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1.涙

―――――ガラッ



「聖夜っ!!」


天子は、勢いよく病室のドアを開けた。


「・・あら、あなたが聖夜の彼女の・・・」


キレイな女の人がいて、天子を見てそう言った。

聖夜と流衣の母親らしい。


「あっ は・はい・・春咲天子です」

天子はあわてて言った。

「あの・・聖夜は・・・」

「えぇ、一応 大丈夫みたいなんだけど・・意識が戻らないのよ・・・」


(聖夜・・・)


「あのっ、あたしも・・聖夜のそばにいてもいいですか・・?」

天子が言うと、聖夜のお母さんは、優しく笑った。

「えぇ、もちろん。私からもお願いするわ。」

お母さんは、天子のためにイスを出してくれた。

「このイスにすわって。私はちょっと出てくるから・・

 聖夜をよろしくね、天子ちゃん」

「はい・・」



ガラガラッ・・    

        ピシャッ



お母さんは病室を出ていった。









「聖夜・・・」


天子は、聖夜の手を、痛いほどギュッとにぎりしめた・・。








「聖夜・・・

 ジョーダンなんでしょ・・?

 あたし、もうだまされないって言ったじゃん・・・

 ねぇ・・起きてよ・・・

 いつもみたいにジョーダンだって言ってよ・・!!」












天子の目から、涙があふれ出した。




「春咲さん・・」



流衣は、そんな天子を見てうつむいた。


流衣は・・

きっとまだ天子のことが好きで、あきらめきれずにいたんだ。




「けほっ・・けほっ、けほっ・・」


「春咲さん、カゼひいてるの?」


せきがとまらなくなった天子に気づき、流衣は言った。


「・・うん、そうみたい・・・」

天子は流衣の方をふりむいて、作り笑いをうかべた。

「だから・・聖夜は薬局に行ってたんだね・・」

そんな天子に、流衣は悲しげな顔で言った。

「・・あたしのせいなの・・・

 あたしが、カゼなんかひかなかったら・・

 聖夜は、事故になんかあわなかったのに・・!

 今だって、あたしの横で笑っててくれたはずなのに・・・!!」


「春咲さん・・」


「あたしのっ・・せいで・・・」


天子の目に、また涙がたまってきた。


「ちがうよ、春咲さん」


「え・・?」


流衣の言葉に、天子は顔を上げた。


「春咲さんのせいじゃない。

 聖夜自身が、君を想ってしたことなんだから・・。

 起こってしまったことをやんでも、何も始まらないよ。

 今は聖夜を信じよう。」


「流衣くん・・」


「ね?」



「・・うん・・・」



(流衣くんの優しさが・・胸にしみるよ・・・)








―――――――――――――・・・




あたりはすっかり暗くなった。


ガラッ


「あら、まだいたの?」


ドアが開き、入ってきたのは聖夜と流衣のお母さん。


「はい・・」


「もうおそいし、明日は学校でしょ?

 早く帰った方がいいわよ?」

お母さんは、心配そうに言う。

「流衣、送ってあげなさい」

そして、流衣の方を向きなおし、言った。

「・・じゃ、行こうか」

「うん・・ 今日はお世話になりました」

「また来てね。聖夜のためにも・・」

「はい・・っ!」


ガラッ・・


天子は、そのまま流衣と病院を後にした。



「流衣くん、ごめんね・・送ってもらっちゃって・・」

天子はなんだか申し訳なくなり、言った。

「いいよ、全然」

こんなときでも、流衣は優しく笑ってくれた。



「ごめんね・・」






ポンッ・・





流衣は、天子の頭を優しくなでた。





「・・大丈夫だよ、聖夜は・・・きっと」


「流衣くん・・っ」


天子がムリして笑っていることに、流衣は気づいていたのだ。


「春咲さんをおいていったりしないよ。

 信じてあげて。聖夜のこと・・」




ぽろっ・・



天子の目から、一すじの涙がこぼれた。




「大丈夫だよ」

そして、流衣はもう1度天子の頭をなでてくれた。

「・・うんっ・・・ありがとぉ・・」


流衣は、天子が泣きやむまで、ずっと一緒ににてくれた。





―――――次の日





天子は、カゼとショックで、学校を休んだ。

そのため、花音と棗が天子の家までやってきた。

「天子ぉ~大丈夫!?」

花音が言う。

「聖夜も天子も休むから2人でサボりかと思ったらカゼかよ~」

棗も言う。


「・・・天子?」


何も言わない天子をおかしく思い、花音は言った。


「どうかしたの・・?」



すると、天子はゆっくり口をひらいた・・。




「・・あのね、聖夜は・・・」








―――――――・・








「「ええぇっ 聖夜が交通事故!!?」」


「うん・・」


天子にそう聞き、おどろく花音と棗。


「マジかよ・・」



しーーーん・・・



「ま・まぁ、昨日 流衣くんに

 いっぱいはげましてもらったからっ

 あたしは大丈夫!!」


天子は暗い空気を変えようと、必死に言う。



「天子・・ムリしてんじゃないよっ!」



ぺちっ



「たっΣ(>Δ<;)」


花音は、天子のおでこを軽くたたいた。


「そーだぜっ!

 天子がウソついたってオレたちにはお見通しなんだかんなっ!」

そう言って、棗がニカッと笑う。

「花音・・棗・・・」

天子は、2人の優しさに、また涙が出そうになった。

「天子、ムリしないでね?」

「天子にはオレたちがついてんだぜっ」


「うん・・2人ともありがとう・・・」


天子は笑った。



その目には、涙がうかんでいた。








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