前世推しの宰相様に会いに行きます
短めです
宰相、エレメント・ドーリア様。
国王、王族、補佐官に次いでこの国で権力を持つ人間である。現在二十五歳と、若くして内府をまとめておられるお方だ。
そして《イケメン王子様たちと神子姫の追憶》のゲームの攻略対象のひとり。
クール眼鏡&大人属性である。
いやぁ前世の私は若かったから、大人に弱いよね!仕事してる大人ってかっこいいよねー。
そしてその妹、シルファ・ドーリア様。
シルファ様はあまり社交的ではなく、夜会に参加するとレア!と周囲から叫ばれるようなお方だ。
なのでシルファ様への取り次ぎをお願いしようと、昼休憩の時間を狙って、宰相ーーエレメント様の執務室に来てみたのだが。
「…何か御用ですか?」
眼鏡がきらりと光る。
扉を開けてみたのはいいのだが、中の光景を見た途端固まってしまった。
「…エレメント様、お昼休憩は…?」
「見たらお分かりでしょう。ありませんよ」
ええ、まぁそうでしょうね。書類に埋もれてますもの。わー、ブラックだ、社畜だ。
お父様に伝えて業務改善をするべきだわ…。
「で、御用件は。リラエル第一王女様」
「あの、お忙しい中、とても心ぐる…」
「御用件は」
冷たい!いや確かにクール眼鏡って設定だけども!!
ゲームの中ではかっこよく見えるけど、現実だと心折れそう…。
リアルは優しい人が良いです。
「エレメント様の…妹様と、お話ししたくて」
「シルファと?なぜ?」
ガードが固いとギルバート兄様が言っていたことだし、おそらくお兄様とのお茶会と言えば来てくださらないだろう。
というわけで面倒な兄はスルーの方向で、まずはシルファ様と仲良くなる!
そして兄と偶然出会わせるのだ。
「お友達に…なりたいんですの…!」
「………」
再び眼鏡がキラリと光る。
いやどういう原理で光っているの??感情とシンクロするの???どういう感情なの?
沈黙が怖い。
「分かりました」
「え…っ、」
「我が妹を友人にと望まれるとは第一王女様はお目が高い。ぜひ、仲良くしていただきたい」
あっ、この人クール違う。
ただのシスコンだ…。
前世で宰相のグッズを集めていたわたしに言ってあげたい。
金の無駄やで、と。