表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/15

似ています


「似てるわぁ……」


騎士団の模擬戦を眺めながら、ほうっとため息をついた。

視線の先には団長アルバート様と、副長であり私の護衛も務めているゼノ様が剣戟を繰り広げている。

周囲を騎士団の団員が囲んでおり、ツートップの本気の模擬戦に興奮の雄叫びをあげている。


「なにに?」


同じく広場から少し離れた観客席に座っているルトが私の独り言に反応し、不思議そうに見てくる。


「初恋の人」

「ーーはぁ?」


はぁって何だよ。すごい興味なさそう。

それよりこの前の毒事件からどこへ行くのにもついてきますけど暇なのかしら。

一応王子なのだから、勉強とかしろよ。


「…お前、恋愛とかするんだな」

「まぁ女の子ですしね」


ゼノ様はかっこいいなと素直に思う。

追憶の崖で会った初恋の人に似ているのもあるけれど。


さらさらの黒髪に、少し垂れた目尻。凛々しい表情。

正直とてもタイプである。


キィンッとゼノ様の剣が弾かれ、アルバート様が勝ち誇ったように笑った。

次の瞬間、深く踏み込んだアルバート様の剣先がゼノ様の首元で止められる。どうやら決着がついたようだ。


ゼノ様は悔しそうに剣先を地面に突き立てると、歯を食いしばってから抜き、鞘にしまった。


「……騎士団長の息子との婚約、取り消すか?」


ルトが探るように聞いてくる。

中立派の騎士団長の派閥との繋がりを強固にしておくのは、ルトの治世にきっと役に立つ。

女の私には婚姻で繋ぐくらいしかできないのだから、今更恋や愛にうつつを抜かすわけにはいかない。


「いえ、王族の務めですから。なに、急に優しくなって気持ち悪い」

「悪かったな!!!だいたいお前妹だろうが!お兄様と呼べ生意気なんだよ」

「同い年じゃない」


「仲がよろしいのですね」


苦笑いしながら、ゼノ様が近づいてきた。

先程まで試合をしていたのに、払ってきたのか土埃ひとつ付いていない。本当、少女漫画にでてきそうな完璧ぶりだなぁ。


仲良くなんかないとルトーーお兄様が喚く。


「俺は忙しいんだよ。ゼノ、頼むぞ」

「かしこまりました」


ゼノが戻ってくると、ルトは足早に去っていった。どうやら私が一人でゼノ様の試合を見ているのが気にかかって、忙しいのにそばにいてくれたようだ。


「ルト、ありがとう」


後ろ姿に声をかけると、護衛もつけずにうろつくなバカと返ってきた。

ハルが一緒だから大丈夫だもん。



「姫様、本日の騎士団の訓練は終了いたしました。わざわざお迎えいただきありがとうございます」

「騎士団の訓練を見たい気分だったから大丈夫ですわ」

「ところで貴方様の護衛のジジはーー?」

「偵察中」


端的に答えると、はぁと不思議そうな声が返ってくる。だが私が探られたくないのを察したのか、それ以上何もせず聞かなかった。

なんと優秀な騎士でしょう。


さぁ移動しようと思い立ち上がったその時、静かに後ろに控えていたハルが、あっと声を上げた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ