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第一話∶死してなお願うもの

日本のとある街角で、一人の少年がひっそりと息をひきとった。弱冠十六歳の彼は、急性の心臓発作によって、誰にも看取られることなくアスファルトの上で死んだのである。

「ああ、なんて悲しいのかしら。悲しや、悲しいですわ」

女神は大仰に泣き叫んだ。

「そんな悲しい魂には、ええ。祝福を授けましょうね」

そうして、少年の魂は女神の前へ召し出された。

「汝、哀れなる魂、城島キョウタよ。異世界にて、第二の人生を過ごすがよい。これは慈悲である。受け取らざれば、即ち虚無の巷へ落ちると知れ。」

と、いうことでキョウタは異世界へ行くことになった。

さて、昨今の異世界転生譚には付き物、チート選びとあいなった。女神はどうやら〘なんでも〙好きなものをくれるという。ならば、と、キョウタは熟考の末、答えを口にした。

「【妹】をください。」

「は……?」

空耳だ。そう女神は考えた。そうでなければならない。

「聞こえませんでしたか?【妹】を下さい。」

空耳ではない。そう女神が思い至ると、彼女は叫んだ。

「バカじゃないの!!?」

「バカじゃないです。妹です。いや、おバカ系妹……ありか?」

「ナシだよ!!」

「なるほど。やっぱり頭がいいほうが良いと」

「」

尚も一人言葉を重ねるキョウタ。

「いや、でも頭がいいと兄の威厳が、いやしかしテストとか考えると頭がいいと手伝ってもらえたり?でもあまり手間かけさせるのも申し訳無いなあ」

「でも逆に手間かかったほうが良いというママ味もある妹はどうだろうか。〜いや、良いな。うん、いい。ママにして妹というのは最強じゃないか!?うん?ああ、最強だとも。甘やかされるというのもまた乙なもの……etc」

たっぷり十分、女神が止めるまでキョウタは妄想に浸っていた。

「ストップ」

約十分後、女神は厳かに言った。

「あ、妹できましたか?」

「できるわけ無いわよ!!そもそも!!人間をチートで与えるなんて、そんな非常識なこと!」

女神の渾身の怒りにも、しかし、

「へー。つまんな。」

急に冷め、明らかに失望した顔のキョウタ。

「神って言っても、大したことないんすね」

この態度が、女神の堪忍袋の緒を切った。

「あ?やってやろーじゃないのよ!!!」

「へえ、やってみせろよ女神。何とでもなるはずだ」

「クソうぜえ」

と、いいつつ奮闘する女神。

「見た目……設定画面がない!!クソッ!!ドブスにしようと思ったのに!!」

「おい」

そして、時が経った。キョウタの目の前には、完璧な妹の姿が。その姿は筆者には記述する事能わないほどである。どうか読者諸兄においては、自らの理想の妹を思い浮かべていただきたい。キョウタは自分でも気が付かないうちに泣いていた。理由は彼の中に感じられなかった。ただ、泣いていた。心の器を超えた感情の奔流が彼を襲っていた。

「女神様、ありがとうございます」

「はい、じゃ、異世界いってらっしゃ~い」

言うやいなや、彼らは異世界に送られた。

「ハァ~、もう二度とあんな奴相手にしたくないわ。」

そう独り言ちていると、次の魂がやってきた。

「さて、哀れなる魂。汝の望みは何か?」

「おうどんたべたい」

女神は温かい月見を食わせてやった。


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