海のたもと
蝶を 釣った
そしてお前は
海のたもとに
沈め 沈め 移ろうままに
深く 深く 圧されるがまま
鎮め 鎮め 杭を打ち込んでしまえ
深く 深く 逃れるまえに
沈み 潜み 移ろうままに
見えぬ 昏きを 逃れるまえに
息を殺せ
心音を閉ざせ
さもなくば
沈め 沈め 移ろうままに
濃き蒼 深き蒼 流るるままに
鎮め 鎮め 椚を掛けてしまえ
猛き 遥か 逃れるまえに
潜み 潜め 移ろうままに
もの言わぬ 昏き 移ろうままに
息を殺せ
心を
そして拓け
さすればお前は
沈め 潜れ 移ろうままに
深く 深く 圧されるがまま
鎮め 鎮め 抗うことなく
潜み 沈め 足掻くことなく
広き 昏き闇に 吸われるがまま
浮かび いきつぐ 間見せることなく
生を殺せ
意思を殺せ
光を閉ざせ
お前を拓け
そしていつかは
海のたもと
移ろうままに
為らんと欲す
さすればお前は
海のたもと
沈め 沈め 灯の届かぬ果てに
深く 深く 流るるままに
それは 遥か 移ろうままに
さしずめおれは
この海のすそ
胡蝶を釣った
この海のすそ
蝶を 釣った
細く 薄汚い 蒼の蝶
雫を 垂らし 懺悔するおれは
それを 現と 呼んだ
沈め 沈め 海のそこ
深き 昏き 闇のなか
鎮め 鎮め 海のそこ
息を殺せ
心音を閉ざせ
いつかの お前は
海のたもとに
虚ろ 現し身 移ろうままに
鎮め 鎮め 闇のなか
いつかのおれは
海のすそ
そして おれは
蒼き蝶を
そしていつかは
海のたもとに