2.病院
――――あれから毎日、天子は聖夜の病院へ通った。
それでも、聖夜の意識は戻らないまま。
「わわっ・・と」
ドンッ!
「ひえッ!?」
「うわっ!?」
どっさ―――・・・
天子は、日直の仕事で大きな荷物を運んでいたところ、
誰かにぶつかり、共に倒れた。
「ってー・・」
「ご、ごめんなさいっ!! 大丈夫?」
天子はあわててあやまる。
「あぁ・・てか、おまえ同じクラスの・・・春咲? だったよな?」
どうやら、同じクラスの男子らしい。
・・が、そんな声は、天子の耳には入っていなかった。
(えっ・・聖夜?)
「おい!」
「えっ」
その男子に呼ばれ、天子はハッとした。
「なんだよ、人の顔そんな物珍しそうに見て・・╬」
「えッ!? ごめんボーッとしちゃって・・;」
そう言って、散らばった荷物をまとめる。
「・・すげぇ荷物だな。日直?」
「うんっ それじゃあねっ!」
天子は荷物をかかえ、速足で歩いていった。
(びっくりした・・聖夜かと思っちゃった)
ガラッ
「しつれいします」
天子は職員室に入り、担任の机に荷物を置いた。
(よく見たら全然似てないし、髪だって茶色なのにっ!)
「しつれいしましたっ」
天子は職員室を出て、バックを取りに教室へ向かった。
(さみしくて聖夜の幻を見ちゃったのかな・・)
「聖夜・・早く目を覚ましてよ・・・」
教室の窓からこぼれる夕日に照らせれ、天子はボソッと言った。
――――聖夜が入院して、どのくらい経っただろうか。
天子は毎日、病院へ通う。
時には、花音や棗も病院に来る。
しかし、聖夜の目が覚めることはなく、体はピクリとも動かない。
それでも天子は、病院へ通い続けた。
いつか・・聖夜に笑顔が戻る日を願って・・・。
「天子~っ 今日も病院?」
放課後。
花音が、いつものように天子に話しかける。
「うん・・」
そして、天子がさみしく笑う。
「よ~しっ! じゃあ、今日はあたしたちも行く~!!」
「え!? オレもかよ!」
「・・イヤなの?」
花音が、棗をギロッと睨みつける。
「そ・そんなワケねぇじゃ~ん! オレも行くぜっ!?;」
そんな花音に、棗はあわてて言う。。
「それじゃー 行っくよ~♪」
花音は、天子の腕をひいて歩き出した。
「あっ ちょっとくらい待てよな~!!;」
棗がそれを追いかける。
そんな棗はムシして、花音はズンズン歩く。
そして、時々ふり返り、
「早く来~い!!」
そう叫んでクスッと笑い、また歩き出す。
なんだかんだいって、結局この2人も仲がいい。
考えてみれば、2人はいつも一緒にいる。
(もしかして・・!)
そう思った天子は、口をひらいた。
「ねぇ、花音と棗ってさ・・」
「うん~?」
「付き合ってたりするの!?」
思いきった発言に、花音は『はぁ?』という顔をした。
「あははー ないない(笑)」
花音は言い、そして笑う。
「はーっ はー・・っ てめーら・・少しは待ってくれてもいいだろーがっ╬」
やっと、棗が追いついた。
「棗、意外と足遅いのね~ てか息切れしてんじゃんっww」
「それは違う!! しょーがねぇじゃん、暑すぎだっつの!」
今は7月後半。暑いのも無理はない。
そんな2人に、天子は笑いだした。
「ふふっ も~2人とも暑苦しい!!」
天子を見て、花音と棗も笑った。
ガラッ
「聖夜~ いいかげん目ぇ覚ませよなー」
病室のドアを開けるなり、棗が言う。
「棗うるっさ~」
花音は、聖夜が眠るベッドの横のイスにすわった。
「その方が聖夜の目も覚めるかもしれねーぜ?」
棗はへらっと笑う。
「・・・たしかに。。」
花音はそう言うと、すっと立ち上がった。
『聖夜ー! 起~き~ろ~~~っ!』
そして、イキナリ叫びだした。
「うおっΣ(゜Δ゜;)」
そんな花音に、棗はおどろく。
「棗はジョーダンで言ったんじゃ・・(^Δ^;)」
天子も少々おどろく。
『そーだそーだ~! 早く起きろ――っ!』
すると、棗まで叫び始めた。
「ははは・・;」
天子はもう、笑うしかなかった。
ガラッ
病室のドアが開き、3人の視線はそっちにいく。
「病室内では静かにね~^^」
看護師さんが顔を出し、笑って言った。
「「「は・は~い・・(^∇^;)」」」
3人は、声をそろえて言った。
「・・あたしジュース買ってくるね」
「Ok~」
天子が言うと、花音は手をひらひらさせて言う。
「あっ じゃあオレのも!」
棗が言った。が、
「自分で買え!」
花音がビシッと言う。
「ちぇ~」
棗は不満そうに言った。
天子は病室を後にした。
そして、ロビーの自動販売機のところまで来た。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な―――――」
べしゃっ
・・後ろで、妙な音が聞こえた。
「え・・;」
天子がおそるおそるふり向くと・・・
「だっ・大丈夫!?;」
1人の女のコがそこでおもいっきり転んでいた。
「はい・・ごめんねぇ・・・」
女のコは『アハハ・・』と笑って、起き上った。
クリッとした目に、ふわふわのツインテール。
天子と同い年くらいの、かわいい女のコだった。
(ここに入院してるのかな・・?)
天子がそう思いながら女のコを見ていると、
女のコはたちまち目をキラキラさせはじめた。。
「ねぇっ あなた花岡高校の生徒だよね! その制服っ!!」
「え、うん そうだけど・・?;」
「私もねっ 本当はそこに通ってるはずだったの!」
「へ、へぇ・・;」
天子はどうしていいかわからず、ただ女のコの話を聞いた。
「入院してなかったら、ね・・」
「どうして入院してるの?」
「私、生まれつき病弱で。小さいころから入退院をくり返してるの」
「そうなんだ・・」
「私、高橋梨羽!
退院したら学で会うと思う・・っていうか、会いたいね!
そのときはよろしくね!!」
「うんっ あたしは春咲天子! こっちこそよろしくね!」
この時あたしは・・・
あんなことになるなんて、
想像もしてなかったんだ・・――――――――――――――