 名無しのハンター

そりゃそうやろ

犯罪者が「お前らも一緒に犯罪しようぜ!」って言ってるようなもんやぞ

んなもん消されるに決まってる


119 名無しのハンター

あの動画撮られた場所って多分アスガルよな?

この前組合が発表したやつと関係あったりする?


121 名無しのハンター

考えすぎ乙

陰謀論者は飯食って寝ろ


122 名無しのハンター

いや関係ありまくりやろ

そもそもアスガルってインターネットの検閲が世界一厳しい国やのにあんな動画が一日以上放置されてた時点で何かあったに決まってるし、聖王府じゃなくて対魔組合が動画消して回ってるのも意味わからん


123 名無しのハンター

この前組合が発表したやつって何?


124 名無しのハンター

知らんのか?

ヤバい病気ばら撒く霊魔にアスガルが滅びかけたんや


126 名無しのハンター

医療大国が病気で滅びかけた……?


127 名無しのハンター

そういうことやな

他の国なら終わってた


128 名無しのハンター

今組合から追加情報出たわ

寄生型霊魔「天使病」

危険度レベルはデュナミス


130 名無しのハンター 

マジで?

国滅びかけてんのにデュナミスなん?


133 名無しのハンター

セラフィム級の定義⇒「発生した周辺地域にある町や小国に壊滅的被害を与える」

今回の霊魔⇒「病気を撒き散らして医療大国を滅ぼしかける」

比較すると確かにおかしくはない


134 名無しのハンター

じゃあ雑魚やんけ


135 名無しのハンター

お前頭悪いんか?

滅んでないだけであり得んくらい凶悪やぞ


136 名無しのハンター

でも滅んでないじゃん

はい論破


137 名無しのハンター

これだから結果論主義者は……


138 名無しのハンター

────不適切な発言が確認されたため、この投稿は削除されました。


139 名無しのハンター

つーか最近セラフィム級みたいなん多くね?

この前アトラで討伐された屍王もセラフィム級だろ?


140 名無しのハンター

ブーマー・ハルトマン

厳密には国際指名手配受けすぎてセラフィム級に指定された人間だな


141 名無しのハンター

こいつ結局何したん?

アルカーデ公国を滅ぼしたってこと以外知らんわ


142 名無しのハンター

・ガンドラ帝国⇒暫定5件の猟奇殺人

・獣人国ラオ⇒パンデミック・ナイト事件

・アスガル聖王国⇒4件の無差別殺人

・デザイア連合国⇒ゴールド・セントラルの賭場を爆破


アルカーデ公国滅亡に関してはソースが分からないのでデマの可能性アリ。


143 名無しのハンター

ヤバすぎ


144 名無しのハンター

こういうことが続くと対魔組合が信用できなくなる。何のための組織なんだよって感じ


145 名無しのハンター

武王も暗殺されそうになってたし、もう終わりだよ世界


146 名無しのハンター

メシアに感化される奴が出てくるのはそういう不信感があるからだろうな



[AC3999年2月20日 20:21 デザイア連合国 大陸対魔組合本部2F 応接室]


「またえらい騒ぎになってやがるな」

「今インターネット上ではこんなスレッドが乱立しています」


 ガスコインのタブレットに表示された匿名掲示板に思わず顔を顰めた。


 時は少し遡り、メシアがアスガルから撤退して三日が経過した頃。オレの報告を受けて到着した対魔組合によって早急に事後処理が始まった。組合はメシアの存在は完全に秘匿するつもりだったようで、一部の民間人には記憶処理が施され、今回の騒動は全て霊魔の仕業として処理された。


[崩壊寸前の聖王国。セラフィム級霊魔"天使病"]


 数日の間、このような見出しが新聞やインターネットを賑わせていた。メシアに殺害されたと思われる聖王については未だに捜索中だが、恐らく真実が公表されることはないだろう。俺達三人にも守秘義務が課せられた。


 統治者を失ったアスガル聖王国には今後も困難が続くだろう。しかしテレジアさんが「我が国王陛下に話をつける」と言ってテミスに帰還したため、これについてはテレジアさんに任せることにした。


 だが、今懸念すべきなのはやはりメシア、そしてインターネットに投稿されたある一本の動画だ。


 結論から言うと、その動画はファウストの最後の演説を録画したものだった。


 動画はすぐに削除されたが、その間に拡散されてしまっていた。今組合が必死になって火消しに回っているが、恐らく根絶は難しいだろう。動画を見た何人かは組合が隠している真実に気づき始めている。


 それを物語っていたのが先ほどのスレッドというわけだ。全てを見届けたからこそ分かるが、都合が悪い情報が全て流出してしまっている。


「────で、これをオレに見せた理由はなんだ? パソコンをかちゃかちゃして口封じを手伝えと?」

「それは我々の仕事です。アナタ方には引き続きメシアの追跡をお願いしますが……」


 ガスコインがタブレットを操作する。


「それとは別で対応してほしい案件があるんですよ」


 ガスコインがテーブルの上にタブレットを置くと、いつか見たときのような立体ホログラムが空間に投影された。


 それは巨大な火山だった。周辺は鬱蒼とした森に囲まれており、大きな火口からは煙がもくもくと昇っている。


「……これはギンヌ大火山か?」


 特徴から推察した答えを口にしてみると、ガスコインは頷いた。


「ご存じ、デザイアに隣接しているギンヌ大火山です。世界の中心に存在することから"世界のへそ"と呼ばれることもあります」

「この火山が今回の案件に関係していると?」

「察しが良くて助かります」


 ガスコインは満足した様に頷くと、またタブレットを操作し始めた。立体ホログラムはまだ投影されたままだ。


「今から丁度三か月ほど前、ギンヌ大火山の活動を現地で監視している調査隊からおかしなものを見つけたと報告を受けたんですよ」


 ホログラムが切り替わる。


 次に投影されたものは石碑だった。形は長方形で、表面には何か文字のようなものが彫られている。恐らくそれは文章を構成しているのだろうが、小さすぎて何が書いてあるのか分からなかった。ともかく、このホログラムもミニチュアサイズのはずなので、実物はもっと大きいだろう。


「これがその見つかったものか?」

「はい。恐らくはAC期以前に作成されたものだと思われますが、これは調査隊の予想なので詳細は不明。実物は大きすぎて回収できなかったので、今は物体防護の霊臓を持つ職員と他数名を拠点化した現場に駐在させています」


 またホログラムが切り替わり、今度は石碑を囲むように立っている数名の人間と簡易拠点のようなものが投影される。現場を拠点化したと言っていたから恐らくそれだろう。


「ここからが本題です。駐在している職員には毎日昼と夜の決まった時間に定期連絡をお願いしていたんですが、一週間前から連絡が取れなくなりました」

「霊魔に襲われたか」

「いや、職員のスマホにある位置情報特定アプリの動きはいつも通りなのでそれはないかと。連絡が途絶える少し前には小さな噴火があったので、多分その影響で霊波が乱れたんでしょう。それで通信が悪くなったものと思われます」


 遺体の回収でも任されるかと思ってちょっと身構えていたが、杞憂だったようだ。少し安心できたオレは肩の力を抜きながらソファにもたれかかった。


「問題は職員から届いた最後の連絡の内容です」


 ホログラムが再び切り替わり、二人の人間が投影された。


 一人はガスコインだ。定期連絡を記録していたらしい。


 もう一人は知らない男だ。短い金髪、同じく金色の瞳。どこか不安げな目付きをしていて、顔つきは少し幼い。ユーリやカナエと同じくらいの年齢だろうか? 二人の頭上には[Sound only]と表示されている。


「音声記録がここにあります。今から再生しますよ」



『こちらマリケス、こちらマリケス。エージェントコード8331。いつもの定期連絡だ』

『エージェントコード0433、ガスコイン。マリケス、オブジェクトの調査はどうですか?』

『至って順調。先日の小噴火で多少霊波が乱れてる以外は特に異常もない。しかし噴火の影響か分からないが、霊魔の発生頻度がやたら高くなってるのが不安だな』

『了解。ではすぐに腕の立つハンターを数名派遣します。階級は二級以上で問題ないですかね?』

『ノーサンキュー! 追加派遣は必要ないさ。今はそっちも大変なんだろ?』

『追加? ……待ったマリケス! そちらには既にハンターがいるのですか?』

『あぁ。ネオっていう滅茶苦茶強いハンターだ。頭がシカの……多分ライカードかな? とにかくお前から要請を受けてきたって言ってたよ』

『(約3秒の沈黙)……ハンターIDは分かりますか?』

『ちょっと待ってろ。本人からカードを貰ってくる(約4秒の沈黙)……待たせたな、AC3966─1231だ』

『それで間違いないですか?』

『本当も何も、本部のデータベースで検索すれば出てくるはずだろ?』

『(約2秒の沈黙の後、深い溜息の音)……12月は30日まで。31日は存在しません。こんなの子供でも知ってる常識です』

『(風が吹く音)』

『あなた、誰ですか?』

『(激しいノイズの後、沈黙)』


 ────音声終了。



「……ホラーか何かか?」

「言ってる場合ですか。緊急なんです」


 ガスコインが苛立ち気な声をあげる。珍しく焦っているのか、いつもの底知れない不気味な気配が、今はすっかり鳴りを潜めていた。


「ここからは私の推測ですが、私と話していたのはマリケスではなくネオとやらの可能性が高い。本来なら高等職員にしか知られていないエージェントコードやデータベースのことを口にしたことを考えれば、少なくない数の機密情報が流出しているのは確実です」

「それをオレに教えてもいいのか?」

「この際それでも構いません」


 ガスコインは深く息を吐くと、弱った声でこういった。


「……あなたにはマリケスら調査隊の生存確認と、ネオと名乗る謎のハンターの逮捕を頼みたい。他の腕利きハンターにも声をかけていますが、あなたがいれば百人力です」

「……」

「どうかお願いします……マリケスは、私の数少ない友人なんです!」


 ガスコインはソファから立ち上がり、オレに深く頭を下げた。


「……」


 友人という言葉を聞いたからだろうか。


 オレは無意識のうちに、エルドとリルカのことを思い出していた。


「後はオレに任せろ。お前はとりあえず家で寝とけ」


 もう、引き受けるしかなかった。


四章〈神代の生き証人〉開幕です。

多分この作品は十章前後ぐらいで完結するので、ほぼ折り返しですね。

ここから伏線回収も一気に始まります。

あと、四章の途中でカナエが魔法少女になります。


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