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プロローグ『とある勇者の物語』
昔々、世が混沌として戦が絶えない時代の頃、とある勇者が魔の王を討つべく、仲間と共に立ち上がる。其の者、激闘の末に遂には魔の王を討ち破り、名を世界に轟かせた。勇者は、その名誉に溺れること無く大樹の身許に誘われ、この世界を抱きし楽園を創造せし。
「じいちゃん、勇者様はどうなったの?」
「ふふ、気になるかい? この続きのお話があるんだ。今から教えてやろう。そして、この勇者が何を考えて、どうして大樹を目指したのか、そこで何を見つけたのか、それを教えよう。何百年も昔のことよ。語り継がれるべき、魔王と勇者のお話だ」
ひとりの老爺が窓の外を見る。広がる青空に安心したようにため息をほっと溢して、それから孫のために絵本を広げた。
「いいかい、心して聞くんだよ。お前こそ私の希望なのだから。それに、明日は空を見に行こう。空が一番綺麗な夜が来るからね」
「うん! 僕もおっきくなったら魔王を倒すんだ!それに明日が楽しみ!」
「ははは、それはこのお話を聞いてから決めるといい。本当の、とある勇者の物語だ」