表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

TRUE END

 魔王の居城へ向かう旅の途中、とある街で老齢のドワーフに声をかけられた。


「貴方が勇者か。まだ子供ではないか。しかし、その剣は本物の様だ。」


 ドワーフは頭を垂れた。


「ワシは、その聖剣を作った鍛冶師の子孫だ。祖先たちは聖剣を強化するため、代々技術を磨いてきた。今こそ盟約を果たす時。さぁ、参ろうぞ勇者よ。」


 若者はドワーフに連れられ、山の奥へと入っていった。

 そこは、白銀の鱗を持つ竜の住処だった。


「聖竜よ。古の誓いを果たしに来た。」

「懐かしい匂いだ。母の匂い。その剣は、母の鱗から作られておるのだ。良かろう。母に代わり、私が約束を果たす。」


 ドワーフは背負っていた大きな荷物を下ろし、鍛冶の準備を始めた。

 聖竜の炎を用いて聖剣を打ち直すという。


 ほどなくして、山の中に金属音が響き始めた。

 それから数日間かけ、聖剣が強化された。


「さぁ、コイツを持っていくがいい、勇者よ。」


 若者が受け取った聖剣からは、今までと比べ物にならない程の力が溢れている。


「我ら聖竜族は、魔界の瘴気の中ではまともに力を発揮できぬ。だが、其方の助けくらいにはなろう。かつて母がそうしたように。」


 聖竜は若者を背に乗せると、大空へ飛び立った。

 森を越え、山を越え、聖竜の翼は瞬く間に若者を魔界の入口へと誘った。


「ここから先は瘴気が濃く、飛んでいく事は出来ぬ。」


 聖竜は人の形へ姿を変え、若者の隣に肩を並べた。


「この姿であれば瘴気の負担は少ない。竜の力は使えぬが、露払いくらいは出来よう。」


 若者は聖竜と共に、魔界の領域へ足を踏み入れた。

 そしてついに魔王城へと辿り着く。

 魔王城で二人を迎え撃つ魔物は、聖剣の力と聖竜の魔法で為す術なく倒されていく。


「クックック・・・・・・。 わざわざ殺されに来たか、勇者よ。聖竜も一緒か。」

「汝ら魔族が滅びる時が来たのだ。覚悟するがいい、魔王。」


 魔王と対峙した若者は、聖剣を高く掲げた。

 ――光が迸る。

 聖剣から放たれた光は、魔王を守るように覆っていた魔の力をかき消した。


「小賢しい。いい気になるなよ、人間風情が。」


 魔王との闘いの火蓋が切って落とされた。

 若者が聖剣を振るい、聖竜と魔王の魔法がぶつかり合う。

 その闘いは三日三晩続いた。


 激しい闘いの末、聖剣の輝く刀身が魔王の身体を貫く。


「グゥッ・・・・・・やるな。だが、この程度では我を滅する事は出来ぬぞ!」


 しかし、それでも魔王の力は衰えず、聖剣の刀身を握り、若者の動きを止めて刃を伸ばした。


「今だ! 剣の封印を解くのだ!」


 聖竜の声に反応し、若者は首から下げた勇者の証を掴み、聖剣に重ねた。

 その瞬間、聖剣の刀身から炎が溢れ出す。


「まさか、これは・・・・・・ッ!」

「そう、汝ら魔族の弱点である聖なる炎だ。元より封じるつもりなど無い、今この場で滅する!」


 炎は魔王の身体を内から灼き焦がし、広がっていく。


「グオォォォォッ・・・・・・! 我の、身体がァ・・・・・・っ!」


 やがて炎は魔王を飲み込み、存在を消失させた。

 力を使い果たし、崩れ落ちそうになった若者の体を聖竜の肩が支える。


「主を失い、魔王城が・・・・・・いや、魔界全体が崩れ始めた。急ぐぞ、勇者よ。」


 聖竜は若者を担ぎ上げ、人の姿から竜の姿へと戻った。


「グゥ・・・・・・ッ、やはり瘴気が・・・・・・。だが、片道程度であれば・・・・・・。振り落とされるでないぞ!」


 聖竜が羽ばたき、魔王城を突き破って暗雲に覆われた漆黒の空へ舞い上がる。

 眼下に広がる大地は大きく震え、砕けていた。


 竜の翼が闇空を切り裂くように飛ぶ。

 若者は歯を食いしばり、振り落とされぬよう必死に竜の背にしがみついていた。


「見えたぞ! 出口だ!」


 閉じつつある出口の向こうには、懐かしい色の空が見える。

 更に速度を上げる聖竜。


 ふと、若者の髪を撫で付ける風が弱くなった。

 二人を労うように陽光と青空が包み込む。

 後方に目をやると、魔界の口はぴったりと閉じていた。


「・・・・・・終わったな。」


 若者は首を振って、聖竜の呟きに答える。


「”旅はこれから”か・・・・・・。成程、それも悪く無い。」


 平和になった世界を見下ろし、二人は飛び続けた。

 いつまでも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ