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マスク  作者: Aju


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9/52

9 初日の終わり

 誰が呼んだんだよ、こんなやつ。リストにないぞ。


 だいたいが、サトルというやつはイジメグループのボス格で、体格だってもっとイカツイ感じだった。

 レンも何度も嫌な思いをさせられてきたし、これでようやく縁が切れると思ったのに・・・。誰が呼んだの? こいつ——。

 パーティー、ぶち壊しじゃん。


 ジュニアのアバターは親と先生が相談してデザインするし、概ねその子の体格や雰囲気に合ったものにする。親がやらない場合は先生だけで決める。基礎教育の途中だからだ。

 コモンに入って初めて、自分で自由にデザインすることができるし、アバターネームも親の決めたそれとは違うものを名乗ることができる。

 ・・・・のだが・・・。


 輝人きらんと


 何? そのイタい名前。

 しかも、そのビジュアル。


 ユウノシンは表情を連動に戻した。そして、思いっきり嫌そ———な顔をする。

「そんな顔すんなよ。友達じゃねーか。こっちでもまた、楽しくやろうぜ。」

 サトルがねちっこく絡んでくる。

 おまえなんか、友達だと思ってねーよ! なにこれ。最悪じゃん。


 レンにしてみれば、こいつに対しては悪い思い出しかない。

 アバターの背中に汚れをつけられたこともあるし、「無視アプリ」とか言って音が聞こえなくなるマルウエアを服なんかに仕掛けられたこともある。

 笑った顔に固定したままで、ふざけてるだけというそぶりで格闘技の技なんかを仕掛けてこられたことがよくあった。

 もちろん、スーツが生身の肉体に一定以上の負荷をかけないように出力を制限するから、怪我などはしないが「痛み」はそれなりに感じるように調整されているから痛い。

 コモンのスーツはこの出力(肉体負荷)を自分で調整できるけど、ジュニアのスーツは先生が一括で管理しているから、子どもは自分で調整できない。

 他人ひとの痛みを知って優しい心を育てるため——だそうだが、余計なお世話だと思う。だいたいこいつを見りゃ、それ、役に立ってないって分かるじゃん。

 レンが標的になったのは、たぶんダンスコンクールで上位成績取ったりするからだろう。勉強のデキるやつもよく標的になっていた。


「まだあっちに挨拶できてない人たちがいるから来て。悪いね、キラント。」

 カイトがサトルの手をほどくようにしてユウノシンを救い出しにきてくれた。表情を「微笑」に固定している。

「けっ」と一言、固定した「微笑」のままで吐き出すように言ってサトルはユウノシンを放した。

「また、あとでゆっくりな。」


 カイトはサトルから少し離れた場所まで来ると、表情を連動に戻し、すまなさそうにユウノシンに言った。

「すまない、ユウノシン。幹事の責任だ。だいたい出席者リストにも案内リストにも乗ってないのに、あいつ、どうやってここを知ったんだろう?」

 カイトは、みんなのところにユウノシンを連れて挨拶に回るようなていで、サトルから距離をとってくれた。

 ついでに、1人1人にサトルが来ていることを告げて、早めのお開きにする旨を伝えて回った。


 ユウノシンがサトルの方をチラ見すると、また誰かがサトルに捕まっていた。

 えーっと、あれは・・・。マロード・・・ジュニアネーム=ワタ、か。

「そういえばワタのやつ、ジュニアでもイジメグループとつながりがあったな・・・。」

 カイトもユウノシンの影から覗くようにして、その様子を見ている。

 ワタはマロードの表情を「微笑」に固定したまま、サトルに肩を抱かれて身を固くしていた。サトルの方も「微笑」に固定しているが、こちらは「ワタはオレの舎弟だ」とでも言わんばかりの態度だ。

「あいつ・・・。脅されてゲロったな。 チッ、あいつは呼ばなきゃよかったな——。せっかくのパーティ、悪かったよ。」

 カイトはひどく責任を感じているようだった。

「今日は余った料理はお持ち帰りにして、早めにしまうよ。この埋め合わせは、必ずする。日を改めて仲のいい身内だけで会を持つよ。」

「気にしなくっていいって。幹事の責任じゃないから。」



 コモン内の「自宅」に戻って、マスクの中のアイコンをクリックしてコモン・メタからOUTする。

 リアルの自室の風景の中に戻った。好きなアイドルの壁紙なんかが貼られた、見慣れた部屋の風景だ。

 レンはマスクを脱いで、スーツも脱いで、シャワー室に行ってシャワーを浴びた。レンの家はそれなりに裕福とはいえ、各部屋にシャワー室をつけられるほど裕福ではない。


 キャリーダクトの前にいくつものトレイが並んで、きれいに盛り付けられた食品やキラキラしたグラスに入ったドリンクが、いっぱい並んでいた。


 はあ———・・・。疲れた・・・。

 今日は・・・なんか・・・・。サイコーとサイテーがいっぺんにやってきた日だったな——。



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