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虹と戯れる砂の底魚  作者: 藤泉都理
第一章
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第三話 穏やか




 可哀想だ、可哀想だと、惜しげもなく哀憫の目を向けては親切な言動を押し付ける、そんな学友にも、仕事仲間にも、近所の住民にも、何なら、家族にさえ、穏やかに、つつがなく接する事。


 家事も、仕事も、私事も、限りなく完璧にやりこなす事。

 失敗して、やはり髪の毛がないからだと思わせない事。

 全身に沸き立つ、この感情を、見せない事。

 怒らない事。

 弱音を吐かない事。

 可哀想ではないのだと声高にでも、か細くでも、言わない事。



 

 可哀想ではないと証明する為に、全てをこなす事。






 そうだ。

 全部全部、自ら決めた事だ。

 そうだそうだ。

 誰が見ていなくても、完璧であろうと、普通であろうと、行動するのも全部全部。

 この、

 追い立てられる切迫感も。

 全部全部。

 自らが創り出した。


 追い立てて、追い立てて、追い立てて。

 

 時々、浮上する疑問に向かい合う暇さえなく、追い立てて。




 ただただ、可哀想だと思われたくない一心で、頑張って来た。


 悲鳴を、普通の声量に捻じ込んで、頑張って来たの、だろう。











(2023.8.3)




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