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異世界”あいどる”オークション  作者: 小説を耳で食べる人
第二章 王都予選・モーラ編
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閑話 元モデルの商会主

 私、モワノー・ペリステラーはこのイルパラディス王国でも五本の指に入る程の商会の娘として産まれた。


 物心ついた頃から何不自由ないどころか、お金にモノを言わせた貴族のような贅沢な暮らしをしていたわ。


 綺麗なドレスに高価な装飾品を身に着け、貴族が雇うような教師にマナーを教わった私は(はた)から見れば貴族令嬢そのものだったでしょうね。

 

 国内屈指の大店(おおだな)である父やその補佐をする母は毎日忙しく、一緒に過ごす時間は少なかったけれど、それでもまるでお姫様のように扱われた私は両親から大切にされていると思っていたわ。



 そんな暮らしをしていた私は綺麗なモノが好きだった。


 美しいものに囲まれていると、まるで物語の中のお姫様になったようで、いつまでも想像の翼を広げる事が出来た。


 その中でも特に私が興味を持ったものは化粧だったわね。


 ドレスや宝石は高価で手に入れられる人も限られるけれど、化粧は比較的多くの人が手に入れる事が出来ましたわ。


 綺麗になった女の人は皆心からの笑顔を浮かべる。

 

 美しくなれば幸せを呼び寄せることができる。

 

 家のメイドや時には母にも化粧を施して、私の周りには笑顔が溢れておりました。



 だったらもっと美を広めたい。

 自分も商会で働いて、いずれは世界中の人を綺麗にして幸せにしたい。

 

 いつしかそんな夢を抱くようになりました。



 幸い私は長身でスタイルも良かったわ。

 自分で言うのもなんだけれどね。


 だから自らがモデルとなって美しくなることの素晴らしさを伝えようとしたの。

 

 ファッションショーにも参加したし、自ら服飾や化粧品の開発も行ったわ。


 私の作り出した新たな商品で変身した女性達を見るのは本人だけでなく私も幸せにしてくれた。

 

 この道に進んでよかったと心の底から思った瞬間でしたわね。


 

 けれどその夢は唐突に終わりを迎えようとしていました。

 

 縁談が持ち上がりましたの。


 私を貴族の娘のように育て上げた両親――それは貴族に嫁がせるのが目的だったと判明したのですわ。


 両親は貴族と縁を結び家を大きくするためだけに私を育てていた。


 決して私を可愛がるためではなく、私を政略結婚の道具としか見ていなかった。


 そう理解した時、本当に辛かったですわ。


 それでも私は商会で働きたいと願ったわ。


 これまでの実績だってある。

 きっと政略結婚以上に結果を出して商会のために働ける。

 

 けれども商会には兄たちがいます。


 そして結果を出している私に多かれ少なかれ嫉妬心を抱いていました。


 無理に入り込んでも不要な確執を生む。

 そう判断した父に却下され、私は結婚を迫られました。


 

 そして大喧嘩の末、ほとんど身一つで飛び出しましたわ。


 夢を諦めるなんて考えられない。


 なんで自分の夢を応援してくれない家族のために結婚なんてしなくてはならないのかしら?


 私は自分の力で夢を叶える決意をしたのですわ。



 そんな私に手を差し伸べてくれる人は多かったの。

 

 商品開発の過程で知り合った多くの職人たち。

 私の商品で綺麗になったお客様の女性達。

 

 皆が味方になってくれたことで、私は小さくとも自分の商会を立ち上げることが出来ました。

 


 世界中の女性を美しくしたい――。


 最初の気持ちを忘れずに、私は商会を大きくするために働き続けています。


 愛する夫とも巡り合い、跡継ぎの子にも恵まれましたわ。


 けれど私はまだ満足はいたしません。


 もっと美を広めたい。

 もっと多くの女性を幸せにしたい。




 そんな中で私は「あいどる」と出会いました。

 

 自らを着飾り、持てる限りのパフォーマンスで観客達を楽しませる少女たち。


 外見だけじゃない。

 その内面を精一杯に輝かせる姿は私に衝撃を与えました。


 女性にはこんなにも力強い輝きが秘められている。

 

 「あいどる」はこんなにも人を惹きつける。

 

 求めるモノの先に、さらに道が広がっているのだと知り、私は喜びに打ち震えました。



 私も「あいどる」を「ぷろでゅーす」したい。



 こうして私は専属モデルでユニットを組み、あいどる活動をぷろでゅーすいたしました。





 第一回異世界あいどるオークション。

 

 私のユニット、パヒュームメロンは見事に予選へと駒を進めました。

 

 元々モデルとしてプロ意識の高い彼女達は見事に私の期待に応えてくださりましたわ。


 私は彼女達を心の底から誇りに思います。

 

 

 そんな中で迎えた予選一回戦。

 そこでみらくるベリーズと対戦することになりました。

 

 間近でみらくるベリーズのパフォーマンスは圧巻でしたわね。

 

 たった二人とは思えないダイナミックで輝きに満ちたパフォーマンス。

 

 それは予備予選の映像よりもさらに洗練されたものがありました。

 

 僅かな期間でこれ程の成長を見せるなんて……。


 試合前はもしかしたら勝てるかもしれないと思っていただけに、まだまだ私のあいどるに対する認識の甘さを思い知らされましたわ。

 

 同時に確信しました。

 彼女達みらくるベリーズは可能性の塊であると。


 そしてそんな彼女達を私の力でもっと磨き上げてみたい、と。


  

 私は迷わず「ぷろでゅーさー」である彼――シュカ・ミツヤの下に向かいました。

 

 彼にはこの対決で私の追い求めているものを理解してもらえたはず。

 

 彼は真っすぐに私を見返し、握手をしてくださいました。

 

 彼は少年のようなあどけなさを残しつつも、その手は歴戦の戦士をも思わせる経験が濃縮されているのを感じました。

 

 それはベテランの大店(おおだな)の店主でも滅多にいない程に苦労を積み重ねた手でありました。


 さすがは勇者の息子というべきなのでしょうか?

 

 いいえ、彼自身の努力によるものですわね。

 肩書という穿(うが)った見方をしては失礼ですわ。

 



 今、私は契約の間で更なる可能性を目にすることになりました。


 我が娘モーラ。

 彼女は間違いなくモデルとしての才能を秘めております。

 

 極度の人見知りでしたが、訓練によるマインドセットで意識が切り替えられるようになると、その実力をいかんなく発揮してくれました。


 私の現役時代をも上回る魅惑の女として。

 次世代のトップモデルとして活躍を約束された才能を持っておりました。


 同時にこの娘をこれ以上どう磨けばいいのか、私は考えあぐねていたのです。


 

 しかしこの子の才能をシュカは真正面から受け止めました。


 私にはわかります。

 圧倒されながらもそれを楽しみ、如何(いか)にその才能を開花させていこうか。


 彼女を一人の「あいどる」としてどう育てていこうか。

 

 そこには欠片の遠慮も恐れもありませんでした。

 

 彼ならばきっとモーラを先のステージへと押し上げてくれる。

 

 そんな確信を抱けた瞬間でしたわ。



 そして願わくは、私の全てを受け入れてくれた夫のように、モーラにも……。

 

 いえ、これは私の勝手な妄想ですわね。

 

 とはいえそうなればなったで嬉しく思いますわ。


 今後が楽しみですわね。





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