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異世界”あいどる”オークション  作者: 小説を耳で食べる人
第二章 王都予選・モーラ編
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溢れ出すプレゼント

 メイメルの前にリボンで飾られた大きなプレゼント箱が現れる。

 

 彼女がそれを開くと、中からドレス姿のタユーカが姿を現した。

 

 

 タユーカはドレスに似合う淑女然とした姿勢のよさで、社交ダンスを踊るように綺麗に踊る。

 

 そして一つのプレゼントの前まで来ると、リボンを解いてそれを解き放つ。

 

 

 そこからは魔術学院の学生服を着たレイナが飛び出してきた。

 

 杖を手にしたレイナは杖の先から光を振りまきながら楽しそうに歌い踊る。


 

 騎士、村娘、浴衣、衛兵、コック服、ミニスカサンタ、シスター、水着。

 

 幻影を上手く利用し、目まぐるしく入れ替わりながらプレゼントを開き、そこから新たな少女が次々と現れる。

 

 

 次はいったい何が飛び出すのだろう?

 

 そんなわくわくが会場中に広がっていく。


 

 そして最後はひと際大きなプレゼント箱の中から最初のあいどる衣装を着た三人が飛び出してきた。


 アップテンポの楽曲の中、三人は息ぴったりに歌い踊り、決めポーズをきめた!




「「わああああ――っ!!」」


 観客席から大歓声が沸き起こる。


 

「凄い! 楽しいね!」

 

 俺達も勝負を忘れてステージ上のキャラメルリボンの三人に喝采を送る。


「「おおおおお――っ!!」」


 さらに親衛隊からも野太い強烈な雄たけびが立ち上がった。



 予選や一回戦よりも盛り上がる楽曲を三人は精一杯歌い踊ってみせた。


 だから俺は残念に思う。


「キャラメルリボンのみんな、パフォーマンスありがとう! 次々に登場するサプライズプレゼントに会場も大興奮だあ!」


 司会のマイクを手にしたキビスがステージ上に現れた。



「どちらも素晴らしいパフォーマンスだったね」


「けれど勝者は残酷にも一組! 結果発表に行ってみよう!」


 バックのスクリーンに円グラフが現れるとそれまで湧きかえっていた会場がしんと静まり返る。

 

 ドラムロールと共にせめぎ合う二色。

 

 押し合いへし合い、勢いよくグラフの色が変わっていく。



 そしてドラムロールが一つ大きな音を出すと同時に結果が表示された。


 

「59対41――勝者、みらくるベリーズ!」


 キビスの口にした結果がスクリーンにも映し出される。

 

 みらくるベリーズのグラフがキャラメルリボンのそれを押し込んでいた。



「じゃあ行ってくるね」


 結果が出て苺たちはステージに向かう。


 反対側からは再びキャラメルリボンのメンバーが姿を現す。

 

 舞台袖で表情を失くしていたから心配だったが、今は笑顔をステージに振りまきつつ、苺たちにエールを送ってくれる。



「次も頑張ってね!」


「私たちに勝ったのですから、負けることは許しませんよ」


「次の試合も楽しみにしていますねえ~」


 

 うーむ、よく教育されている。

 

 その様子に俺は複雑な気持ちになる。



 心からの激励というよりは、演技という印象を受けたからだ。

 

 

 勝ったらこうする。

 負けたらこうする。

 

 そういう技術はあいどるにとってとても大切なスキルだと思う。

 

 

 けれど今の感情とのあまりの解離(かいり)のせいで、仮面として浮き上がりすぎているのがどうにも痛々しい。

 

 

「思ったよりも差が開きましたね」


「まあ仕方ねえよ」

 

 ルエラの感想に俺は観客席の一画に視線を向けた。



 親衛隊のメンバーは肩を落としていた。

 

 茫然としたり、泣き崩れるメンバーまでいる。

 

 全力で応援したからか、皆立ち眩みを起こしたように静かな様子なのが印象深い。

 


「こうして実際に目の当たりにしてみると訓練された軍隊だな」


 それでも結果発表の時はキャラメルリボンが負けたにもかかわらず、親衛隊は一糸乱れぬ動きでサイリウムを振っていた。

 

 その一心不乱さに周囲の観客が引くほどだ。


 その異常すぎる熱量がせっかくの楽曲の興奮に水を差す結果になっていた。


 

「策士、策に溺れると言ったところでしょうね」


 そんな親衛隊の様子をルエラは興味なさそうに一瞥(いちべつ)するだけだ。



「凄い応援だったね。戦場なんじゃないかと思ったよ」


 苺も彼らの方を見て困った顔を浮かべていた。


 やはりキャラメルリボンの楽曲を楽しみながらも彼らの応援の様子が気になってしまっていたらしい。


「あれがなければいい勝負になっただろうにな」



 今回のパフォーマンス対決、まっとうな勝負であれば結果はどっちに転んでいたか分からなかった。

 

 それくらいにキャラメルリボンのパフォーマンスは魅力的でレベルも高かった。

 

 モーラが居なければ負けていたのは俺達だっただろう。



 それくらいにエスクラブプリュイの姉妹あいどるたちのレベルは高い。

 

 何組も予選を勝ち上がっているというのも頷ける話だ。



「モーラさんが女性ファンを引き込んでくれたのも大きかったですね」


 ルエラは観客席の別の方を見る。


 そこには普段あまり見かけない大人女性の観客層が多くいた。

 

 間違いなくこれはぺリステラー商会やモーラが呼び水になったファンたちだろう。



 今までファッションショーやイベントで一流モデルとして活動してきた。

 

 さらにベリーズ劇場のライブを通じて今のモーラにも惚れ込んでくれた。

 

 モーラが招き入れたファンたちだ。

 

 

 そんな大人な女性達は親衛隊たちの異次元な応援に完全に引いてしまっていたのだった。



 いっそ彼らをステージでパフォーマンスさせたら面白いんじゃないか――そんな考えが頭を過ぎってしまう。



「まあ自滅とはいえ勝ちは勝ちだ。次の試合に向けて気持ちを切り替えていくぞ」


 そろそろ会場を出ようと呼びかけ、そこで俺は苺が反対側のステージの方を見ているのに気づく。

 

 苺にしては随分とおとなしいと思っていたら、どうやら向こうの様子を見ていたらしい。

 

 じっと観察するように彼女達三人を見つめ続けている。


 

 反対側の舞台袖ではキャラメルリボンの三人が泣き崩れている。

 

 三人で輪を作り、その中で悔し涙にわんわんと泣いていた。



 そうして俺も反対側の舞台袖の様子を見ていたが、いつの間にか傍にいた苺が脇腹をつんつんと突いてきた。


「お兄ちゃん、祝勝会だね!」


 苺が拳を突き上げる。


 さっきまでの静かな様子とは打って変わり、苺は楽しそうだ。



 するとルエラがにこりと、けれども肉食獣のような獰猛な気配を漂わせながらさっと俺に詰め寄ってくる。


「今日は食事制限ないですよね?」


 目の中に肉汁滴(にくじゅうしたたる)る骨付き肉が見えた。

 

 その強烈な圧に俺は思わず仰け反ってしまう。



 そこにモーラも近寄ってくる。


「い、いつもリリークレイドルで祝勝会をしているんですよね? 

 ゲン担ぎの意味もあるってルエラさんから聞きました」


 モーラはいつもの状態に戻りつつも、喜びに口元が綻んでいる。

 

 

 そんな三人を順番に見て、俺は溜息一つ肩をすくめた。


「まったく……お前ら食い過ぎるなよ」



 苺たちはすでに気持ちを切り替えている。


 俺もうだうだしてる場合じゃねえな。


「んじゃ行くぞ。もちろん予約はとってあるから安心しろ」

 

 

 俺もにかっと笑い歩き出すと、予選会場をあとにするのだった

 



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