(告白、似顔絵)
そして週末ののんびりとした天気の日に。
僕は夏奈保と、下り方面の電車に乗っていた。
「どこ行くの?」
「私のおすすめの場所。私が、春星と話したい場所」
「ふーん」
よくわからないけど、僕も夏奈保も風景を描くのが好きな人だ。
だから、夏奈保がそんなに色々と思う場所なら、きっとすごい眺めなのかなと想像する。
電車はどんどんと海の方へと向かっている。
海まで行くのかな?
そう思った時、僕は夏奈保に手を引かれた。
「降りるよ〜」
「え? ここ住宅街な気がするけど」
「ううん、いいんだよここで」
夏奈保は少し静かな口調で、ドアが開くのを見つめながら、そう言った。
夏奈保と住宅街を歩いて行くと、突然、目の前に大きな橋が現れた。
そしてその下を流れるのは川。
大きな川で、下流を見れば、もう海へと繋がっていた。
橋の中ほどまで歩くと、景色を眺めるためのでっぱりがあった。
そこで夏奈保は立ち止まり、僕も立ち止まった。
「ね、いい場所でしょ」
「たしかに。しかもあんまり知られてなさそう」
「うんうん」
下を流れる川は、深くて、透き通ってはいなかった。
だけど、ずっと向こうまで水が流れて、そして広い海のどこかへとたどり着くということは、一目でわかる壮大な眺めだった。
「ねえ」
髪を払って、夏奈保が言った。
濡れていないはずなのに、夏奈保の髪から水が、川に落ちたように見えた。
「私ね、春星のことが、好きなんだ」
「……おお」
まじか。
夏奈保が僕に想いを告げた、
その想いは、透き通るような、夕陽の色だった。
だからこの場所だと美しく見えて、僕は数秒、夏奈保だけがいる、唯一の絵画の中にいた。
僕は答えた。
「僕も、夏奈保、好き」
「や、やった」
夏奈保がゆっくりと近づいた。
「ぎゅっ。やっぱり、ここにしてよかった」
急に僕を抱きしめて、そんなふうに言う。
自分が恋をしていた女の子に包まれるって、初めて。
「この場所は、夏奈保にとってどんな場所なの?」
「……私にとっては、励ましてくれる場所かな。お母さんとお父さんが、わざわざここに連れてきたの。私が泣いてた時。なんか、お母さんとお父さんが、付き合い始めた場所なんだって」
「へー」
そうか。
そんな場所で、夏奈保は僕に告白したんだ。
僕は夏奈保に、自分からは言えなかった。
それでも、もういいや。
僕は夏奈保の感触と、この景色を感じるので精一杯だし。
その時、気づいた。
「そういえばこの景色……あの絵だ」
「え?」
「あの絵だよ。夏奈保の似顔絵の背景、この場所だったはず、多分」
「あ! あはは」
「なんだよ」
「たしかになーって。なんで気づかなかったんだろう」
夏奈保は、子供っぽく笑って、それが本当にすごく、可愛かった。
そしてそれから、言った。
「やっぱ私の似顔絵書いたの、私のこと好きな人だったんだね!」
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次が最終話です。最後までお読みいただけたら嬉しいです。




