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異世界”あいどる”オークション  作者: 小説を耳で食べる人
第二章 王都予選・モーラ編
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美容と食欲

「「お帰りなさいませ、ご主人様! お嬢様!」」


 透き通るようなドアベルの音が店内に鳴り響くと、店のメイド少女たちが一斉に挨拶をしてくれる。


「今日も盛況だな」

「みんなお疲れさま~!」


 それに軽く手を挙げて返しつつ、俺が先に入りいつものカウンター席に向かう。

 

 俺と苺、ルエラにモーラ――今日は四人でリリークレイドルを訪れていた。


 先に思念伝達で連絡を入れていたからか、奥の席は四人分しっかりと空いている。

  

 最近は予選会場にも出張している影響か、この店にも以前よりお客が増えた。


 予め予約をしておかないと席に座れないくらいに盛況となっている。


「いらっしゃい、シュカちゃん。一回戦突破おめでとう!」

「ありがとな、マスター……紹介する、こいつが俺と新たなあいどる契約を交わしたモーラ・ぺリステラーだ。

 ぺリステラー商会の大店(おおだな)の商会主の娘で現役のモデルだ」


 俺はマスターにモーラを紹介する。


「モ、モーラ・ぺリステラー……です」


 モーラは緊張でそわそわしつつ、目を泳がせながらもなんとか自分の名前を口にした。


 そんなモーラにマスターはくねくねと見悶えながら熱い視線を向ける。

 

「あらあ、現役モデルだなんて凄いわね! 背も高いしスタイルもいいし、惚れ惚れしちゃうわあ!」

「きょ、恐縮です……」


 モーラがくねくねとする筋骨隆々のおっさんメイドに頬を引き攣らせる。


 まあ初めて見るやつには珍獣もいいところだよな。


「もうお父さん。初対面の人にそんなに食いついたら怯えちゃうでしょ?」


 モーラとマスターの様子を見かねてか、給仕をしていたリメッタが俺達のところにやってきた。


 相変わらず戦牛族の魔乳は揺れている。

 以前よりも少し大きくなっただろうか?


「モーラさん、いらっしゃい。リリークレイドルにようこそ。

 大会では私もしっかりサポートするのでよろしくお願いしますね」

「は、はい。これからよろしくお願い、します……リメッタさん」


 初対面でもにっこりと挨拶をするリメッタに対し、モーラは気圧されたようにおどおどとしながら返事をした。


「けど本当に現役のモデルさんなんですね。近くで見ても凄く肌が綺麗。スキンケアとか色々アドバイスしてほしいなあ」

「え、ええと。リメッタさんも、その、十分に可愛らしいと、思います……」


 そんな二人のやりとりにルエラもにこりと微笑みかける。


「リメッタさん、早速ペリステラー商会の商品を使っているのではありませんか? この前より肌が綺麗になっていますよ」

「ルエラさん、本当!? なんだか肌がふわふわになっていい感じだとは思っていたんですよ!」


 リメッタはルエラの指摘に嬉しそうにはにかんだ。


 うん、その可愛さも割増しになってるな。


「確かによく見れば柔らかそうな頬だ。思わず(つつ)きたくなるな」

「って、もう突いてるじゃないですか!」


 指でぐいぐい押すと吸いつくような感触が返ってくる。


「本当に効果が出てるんじゃねえか?」

「そ、そんなこと……あっ、そりゃあ出てるだろうけれど、それとこれとは違うと思います、シュカ兄さん!」


 ちらりとモーラを見たリメッタは褒めると頬を膨らませながらも赤くなり、俺から離れた。

 

 相変わらず自分の気持ちに素直なやつだ。


「ねえねえ、苺も綺麗になった?」

「んっ? ああ、はいはい。綺麗になった、綺麗になった」


 そう言いながら俺は苺の頬を指でぐいぐい圧した。


「むう、なんかリメちゃんの時と反応違くない!?」


 なんとなく前よりもふっくらしているとも思わなくはないが、毎日見ているせいか気のせいとも思えてしまう。


 いや、苺もルエラも毎日ちゃんとパヒュームメロンのメンバーからスキンケアの指導を受けて実践していたし、効果は出ているはずだ。


 そう思って俺はルエラに視線を向ける。

 

 するとどうぞとばかりにルエラが頬を差し出した。

 なぜだろう、思わずビンタしたくなるドヤ顔だ。


 そんな考えが一瞬脳裏を過ぎりつつも俺はルエラの頬も指で押す。

 あいどるを張り倒すなんてもっての外だ、本来は。

 

 すると吸い付くような感触が指に返ってくる。


「ケアをしっかりしているな、偉いぞ」

「ありがとう御座います」


 ルエラの肌はきめ細かい。


 モーラ同様日常的にしっかりとしたスキンケアを普段から心掛けている証拠だろう。

 

 やはりルエラはどこかの上級貴族の娘だったに違いない。

 即席なんかではない基礎から磨き上げてきたものを感じる。

 

 ファリトリアか……これはモワノーあたりに頼んで素性を調査してもらう方がいいかもしれねえな。


 異世界あいどるオークションを勝ち上がっていけば自然と知名度も上がる。

 

 その時になって実家からちょっかいをかけられる危険がないとも限らないしな。


 勇者の息子であっても身分は平民だ。

 貴族の権力を振りかざされた時に何の対策もなければ簡単にひねり潰されちまうからな。


 

 それから俺達は料理を注文した。


 俺はオムライスセット、苺はハンバーグセット、ルエラは骨付き肉セットでモーラは俺と同じオムライスセットを頼む。


「凄い。可愛い……」


 モーラはリメッタがケチャップで描いたデフォルメされたカエルの絵にほっこりとしている。


「リメッタさんは、その……ブースのグッズのポップも描いてくださったんですよね?」


 多少は緊張が解けてきたのか、今度はモーラからリメッタに話しかけた。

 

「はい、僭越(せんえつ)ながら。商会の方々に色々とアドバイスを貰いながら描きました。

 いかに商品を引き立てるか、いかに注意を向けさせるか。

 デザインの仕方について色々と勉強になりました」


 これまでもブースのポップを描いて貰っていたが、新たにぺリステラー商会とのコラボグッズを置くにあたってさらにポップを追加した。


 さらには商会から派遣された店員からアドバイスを貰い、グッズやポップの配置を変えて、見栄えのするディスプレイを作り上げた。 


 飾り付けられたブースはメリハリが出たというか、自然と目を引くような立派な売り場に仕上がったと思う。


 さすがは大店で働く商人だと俺達もその出来栄えにただただ感心させられた。



「商売って奥深いよねえ。あれが一流の仕事なんだね」


 苺がハンバーグをもぐもぐさせながら言う。


 苺は普段ステージから観客の反応を鋭敏に感じ取っているあいどるだ。


 ブースでの人の流れや視線の変化も感じているに違いない。


「それだけではありませんよ。店員の一本芯の通った振る舞いは見習うべきところが多々あります」


 そう言いながらルエラは店の中で接客をするメイド達に目を向ける。

 

 ブースとリリークレイドルでシフトを組んでいる関係で、ここにいるメイドたちはぺリステラー商会の店員と接する機会が多い。

 

 その影響か以前よりも動きが洗練されているように見える。 


 今までよりも安定感があり、その分周りが見えているからか、お客が満員の店内でも余裕をもって立ち回っている。


 ほんと頼もしくなってきたもんだ。



「これだけお膳立(ぜんだ)てしてもらったんだ。俺達もその期待に応えて予選を勝ち上がらねえとな」

「うん! 苺頑張るよ!」

「はい、次も勝ちましょう!」


 俺達は互いを見合わせながらグラスを手に乾杯する。


「わ、私も……」


 モーラもそこに入ろうとして、しかしグラスを持ったまま声が尻すぼみになった。


「頑張ろうね!」


 そこに苺とルエラがちょんとグラスを当てて音を立てる。


 うーん、さすがにあんなことのあった直後だと遠慮(えんりょ)しちまうか。


 なんとか自信を持ってもらって早くみらくるベリーズの一員になってもらわねえとな。



「お兄ちゃん。はい、あーん」

「んっ? あーん……サンキュな」


 苺が追加注文したバジルとマンドラコラのスパゲティを巻きつけたフォークを差し出してくる。

 それを俺は口を開けて頬張った。


 酸味と辛みの混じったパンチの利いた味が口に広がる。


「修果、私のも食べてください。あーん」

「またお前は便乗して……あーん」


 ルエラの差し出すチキンの刺さったフォークにかじりつく。

 肉汁の旨味が口いっぱいに広がった。


「あ、あ、ああ――」

「いやモーラ。別に真似する必要はねえからな」

「で、でも……」


 モーラが手に持ったフォークをぷるぷるとさせながらこちらに向けている。

 

 刺していたサラダが落ちてフォークの先端が俺を捉えていた。


 なまじ震えで切っ先の動きが読みづらいせいで逆に怖い。

 思わぬ事故が起こりそうだ。


 すると追加注文を並べたマスターが微笑(ほほえ)ましそうに笑う。


「うふふ。そういうことは相手にそうしてあげたいって思ったら自然とできるものよ。

 心配しなくてもそのうち体が勝手に動くようになるわ」

「いや、別に俺はそんなこと頼んでねえよ?」


 マスターがモーラに向かってウィンクをする。


 やめろ、筋骨隆々メイド服を着たおっさんがウィンクなんてするな!


「仲良く……」


 モーラがちらっと俺を見て、それから手にした自分のフォークを見つめた。


「それにしても意外です。モーラさんも結構量を食べるんですね」


 リメッタが積み上げられた空の皿を見て目を丸くする。


「うん、体作りは大事だから。それに最近はダンスの練習で消費カロリーも増えたし、筋力もついてきたし、むしろ量を食べないとレッスンについていけなくて……」


 モーラが少し気恥しそうに頬を赤らめながら微笑む。


 正直俺も驚いている。

 ルエラ程ではないが、モーラも苺並みによく食べる。


「私なんて食べたらすぐ太るのに……」


 しかし苺とルエラはケロッとした顔で言ってのける。


「動いてたら太らなくない?」

「気合を入れれば大丈夫ですよ」


 困り顔のリメッタの前で苺とルエラはスパゲティと肉を口いっぱいに頬張っている。


「お二人と一緒にしないでくださいね。というか、ルエラさんも何言ってるんですか?

 気合でなんとかなるなら苦労なんてしませんよ」


 リメッタはにっこりと笑っているのに怒気がすごい。

 体型維持に苦労しているみたいだな。

 

 そう思いつつ俺は美味しそうに食事をする苺とルエラを見る。


 そういやこいつら最近はモワノーのお蔭で美容には気を配るようになってきたが、ダイエットはしてねえんだよな。


 まあ実際全く太る様子はないし、ダンスや朝の攻防でエネルギーは使っているから心配は要らないんだろうが。



 そうして体型について話をしていると、シェイカーを振りながらマスターが話題を振って来た。

 

「そういえば今度の二回戦の相手が決まったのよね?」

「ああ、ユニット名は『キャラメルリボン』、エスクラブプリュイの姉妹ユニットだな」




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