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赤き狼は異世界を奔る  作者: 和そば
1/33

再走

狼だった少女は人として、世界をみる。

何を見て、どう成長していくのか。

王道の異世界転生です。お時間がよろしければお付き合い下さい。





設定の変更や修正等の漏れが多かった為、一度全修正をしました。 

 かの世界。極炎の底という強者の溢れる地にて生まれ落ちた一匹の狼は、まず己の生存を掛けて本能に赴くまま戦い抜き、竜種、異形種、古き王種を初めとする数多を食らい、強大な力を身につけた。


 極炎の底を抜け、地上に出た狼は、更なる強者を求め闊歩した。

 極炎の中で狼に宿った闘争心は、戦いに対する飢餓となり、世界の強者との闘いでしか満たされることはない。強者と狼の戦いは当然熾烈を極め、豊かな森林を灰に、広大な山脈を削り、発展した都市を廃墟へと変えていく。


 狼の訪れた場所は、常に甚大な被害を被り、世界の破壊は看過できないほどに広がった。

 その世界に生きる生物にとって致命的な破壊が広がる中、世界の崩壊を止めるために一柱の女神が介入し、狼を世界から排除することを決定した。

 

 生命として格上存在。「神性」を持つ女神は当初あっさりと狼を封印出来ると思っていたが、狼は女神の予想より遥かに強大な力を持ち、その力は女神にも迫るもの。


 千日にも及ぶ激闘の末、女神は死力を尽くして狼を別世界に封印し、自らも狼の監視と、消費しきった 「神性」の回復の為に異なる世界へと赴いた。


 物語は、ここから始まる。






「ウがア嗚呼アアアアアア」


 女神の白撃に、視界が閃光に塗りつぶされ、幾度となく勘だけで回避してきた非実態、多方向同時収束攻撃が再び自分に迫るのを感じる。暗順応など待つまもなく安全圏へと飛びのこうとするが、どういう訳か体が引き寄せられる幾多の黒い球体が、正確な動きを阻害する。


 黒い球体を引き裂きながら、不可視の攻撃を避け続け反撃を試みるが、何者だろうと引き裂いてきた爪も、目の前の女には寸前で弾かれる。


 だが、落胆はしない。ただの勘でしかないが、もうそろそろあの意味不明な結界も限界が近づいてるはずだ。


 まあ、こっちの爪もそこそこボロボロなんだが。


「重力球を物理破壊!ありえないでしょう……いえ、これは魔法の完全無効化!?、一体何なんですか、あなたは!」


 焦った様子で女は叫ぶが、叫びたいのはこっちだっての。無尽蔵に溢れる、異形種よりも濃密な魔力。竜種の鱗を凌ぐ防御結界、古き王種を超える特異能力。全部持ってるなんて反則にもほどがある。


 けど、だからこそ、おもしれぇ。


 自分の中から湧き上がる灼熱が、全身を包む。これは歓喜の熱だ。今までないほど最高に、熱い。

 熱に身を任せ、弩雷の如く爪を振り下ろす。さっきまでと少し違う、感触が振動として伝わる。滑らかで硬質な不可視の結界は、爪を引き抜くとガラスの様に散る。


 まだだ!


「……!?、絶対不干渉が、そんな馬鹿な………。仕方ありません、これは使いたくありませんでしたが!」


 そのまま喉元を喰い千切ろうを牙を掛けるも、女の背後から振り下ろされる何かを感じて飛びのく。


 一際嫌な予感に、さらに距離を取るが、離れたはずなのに目の前に大剣があった。


 今のは速さじゃない、何か、やばい。


「神剣。対象を貫くという結果を物質化したものです、もう…大人しく封印されて下さい」


 やなこった。でもまずいな、この大剣に貫かれるのはやばそうだ、が…。


「…!?」


 ぐしゅ、と音を立てて女神に飛びかかる狼の心臓に大剣が刺さる。

 ただし、その狼の首はない。自らの爪で首だけを切断し、牙を向けて飛翔、首元から即座に骨格が伸び、再生が始まる。


 とった!


 結界はすでに無く、女神の首筋に牙を立てるが、そこで違和感に気づく。

 女神に苦しそうな表情はなく、そこには疲労と、安堵があった。


「神剣をそのような方法で回避しますか、ですが、こちらもやっとあなたに触れれました。神性行使、転移封印」


「ウがっ!?」


 その言葉を最後に、急速に意識が遠のく。


 はっ、負けちまったかよ。くっそ。


 強ええなぁ。


 まぁ、いいか。最高だった。

 せいぜい、この体、残さず食らってくれよ。



 封印の間際、狼は満足そうな笑みで、その牙を首筋から離した。


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