魔女
「おはよう.....と言うのもおかしいかな。?」
奇麗な白髪に穏やかな表情をした女性が問いかけてくる。
たしかに「おはよう」などといったあいさつはおかしいだろう。
こんなところには時間なんて概念があるように思えないし、常に明るく奇麗な花が辺り一面にびっしり咲いている。
自分が立つところには椅子が2つとテーブルがありその上にはティーポットやカップが置かれている。
椅子に腰を掛けている女性は紅茶を嗜みながらこの時間、この瞬間を楽しんでいるようだった。
空いているに椅子に腰を掛けて用意されている紅茶に口を付けた。
「.....何で呼んだんだ?」
微笑みながらこちらの返答を待つ相手に俺は少し不機嫌そうに言った。
俺は明日に備えてベットに入り『眠った』
だから仮にこれが夢だった不機嫌ではなかっただろう。
しかし、夢というにはあまりにも自我があり、五感もはっきりしていた。
さらには、飲んだ紅茶が喉を通り胃に流れていく感覚は現実のそれだった。
そもそもここに来るのは初めてではないし何回も来ていた、というよりは連れてこられた。
もちろん、目の前の女性の手によって
「明日だろう?入学式は」
いつもなら連れてこられてもなんとも思わないが入学式ともなれば緊張するし遅刻しないように早めに寝たのだ、ここにいると精神的に寝た気にならない。だから少し気が立ってしまう。
しかし、こちらの機嫌などお構いなしと言わんばかりに続ける。
「新しい環境に慣れずにホームシックになったり、ストレスで体調を崩してしまうかもしれない。
心配になるのが親心と言うものだろう。」
何が可笑しいのか微笑浮かべながら言う。そしてまた紅茶に口を付けた。
「親ね...。」
俺はあんたから生まれた覚えはない、なんて言ってとしても義理の親で構わないなどと言って軽く受け流すだろう、なら余計なやり取りをしないように内に秘めることにした。
「シェイネ、本当の用件は?」
さっさと寝かして貰えるように本題を引き出そうと試みた。
不意に名前を呼ばれたからか少し目を大きくしたかと思うと、こちらの心意を察したのか
また笑みを作って口を開いた。
「いやね、君がどうするのか気になってね。」
今度は少し意地悪な表情を浮かべて言う。
「君の今している指輪も君の能力も特殊なものだ、そう易々と人前にはさらせないだろう?」
「それにどうあれ私のせいだからね君の制限は」
そう言った彼女の視線は何処か遠くを見ているようで哀愁漂っていた....
確かに俺は魔道具無しでは基礎身体強化系の魔法しか使えない。入試の試験は申請すれば魔道具の使用はできるが魔法士というにはなかなかに恥だ。
だが、それでも魔法士になると決めたのだから騙し騙しでもやっていくしかないのだろう。
だから俺は
「例えろくに魔法が使えなくたって大丈夫、今までもそうしてきたから」
俺は彼女の不安を取り除くように自信を持って言った。
今更後に引けることではないしうまくやれる
そんな気がしていた。
「そうかい...そう言うのなら問題ないだろう。」
俺の自信の満ちた顔に安心したのかまた紅茶に口を付けた。
「最後に一ついいかい?」
話は終わったのだと思っていたから何を言われるのか見当がつかない。
返事の代わりに頭に?を浮かべて見せた。
「どう呼んでくれても構わないと言ったけど何故シェイネにしたのかい?同じ魔女だからかい?」
真面目な話でもないのだろう、どちらからと言うと唐突に起きた疑問なのだろう。
深い意味はないしかし、理由を知りたい。そんな感じだろう。
「魔女の方が良かったか?」
少し不真面目に答えるがそれは彼女にとって質問の答えになってないらしく。
何も言わず表情も変えずただこちらを見つめてくる。
あまりにも真剣な顔でこちら見つめてくるのだ。
先ほどまで子供が悪さをする時のような顔してた者と同一人物とは思えない。
耐え兼ねて顏を背けてため息一つ吐き口を開いた。
「シェイネが立ったところを見たことがないからな。俺に稽古つける時も座ってたしつまんない理由だろ。」
暫し沈黙が流れる、彼女の方を見る勇気が無い。
しかし、俺の恥メーターが振り切る前にシェイネの楽し気な笑い声が耳に入ってきた。
「いいね!気に入ったよ。」
満面の笑みを浮かべる彼女を見てホッとしたのか眠気が襲った。
そうか、もう寝かしてくれるみたいだ。
感覚に任せて椅子の背もたれに体を預ける。
「また来てくれると嬉しいよ。」
馬鹿言え、いつも勝手に呼ぶくせに.....
「おやすみ、真央」
こうして俺は眠りについた。
拙い文章ですがどうぞご容赦ください。
誤字脱字などもあるかもです。