プレゼントは、気持ちが込められてれば良いんです
クリスマスイブは、クリスマスの前夜ってだけであって、これといった意味を日本の行事の中では見い出せない。
ついでに言うと、クリスマスも家族で過ごすものなのだと思っているので、リア充及びにラブ充は排除すべきとも考えている。
つまり何が言いたいって、ボクにはそんなの関係ない行事だってこと。
そもそも大抵の行事は、ボクに関係の無いものなのだけれど。
ハロウィンとかは、お菓子を貰ったりもするので用意したりするのが、礼儀だと思っている。
バレンタインやホワイトデーも同じなので、まぁ、そこそこ参加はしているということだ。
でも、やっぱり詳しくは知らないし、興味もなくて、礼儀としてというのが多い。
「これね、あげるね」
作業場として、中学時代に貰った家賃がそれなりにするマンションの一室で、ボクは幼馴染みに箱を差し出す。
これも礼儀なのかと問われれば、そうだ、と頷くことが出来ると思う。
その箱は、可愛らしく薄い青が強めに入った紫色のラッピングが施されていて、手の平サイズくらいの小さな箱だ。
大体一週間くらい前から用意していて、作業場の机の引き出しの中で眠っていたもの。
「何これ」
「プレゼントですが」
作業場のリビングに、幼馴染みである文ちゃんと並んで、二人では食べ切れない量のクリスマスっぽい出来合い料理に挑んでいた。
ケンタなお店で売ってるチキンに手を伸ばして、そのまま齧り付くボク。
対して、文ちゃんの方は食事の手を止めて、箱を眺めている。
眺めていても別に爆発とかしないよ。
自動で開いたりしないよ。
「何の気まぐれ?」
「……そんな化物でも見るような目で見ないで欲しいんだけど」
気まぐれは気まぐれだし、というボクの言葉に、それもそうだ、と頷く文ちゃん。
ズレた眼鏡を押し上げる仕草が、酷く様になっていて、何となく羨ましくなった。
チキンを咀嚼しながら、文ちゃんを見ていると、居心地が悪そうにしながらも、ラッピングのリボンに手を掛ける。
しゅるり、と解かれるリボンを見ながら、こういうプレゼントの開け方って、性格が出るよなぁ、なんて下らないことを考えた。
箱の中に収められた箱。
外装の箱は紙で出来ているものだったけれど、その更に中身の箱は、アクセサリーを買った時に貰うようなそういう箱だ。
その小さな箱の中には、ピアスがワンセット。
「……だから、異形のものを見るような目を辞めてってば」
箱の中身を見た文ちゃんが、光の速さでボクの方を振り向くから、ボクは眉を寄せた。
普段から、ちょっと意外なことをするとすぐこれだ。
例えば、自分でご飯支度したりと、ちょっとアクティブにスポーツしてみようとしたりだとか、そういう時には、変なものでも見るようにボクを見るんだから。
「これ、手作りでしょう」
「……あれ、良く分かったね」
熱でもあるんじゃないの、的なことを言われるのでは、と構えていたけれど、予想外にプレゼントについての話になった。
実際問題、渡したプレゼントは手作りなので、肯定するしかない。
元より手先が器用なことと、スイッチが入った時の集中力くらいしか取り柄がないのだ。
それを活かすには、作ることしかなくて、まぁ、だからピアスの一つ二つくらい楽勝だ。
「アンタって、不器用よね」
どこが、器用でしょ?!と抗議の声を上げれば、文ちゃんは、哀れみの込められた目でボクを一瞥してから、ピアスを手に取る。
一応、言いたいことは分かっているのだ。
別に手先の器用さの話をしているわけじゃなくて、こう、何と言うか、コミュニケーション的な話をしているのだと思う。
昨日も今日も、クリスマスイブとクリスマスネタで小説をひたすら打ち込んだ。
いつかパソコンのキーボードが壊れるんじゃないか、っていう勢いで叩いていた。
それくらいしか出来ませんからねぇ。
イベント参加なんてしませんけど、非リア充ですけど、非ラブ充ですけど、ネタにするのは大好きですから。
ケッ、と心の中で全国のリア充ラブ充に唾を吐き捨てながら、ケンタなチキンの骨を皿に置く。
お世話になってますから、なんて呟けば、文ちゃんが子供の成長でも見たように、目を見開いてからボクの頭を撫で回した。
どうでもいいけど、拭いたよね?
手、拭いたよね?
「ところで、ピアス片方しか開けてなかったし。もう塞がってるんだけど」
「え、マジっすか」