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恋する妖怪。  作者: 猫娘
4/8

かんぎくん見参。

「まぁ、座ってよ」

 

 放課後アキラを自宅に拉致したカエデは、部屋のベットに座らせようとする。

 座ろうとしないとアキラに、ポンポンとベットカバーを叩く。


「カエデって……。まぁ、いいよ」

 

 アキラは諦めたように腰かける。


「あのサー、普段タケシくんとどんな話してるの?」


「は?……別に、漫画の話とかフツーの話よ」


「女の子の話は?」

 

「まぁ、たまにはするけど」 


「私の話とかは?」


「全くしませんね」


 そこだけは、キッパリ言い切られて、カエデはガックリくる。


「てか、カエデは意識し過ぎて不気味。中学組は僕たち三人しかいないのに、フツーに話せばいいやろ。クネクネしたりモジモジしたり、らしくないから」


 アキラよ、正論過ぎて痛いです。  


「まぁ、タックル仕掛けるのはカエデらしいけどね」 


 ケッケッケと、八重歯剥き出しにして笑う。

 くそ~。

 でも、怒らない。怒らない。

 アキラは協力者。

 貴重な協力者。

 

「だからさ、仲良くなる為に親睦会を開こうと思うの」


「親睦会?どこで?」

 

「うちの家だよ。料理も私が作るから」


 うふ。と、肩をすくめてぶりっこをする。

 アキラは訝しそうだ。

 よーし。飴ちゃん投入。


「ほら、兄ちゃんたちにも参加させるからさぁ。ワイワイ盛り上がって、トシヤ兄ちゃんがご機嫌の時にジャンバーの話をしたらどうかな?」


 アキラはじっと考えている。

 それから、納得したように頷いた。


「わかった。ジャンバーも欲しいけど、タケシくんが、島に馴染むのにもいいかもしれん。まだ、明らかに浮いちょるやろ」


 そりゃーあのルックスの都会派ボーイやからね。


 アキラと約束を取り付け、週末は歓迎会を開く事が決まった。

 準備をしなきゃ。

 家の大掃除も。

 うちの家、意味なく広いからね。

 メニューは何にしようかなぁ。

 カエデは浮き足だっていた。

 果樹園経営に忙しい両親の代わりに、小学校の頃から、料理や掃除を手伝っている。 

 今ではベテラン選手だ。

 ここは腕のみせどころ。


「ハナコちゃんも、食べたいものリクエストしてね」

 

 ハナコちゃんは、ハートのクッションを抱えて、ちんまりと座っていた。


「海に行きたいのですが」


「海?泳ぐには寒くなってきたよ」


「いえ。助っ人を頼もうと思いまして」 


 ハナコちゃんは防波堤の方にカエデを連れて行く。

 内海は静かで、穏やかな波が白い姿をみせていた。

 


「かんぎくーん」


 ハナコが大声で海に叫ぶ。

 波がちゃぽんと小さく泡立ち、ギザギザっ歯のかんぎ小僧くんが現れる。


「呼んだ~」


 格子柄の着物を着たかんぎ小僧くんが、ボーッと立っている。  

 魚が絡まない限り、基本、かんぎ小僧くんはボーッとだ。

 カエデは内心驚きながらも、かんぎ小僧の出現にワクワクが隠せない。

 

「一つ目は、愛情たっぷり料理でおもてなし作戦です。これは普通にカエデちゃんは、クリア出来ると思います。好き嫌いのリサーチはしておいた方がいいですね」


 ハナコちゃんの作戦に、ウンウンと頷く。


「二つ目は、海に溺れた私を助けて大作戦です」


 え?溺れちゃうの?

 だれが?


「防波堤までみんなで散歩に来て、カエデちゃんは足を滑らせて海に落ちてしまいます」


 え?やっぱり。

 落ちるのはわたし?


「それを、タケシくんが助けます」


 サッとカエデが手を挙げる。


「タケシくんが、助けてくれなかったらどうなるの?助けに来てくれても、一緒に溺れたら……」


「泳ぎの得意なカエデちゃんが、溺れることはないでしょう。でも、もしもの為に、かんぎくんの登場です。待機しててピンチの時は助けてもらいます」


 う~ん。

 ハナコちゃんお奨めなら大丈夫だとは思うんだけど。


「えー、ワシそんな面倒いことやるの?」


 かんぎ小僧くんは、気が乗らないようだ。


「後で、魚あげるよ。カエデちゃんの白身魚の甘酢あんかけは絶品だよ」


 ハナコちゃんの言葉に、かんぎ小僧くんは喉を鳴らす。


「それはぜひ、協力せなあかんな」


「カエデちゃんのか弱いところを見せて、今までのイメージを払拭する作戦です」


 成る程!

 そうだったのか。

 さすがは、座敷わらしのハナコちゃんだ。

 カエデは、魚好きのかんぎ小僧くんと熱い握手を交わした。


 

 こうして作戦は決まり、着々と準備が進んでいく。

 かんぎ小僧くんは、それからは度々カエデの前にも姿をあらわすようになった。

 防波堤で腰かけている所で手を振りあったり、夕食の魚料理を多目に作って差し入れたりと、友情も着々と深め合っていた。

 



 

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