第四夜 基本のホ
お仕事心得 基本編の二回目です。
〝4S〟とは?
「あ~、やっとつながった。おじさん携帯に出てくれないから心配しちゃいましたよ。」
陸斗くんは、久しぶりにオーガスおじさんと話をすることができた。
「あ、ごめんごめん、ここのところ疲れが溜まってたり、いろいろ忙しくてね。」
「そんなに忙しいんですか?」
「ん~、忙しいことよりも、精神的なダメージが溜まっていたのかも。精神ダメージって自分でもよくわからないから怖いよね。」
「僕は、まだそういった経験がないなぁ・・・。いろいろとショックを受けることもあるけど、ダメージが溜まっていく感覚が分かりません。」
「まあ、それが若いっていう証拠だよ。歳をとると、いつまでもクヨクヨしてしまって、情けないもんだよ。」
(おじさん、ちょっと悲観的だなぁ・・・。大丈夫だろうか?)
「それで、この間の続きを聞きたくて電話してました。」
「あぁ・・・そうだったね。僕もいろいろと考えてはいたんだ。」
「お願いします。学校の友達とも、時々話すことがあるんです。」
「ごめんよ。間が空いてしまって。この間は、〝睡眠〟について話しをしたよね。」
「はい。」
「じゃあ、今日は二番目に大事なことを話すよ。」
「よろしくお願いします。」
オーガスは、テレビのスイッチを切って話を始めた。
「陸翔くんは、〝4S〟って知ってるかな?」
「ん~、なんでしょうか。なにかの掛け声ですか?」
「工場や建設現場で、よく横断幕が掛かっているんだけど、ある言葉の頭文字を取って4Sって呼んでるんだ。」
「すみません、何の言葉なのか想像つかないんですが・・・。」
「そうだね。まあ、僕も学生の時は知らなかったから、全然大丈夫だよ。〝4S〟とは・・・
【整理】【整頓】【清潔】【清掃】
の頭を取って、〝4S〟と呼んでるよ。」
「なんだ、随分簡単な言葉ですね。もっと凄い言葉なのかと思いました。」
「だろう。しかし、これを実践すると、なかなか骨が折れるもんだよ。」
「クラブ活動でしっかりやっていたから、難しいことじゃないと思うんですが、仕事場では違うんでしょうか。」
「そうなんだよ・・・。これが仕事場になると、途端にダメダメになるよ。」
「え~っ、大人になったら出来なくなるんでしょうか。」
「んー、まず、仕事場は、クラブ活動ではないから、先生とか、強制的に躾てくれる人がいない。それから、クラブ活動のように目的がはっきりしていないせいもあるよね。」
「でも社長さんとかが、叱ったりしないんですか?」
「まあ、いろんな人が集まっているから、一筋縄にいかないんだよねぇ・・・。これが。」
「散らかった仕事場なんか行きたくないなぁ・・・。」
「だよね。でも、散らかってても気にならない人もいるから困ったもんだよ。クラスの中を眺めてごらん。いろんな奴がいるだろう。」
「・・・ですね。」
「そいつらが、全員、クラブ活動に入ってきたら、まとまると思う?」
「全く思いません。」
「だろ。そういうことさ。特にお給料目当てで来ているんだから、クラブ活動のようにはいかないよ。」
「そうなんですか・・・。」
「まあ、あんまり落ち込まんでくれ。きちんとやっている人も必ずいるから、見習ったり、整理方法を教えてもらうといいと思うよ。」
「わかりました。だけど、なぜこれが二番目なんですか。」
「うん。今まで僕もいろんな人を見てきたけど、仕事の出来る人、幸せな人、出世する人の机や作業場が、とてもきれいに整理されているからだよ。」
「えっ、それは良いですね。良い事を聞きました。でも、なぜなんでしょうか。」
「それはね、整理できるということは、その人の頭の中の物事が整理されていて、それが現実として表れているからなんだ。」
「なるほど~。」
「仕事の段取りがイメージ出来ていて、分類できていて、どこに何があるか、既に頭の中で整理しちゃってる。だから、仕事が早いし、話も早い、みんなに好かれて頼りにされるから、みんなが楽になるから、周りが幸せになる。もちろんその人もだけど。」
「へぇー、面白いですね。」
「そう、無駄がないから、無駄な時間もお金もかからない。」
「はい。」
「つまり、整理するってそういうことなんだよ。」
「わかりました。整理って大事なんですね。」
「そうだよ、仕事場では、次から次へと仕事が飛んでくるから、どんどん整理していかないと、訳が分からなくなる。」
「〝整理が難しい〟ことが分かってきました。」
「例えば、こんな感じだ。『陸翔君、9月27日の会議の資料を送ってくれ。すぐに。』と言われて、『えーっと、何の会議でしたっけ?あれー、どこに仕舞ったかなあ・・・。』なんてやってると、仕事に支障がでるわけだ。」
「それは辛いですね。」
「うん、そうすると探す時間が、待ち時間になる。待った分だけ無駄な時間となって、会社に損害を与えているってことだ。」
「そ、そうなんですか・・・。」
「それで弁償しろとか言われないけど、意識を持つことが肝心だよ。」
「あと、清掃、清潔は、なぜなんでしょうか。」
「清掃、清潔を保つためには、まず整理整頓しなくちゃならない。」
「なるほど。」
「それから、清潔にしておけば、頭の中がクリアになるよ。きれいなお店に入ると、気分がよくなって明るくだろう?なんかいろいろやってみようって気になるじゃない?」
「そうですね。」
「汚れていると、ほこりが舞って風邪をひきやすくなったりするから、健康面でも大事なことなんだ。」
「分かりました。簡単な言葉だけど、大事なことなんですね。」
「うん、僕は、その逆の人もたくさん見てきたから、まあ間違いないと思うよ。」
「明日、友達と話してみます。今日はありがとございました。電話がつながって良かったです。」
「うん、役に立てたら良いね。」
「じゃあ、おやすみなさい。」
「おやすみ~。」
☆整理・整頓・清掃・清潔にまつわる、よまやま話
1.「断捨離」不要な物を捨てて、物への執着を断ち切る。過去への決別と、未来への出会いとも言える。物を減らすことで、大事なことに集中できる。ビジネスの基本「選択と集中」に似る。
2.「ミニマリスト」とにかく物を持たない生活を目指す人達のこと。電子決済するので財布すら持たない。家電製品、家具も全て借り物にしたり、ホテル暮らしをする。無駄がないので、お金の無駄遣いもしない。
3.「トイレの神様」トイレを掃除すると幸せになるという歌詞の歌。ネタを明かすと、トイレを掃除すると、どんな面倒なことや、汚れ仕事に抵抗がなくなり、人の嫌がる仕事でもできるようになる。他人の小さな欠点も気にならなくなるので、人付き合いが良くなり、幸せになるということ。飲食店がトイレ掃除を必死にやるのは、こういった意味がある。デパートのトイレが、やたらゴージャスなのは、このことを知っているから。トイレがきれいだと、お客さんが寄ってくる。
4.「床は自分の手で雑巾掛けする。」床を拭こうと思ったら、整理しないといけない。よく床の物を置く人がいるが、〝とりあえず〟置いているだけで、永遠に片づけない。片づけないから散らかるし、作業性が落ちる。また、普段見ることのない下を見つめることで、精神的にもゆとりがでるものと思われる。有名なコンサルタントが、お店を繁盛させるには、床を磨きなさい、と、一言だけいって帰ったという逸話もある。
5.風邪をひきやすい人は、部屋の換気を疎かにしている。部屋の空気が入れ替わらないと、ほこりやウィルス、カビを吸ったり、二酸化炭素が上昇するなどして、体に悪影響を与えてしまう。風邪をひきやすい人は、窓を開けて換気し、徹底的に掃除をしてみてください。
これまで沢山の職場と、沢山の人達を見てきましたが、【整理・整頓・清掃・清潔】を実践できている人達は、本当に仕事が早いです。逆にできていない人は、いつまでたっても埒があかないし、頑固でめんどくさいです。残業も多いし、いつでも考えがまとまっていないように思えます。
いつでも、どこでも、誰でも出来る単純で、非常に効果のあることなので、心がけてみてください。
あ・・・、家事も一緒ですよ。