プロローグ1 『朝日』
「………ほら、もう起きて!」
寝ぼけた頭に刺さるような声が聞こえる。
少しけだるい気分の今にはかなりきつい。
俺はゆっくりとまぶたを開いた。
そこには少女がいた。
「もうお昼になっちゃうよ!早く起きて、下来てね!」
彼女はそういうと、足早に出て行ってしまった。
開いた窓から日差しが差し込んでいる。
朝は過ぎて、太陽がかなり高く出ていることがわかる。
「あぁ………ちょっと寝すぎたみたいだ………」
俺は寝起きの体を気合で起こした。
おそらく昼飯の時間なんだろう。
寝すぎたせいで空腹だ。
俺は部屋を出て、下に向かった。
食卓にはすでにみんなが揃っていた。
「もう待ちくたびれたよ!早く食べよう!」
先ほどの少女が俺をせかしている。
「そうだよ。冷めたら美味しくないだろ。」
座っている少年も早く食べたそうだ。
「ごめんごめん………昨日遅くまで作業してたせいだ。
早く食べよう」
俺は空いている席に座った。
「それじゃあ、いただきます!」
そういうと、みんなはご飯を食べ始めた。
俺の名前はルーク、ここメリア村に住むただの一般人だ。
贅沢とはいえない田舎の村だが、しがない日常を楽しんでいる。
先ほど起こしてきたこの少女はクレア。
俺の妹だ。
かなり活発でいつもみんなを困らせることが問題だ。
そして、もう一人の兄弟である弟のアレン。
いつも冷静だけど、本当は感情的なんだよな。
二人とも義理の家族だけど、俺は家族を愛している。
みんながご飯を食べ終わるころに、家の扉が開いた。
「いやぁー疲れた!さっき牛が逃げ出しちゃってさ!
もうご飯食べ終わっちゃったか」
入ってきた中年男性は、俺らの保護者だ。
名前はフィリウス、この村の村長をしている。
といっても、この村は上下関係が皆無なので、みんなフランクに接している。
自分たちはこの村で彼に拾われたのだ。
つまり孤児だったらしい。
らしいというのもみんな詳しいことは覚えていない。
もっと小さい時のことだ、無理もない。
ばらばらにこの家に流れ着いたけれど、今じゃ家族として一緒に暮らしている。
父さんには感謝してもしきれない。
「おかえり、父さん。
今日は何かやることあるかな。手伝うよ。」
「おお、そうか。
じゃあ少し奥の森にある罠を確認してきてほしい。
最近獣が賢くなってきて、罠を壊すんだ。」
フィリウスは猟師の経験がある。
今でも村や家族の食料として、獣を狩っているのだ。
俺も時々その手伝いをしている。
「わかった。いつも通りのルートで確認していくよ」
「助かるよ。森は広いから骨が折れるんだよね」
村の裏にある森は、薄暗いが何度も足を踏み込んだことがある遊び場みたいなもんだ。
何も問題はない。
俺が出かける準備をすると、アレンが話しかけてきた。
「今日は俺と剣術の修行じゃなかったのかよ!」
そうだった。
弟のアレンとは剣術を修行する間柄だ。
我流ではあるが、そこそこ戦えると自分たちは考えている。
街では二大流派が主流らしいけど、学ぶ金もないし、今で十分満足している。
ともあれすっかり約束を忘れていた。
仕事をすると言った手前、断ることもできないよな。
「ほんとごめん、仕事が終わってからでもいいか?
少し遅くなるけど、絶対やるよ」
「しょうがないな。
もう約束破らないでよね!」
申し訳ないことをしたな。
この村の住人は少人数だから、誰かが仕事をしなきゃいけないんだ。
修行や遊びの約束を破ってしまうことも少なからずあるんだ。
仕方ない、帰ってきたら構ってやろう。
「それじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい!」
家族に見送られ、俺は森に向かった。