第三夜 基本のキ
前回は、つらい話をしましたが、今回から、やっと心得らしい話になります。
投稿期間が開きすぎてもよくないと思うので、第三夜は、書き足して更新していきます。
時々、のぞいてみてください。
陸翔君は、地方に在住している高校三年生だ。
地元の会社に就職活動を始めたが、始めの一社目であっさり内定をもらってしまった。
就職が決まったことを報告するため、オーガスに電話をした。
「おじさん、こんばんは。」
「やぁ、陸翔くん、元気?そのあと何か進展あった?」
「はい。市内のIT部品を製造している会社に決まりました。」
「おーー、それはおめでとう。いよいよ、これからだね。」
「はい。ちょっとどきどきしています。」
「うん。それはいいね。ドキドキするくらいが丁度いい。」
「面接で、サッカー経験の話をしました。」
「へぇ、どうだった?」
「いろんな人と、コミニケーションが取れる人は貴重だから、是非、うちに来てほしい、って。」
「それは良かった。」
「おじさんのアドバイスが良かったんだと思います。僕達みたいな高校生だと、そういったことが分からないので・・・。ありがとうございました。」
「うん、まあ、ちょっとは役に立てたのかな。会社に入ったら、あとは自分しだいだから、頑張ってね。」
「はい・・・、それで、会社に入ったらどんなことに気をつけていいのか、よく分からなくて・・・。」
「そうか~。ネットや本で調べてみた?」
「はい、いろいろ見て回ったんですけど、なんか堅苦しいっていうか、細かすぎるし、いろんなことが書いてあるから、本当なのかどうか、いまいち分からないんです。」
「もっと簡単に知りたいっていうことかな。」
「はい。」
「そうだね。本やネットだと、文字数やページ数を稼がなきゃいけないし、下手に変なことも書けないから、ぶっちゃけ話がないんだろう。間違ったことを書いていると思えないけど、まあ、たまには変な情報もあるだろうね。駆け出しのライターなんかが、小遣い稼ぎに書いた記事なんか見ると、つまらんことするなぁ・・・、なんて思うこともあるしね。」
「そうなんですか・・・。」
「僕の経験と反省から、言うと・・・」
と、オーガスは話はじめた。
一、寝る子はよく育つ。
「まず初めに、良く寝ることだね。」
「えっ!それが一番なんですか・・・?」
「うん。睡眠がとれていないと、頭が回らないし、悲観的になったり、食べすぎたりするよ。」
「確かに、試合前には、よく寝なさいって言われました。」
「そ、「一番の健康方法は、よく寝ることだ。」とイチローも言っているらしいよ。」
「服装とか礼儀が一番だと思ってました。」
「ん~、結局、睡眠がとれていないと、思考がおかしくなるから、変な人が礼儀正しくしても、ますます変な人になるだろう?」
「そ、そうですね・・・。」
「頭が回らないってことは、体もちゃんと動かないってことなんだ。脳が体を動かしているんだから、当たり前なんだけど、分かろうとしない人も多い。」
「あ~、徹夜自慢する奴っていますよね。」
「そうそう、社会人になっても、そういう人達っているんだ。『俺は、誰よりも頑張ってるんだぜ。』アビールだね。自慢したいだけだと思ってスルーした方がいいよ。仕事が間に合わなくて、徹夜というか、夜中まで仕事する人達もいるけど、それは仕事の段取りが悪いとか、アクシデントがあったとか、良い事ではないから、いろいろ見直さなきゃいけないことなんだけど、自慢されても困るよね。」
「確かに、うざったいです。」
「ともかく、きちんと寝ていないと、冷静な判断ができなくなるから、最初の小さなミスが、だんだんと大きな過ちになってゆくよ。手元で10°違うだけで、10m進むと全然違う方へ行ってしまうだろう?」
「はい。」
「感情的になって、お客さんを困らせたり、早まって判断を誤ったり、見落として怪我をしたり、まあ、ふんだりけったりだよ。」
「でも、僕、寝すぎて寝坊しそうです。」
「うーーん、若いうちは体力があって寝すぎてしまうから、気を付けた方がいいね。数か月に一回くらいだったら許してもらえると思うけど、一か月に一回の割合で遅刻してると、たいてい社会人として失格の烙印を押されると思った方がいいよ。まあ、会社にもよるけど。」
「なるべく早く寝て、寝坊しないようにします。」
「そうだね。なるべく早く寝た方がいいよ。それから、寝不足だと、“マイクロスリープ”といって、日中でも瞬間的に脳が眠ってしまうそうだ。誰も気が付かないらしい。」
「それは、怖いですね。」
「そう。例えば、瞬間的なミスを見逃したり、瞬間的に人の話を聞いていない。なんてこともある。」
「ほとんどわからないじゃないですか。」
「そうだね。だから、他人に何かを伝える時は、違う角度で話直したり、文書で手渡したほうが、いいだろうね。」
「あと、悲観的になるってどういうことなんでしょうか。」
「ん~、メカニズムはよく分からないんだけど、頭が冴えてるときって、ああしてみようとか、こうやったらいいんじゃないかとか、頭が良く回るから、楽しくなると思うんだよね。だけど、頭が回ってないと、あれもダメ、これもダメが重なって、どうせダメだろう。みたいな思考回路になっている気がするよ。気分の問題だけど。」
「あと、食べすぎるっていうのは?」
「どうやら、満腹感を感じる回路がぶっ壊れるらしい。僕も地下鉄工事で、夜間作業をしている時、寝不足が慢性化して、食べても食べても満足しなかった。でも明らかに、胃が膨れ上がって、パンパンに張っているにも関わらずだよ。僕らは満腹中枢が壊れた。なんて言ってたけど。寝不足の人は太りやすい。ってこういうことだと思うよ。」
「ん~、人間の感覚なんて壊れやすいでしょうか。」
「そうだよ。人間の精神なんて、強いようで弱いもんさ。それをどうやって乗り越えるか、自分次第だね。」
「あの・・・おじさん。」
「ん?」
「そろそろ寝ます。」
「そうだね、お休み~。」
早く入社後編にいきたいのですが、しばしお待ちを。