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今だけ吸血鬼になりたい

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

タグは物騒ですが、疲れたOL(?)が普通の肉を食ってるだけです。


人生において、吸血鬼になりたいと思った事は実は幾つかある。別に夜の貴族になりたい訳でも、不死身になりたい訳でもない。食事をより美味しく戴きたいだけさ。


都内某所、私はステーキのチェーン店に訪れていた。他の店よりも値は張るが、味は確か。何より焼き加減が良い。普通は焼きムラがあって、節々に硬いところがあるのだが、この店は別。均等に、満遍なく、肉が柔らかい。最後の一切れ、端の端に至るまで、極上の柔らかさ。あぁ、来る前から涎が溢れ出てくる。気が触れそう。

私は前菜もそこそこに、肉の到着を待った。あぁ、良い肉が食べたい。昨日だって残業したし、締切は伸びないし。世は無情。愛を囁いてくれるものなんて、『僕は美味しいよ』。なんて癒しの言葉を吐くのなんて、良い肉ぐらいしかない。

「お待たせ致しました。ヒレステーキで御座います」

「どうもー」

目の前に置かれた網目状に焼き目の着いた肉の塊。身が締まり、堪え切れなくなった繊維から僅かに血が漏れ出ている。バターが蕩けて、しっとりと肉に馴染む。あ、気絶しそう。好き。来世がもし良い肉に生まれ変わったら、こうなりたい。もう本望。

内心舌なめずりをして、そっとフォークを入れる。弾力を持って受け止めて、食い込んだ。断面を見てみると、鮮やかなマゼンタが。一口よりも更に小さいサイズに切り分けて、口に運ぶ。

……死ぬ最後の日、私はこれを食べたい。あっさりとした肉の味。脂身が少ない分、重くはない。何杯でもいける。前食べたところは少し脂が強くて、こってりしていたから、少し胃に凭れたのだよな……。でもこれはあっさりした肉汁が、噛む程に肉の味が口いっぱいに広がって、至福への道へと誘って行く。シェフ呼んで欲しい。

細切れをしっかりと堪能した後、欲張ってより大きな塊を口に頬張った。舌全体に乗った柔らかい感触に、立ち上がるのを堪えて噛み締める。なんで肉ってこんなに美味しいのだろう。どうにも昔から生魚が苦手で、肉を愛した。それは今でもそう。好き。

そうやって最後まで味わい尽くした後、表面上に滲み出た血のある部分に切込みを入れた。焼き加減、ミディアム。ウェルダンではそうそう見られない光景。程よい柔らかさと、血のソースが自らが美味しいと物語っている。

堪え切れずに塊のまま口の中に放り込んだ。何のソースも付けてない。着いているのは蕩けたバターとレモンのみ。しかし噛む毎に甘い血が口一杯に広がった。あぁ、世の中にはレバーとか、スッポンの血なんて言う珍味があるけれど、私の中ではこれが断トツ。これほどまでに甘い血を口に含んだ事がない。

故に、今は吸血鬼になりたい。血を啜る夜の貴族になりたい。きっと吸血鬼ならば、この生き血も今味わっているよりもずっと美味しい。脳が焦がれるほどに甘い味が拡がる。別に肉を味わうのならば人間で事足りるけれど、血の混じったこの肉を、最上の状態で味わえるのは吸血鬼しかない。吸血鬼に……なりたい。

肉に対する愛が中々にえげつない。

書いてるうちに段々と狂気を感じて来ました。

え、これ私が書いたんだよね……?( ˙-˙ )


※あ、今は油そばの気分です!! (誰も聞いてない)


まぁ、切羽詰まった状態で甘やかされたら、こうなると。

多分、コメディーです。


乱歩先生はご自分の小説を『これ結構気持ち悪いね』みたいな事を仰ってたそうですけど、その気持ちがほんのり分かります。

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