決之意(2)
「あれ・・・??」
朝、少女は起きた。体に変な違和感・・・。
「うわ!なんなの、これ!」
足に生えた綺麗な小さな羽。少女はジャンプすると、それは羽ばたき、少女は空中にとどまった。
「は・・・?」
そうだ。紛れもない、魔法だ。
「でも、体の部分的に魔法はしみわたるって聞いたけど・・・」
そうだ。でも、少女の場合は、「全身」だ。
「はっ!?」
少女は手を伸ばして、力を入れてみた。紫の強い光。
「わー!ちょっとまって」
やっとその光は止まった。次は全身に力を入れてみる。するとバリアが張る。
「やっぱり、全身?」
これは少し有利になってきたと、少女は思った。
「やっぱり・・・」
あの人を探し、セルステアと合流し、坂ノ橋神奈を殺す。
でも、あのひととセルステアが同時に会っていて、坂ノ橋神奈の近くであることがこの計画の最大条件だ。
「でも、あの人はいつも坂ノ橋神奈の近くにいるから・・・」
思い返したら、またイラついてきた。少女は唇をかみしめ、考えを続ける。
「うん!行こう!」
ビシィ・・・。
その時だった。少女の体に激痛。
「うあぁぁぁぁ・・・」
叫ぶたびに、激痛。激痛。激痛。
少女の白いワンピースは破れ、黒いシャツに黒のスカートに黒タイツと黒のスニーカーの姿に。
足元にあった羽根はない。
背中に大きな黒い羽根。
髪型は急速に髪が伸び、黒いリボンのついたカチューシャ・・・。
「ぁぁぁぁぁぁぁ・・・ああああぁぁぁぁああ!・・・っつ・・あぁ・・」
またまた激痛。
少女の中にある「魔法」の「質」が変わっていく。
憎しみに満ち、怒りに覆われた、真っ黒な霧体が少女の体を這いずり回る。
それは―――――――悪魔の力・・・
それに満たされ、次第に少女の心も汚れていった。
「いやよ・・・!悪魔なんて・・・!」
かすかに残る自分の意思で、少女は対抗する。
『ノンノンノン♪あなたは、天使の所有権なんてなぁ~いの!』
悪魔の魔法の所有権を持つ人のパートナー、「小悪魔 サラン」であった。
『あなたにはぁ~、悪魔の心しかなかぁったのぉ~♪憎んでたんじゃぁ~ん』
「ううぅ・・・私は・・・」
その時点で、少女の心はもう自分のものではなくなった。
自分の意志でありながらも、自分の心で動けない。
なんと説明しがたい状況に、自分ははまってしまったのだと、心にしか残らない意志で、少女は思った。とはいえ、サランを殺してしまえばこの世界は平和でなくなる。こんなに神がいるのなら、坂ノ橋神奈はいらない。あの人もいらない。セルステアもいらない。すべて私が捨ててしまえばいい。
この言葉は決してサランの意志ではなかった。少女だった。
『あら、あんたもなのねぇ?気に入ったわぁ♪』
とはいえ、神に好かれたのは有利なので、これからも様子を見ていこうと思う。
と、少女は思うしかなかったのだ・・・。




