11.あっという間に過ぎていく幸せ
「・・・キンチョーしてきた;」
天子は深く深呼吸をする。
今日は12月24日。
つまり、聖夜の誕生日当日。
「花音たち・・遅いなぁ」
待ち合わせに最初に来たのが、天子だったのだ。
「悪いっ・・ 待ったか!?」
「せ、聖夜っ!!///」
ちょうど、聖夜も今走って来た。
「うぅん、さっき来たよ」
「そうか? ・・れ? 棗と花音は?」
聖夜は、あたりを見回し、言う。
「まだ来てないの」
「そっか・・」
―――――沈黙。
(あわわわっ な、何かしゃべらなきゃ・・っ!;)
天子がそう思い、あわてていた時だった。
~♪
天子と聖夜のケータイの着信音が
同時になった。
ピッ
「はい?」
『あっ 天子~! あたしちょっと急な用事ができて行けなくなっちゃったぁ!』
「ええぇ!?;」
『じゃ、そーいうコトだからっ☆ 楽しんできってね~♪』
「え、ちょ、ちょっと花音っ・・・」
ピッ ツー ツー ツー・・・・・・
花音はそれだけ言って、電話を切ってしまった。
「花音からだったのか?」
聖夜が天子に訊く。
「うん、今日これなくなっちゃったって・・;」
「まじで; 俺も、棗からだったんだけどさ・・これなくなったって」
「え~! 2人とも!?; どーしよっかぁ・・;」
天子があせっていると、
「んー・・ まぁ、2人でも楽しめるだろ! いこーぜっ」
聖夜は、いつもの笑顔でニカッと笑った。
――――――――――――・・・
「どこ行くの?」
天子と聖夜はとりあえず歩いていたが、まだ行き先を決めていなかった。
「う~ん・・・ まぁ、まずは昼メシ食うか! 腹減ったし!」
「そぅだねっ そこに喫茶店あるよ?」
「おし、入ろーぜ」
2人はすぐそこにあった喫茶店へ入った。
カランカラン・・
「いらっしゃいませーっ♪ 2名様ですね、こちらへどぅぞ~」
ギャルっぽい店員の女のコが、2人を案内する。
どうやらアルバイトの子らしい。
「ご注文が決まりましたらお呼びくださいね~♪」
店員は、メニューをわたして戻って行った。
「どれにしよっかなーっ♪」
天子は、なんともいえないフワフワした気持ちになっていた。
(なんか・・ 久しぶりの“デート”みたい・・・///)
――――・・・・
「わぁっ コレかわいーぃっ♥」
ここは、女のコ向けのアクセサリーショップ。
喫茶店の後、2人は近くのショッピングモールに来た。
「あ・・ なぁ、天子」
聖夜が天子の名前を呼ぶ。
「ん?」
天子がふりむくと、
聖夜は、天子の頭の方へスッと手を伸ばした。
「やっぱな。似合ってる」
「えっ・・///」
伸びた聖夜の手には、
ホットピンクに白のドット柄の、リボンバレッタが。
「そ、そぅかなっ(〃□〃;)」
天子は頬をピンク色に染める。
「ちょっと待ってろよ」
聖夜はそう言い、バレッタを持ってレジへと歩いていった。
―――「ありがとうございました~。」
レジを担当する店員の声とともに、
聖夜が戻ってきた。
「 ん 」
さっき買った、バレッタの小さな包みを天子に渡す。
「え!? い、いいのっ!?///」
おどろく天子。
「おぅ! 俺からのクリスマスプレゼント♪」
聖夜は
『 バチン☆ 』
とウインクをして言う。
「あっ ありがと!!///」
「おう^^」
(どうしよぉ・・ うれしいよう・・・っ///)
―――――・・・
楽しい時間は、あっという間に過ぎていくもの。
時刻は、
午後6時半をまわり、薄暗くなっていた。
2人はショッピングモールを出て、公園を歩いていた。
「時間経つの早いなー」
聖夜が、手に息を吹きかけながら言う。
「うん、あっという間だったよねっ」
天子も言う。
「聖夜、手、寒いの?」
天子は聖夜の手を見ていった。
「ん? あぁ、まーなw」
( あっ! )
「聖夜、ちょっとそこのベンチで待ってて!」
天子はすぐそばの噴水の向こう側にある
ベンチを指差し、言った。
「は?」
「あっちに自販機あったから、温かいもの買ってくるねっ!」
そしてこんどは、
反対側の少し離れた場所にある自販機を指差す。
「あぁ、悪いな」
「ううん、いいのっ! 待っててね!」
天子は自販機に向かって歩き出す。
聖夜はベンチにすわった。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な―――っ♪」
自販機を目の前に、
天子の顔から笑みがこぼれる・・・―――――。
「聖夜くんっ!」
「ん?」
名前を呼ばれ、聖夜が顔を上げる。
「・・高橋?」
梨羽だった。
「こんなところで何してるのー? 1人??」
梨羽はいつものように、ふんわりとした笑顔で話す。
「いや、天子と一緒」
「えっ・・」
梨羽の顔から・・・・ 笑顔が消えた。
「聖夜くんは・・・天子ちゃんが好き?」
「はぁ?」
「好き・・・なの?」
梨羽の瞳は、
ぼやけた灰色だった。
「なんだよ、急に;」
聖夜は意味がわからないという顔をする。
「梨羽は・・ 私は・・・・・」
梨羽は
聖夜をまっすぐ見つめた。
「聖夜くんが好きだよ」
フッ・・・
梨羽は、聖夜に唇を重ねた。