表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/15

プロローグ





赤く染まった彼女の、声が聞こえた気がした。

そんなはずはない。だって、彼女は今、目の前で事切れたのに。


ごぽり、口元が動く。



ーーお前のせいだ。


ーーお前さえいなければ、私は死ななかったのに、









 



びゅお、と風が吹く。

ここはいつも強い風が吹くが、今日は一段とご機嫌ナナメらしい。


せっかく朝に整えた髪が、まるで鳥の巣のようにぐちゃぐちゃに乱れる。


『……』


王宮から少し離れた場所にある、湖のそば、切り立った崖。

ここは《追憶の崖》と呼ばれ、強い思いを込めて呼べば死者の魂が現れると言われている。

故人にもう一度会いたい人、故人に強い思いをぶつける人たちがよく訪れる。


別にもう一度、彼女に会いたい訳でも、言い残したことがある訳でもない。

ただ、ここに吹く風が、流れる涙をも吹き飛ばしてくれるから。


『……大丈夫?』


かさり、と背後で枯れ葉を踏む音がした。

背後に誰かが来たのは分かっていたが、話しかけられるとは思わなかった。

ここでは、誰と出会おうがそっとしておくのがマナーだろうに。


振り返らず、何も返さず、歯を食いしばる。

後ろにいた彼はそんな私に何も言わず、横に並んでただ、空を見上げた。


『……守れるようになりたいんだ』


彼は、ぽつりと言った。

僕に守れるものは少ないかもしれないけど、それでも、




君のように泣く人を、少しでもなくしたい。




強くなってみんなを守るのだと、

彼は泣き笑いのような顔をしていた。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ