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恋する妖怪。  作者: 猫娘
3/8

作戦を立てましょう。

 カエデは体育館の裏で、花壇を眺めながらお弁当を食べていた。

 はぁー。

 もう、何十回目かのため息をつく。


「ハナコちゃん、食べていいよ」

 

 まだ半分以上も残っているお弁当をハナコに差しだす。


「唐揚げも卵焼きも残ってるよ」 

 

「いいの……」


 しょんぼりと肩を落としたカエデは、またため息をつく。


「タックルするの止めたのに……」


「カエデちゃん。止めたのは偉いけど、まだ3日くらいだよね。その前はずーっと毎日タックルしてたんだよね」


「……」


 そうだ。 

 その通りだ。

 カエデはもう、取り返しが付かないことをしてしまったのだろうか。

 挽回できないのだろうか。


 う~。頭を抱えてうずくまる。


「大丈夫だよ。カエデちゃんの印象は今は最悪でも、これから上がっていけばそっちのがインパクトあるから」


「……ホントに?」


「本当だよ。印象を覆した時は今までにない好印象に変わるよ」


「好印象?」


 パララララ~と、バックミュージックが流れてきそうな勢いでカエデは笑顔になる。


「そうだよ。だから、頑張ろうね」


 ハナコちゃんに励まされ、カエデは大きく頷く。

 要するに、単純なのだ。

 この単純さを好ましく思っているハナコは、カエデに卵焼きを差し出す。


「ほら。食べて元気だそう」


 大きな口を開けて、カエデは卵焼きをパクついた。

 タケシくんも、甘い卵焼きが好きかなぁ。

 今度お弁当を……。

 いけない。いけない。

 カエデは、慌てて訂正する。

 お弁当は、作らない。

 やりすぎはいけない。


「お弁当は、良いと思いますよ。カエデちゃんはお料理得意だし。タケシくんの家は父子家庭ですよね。パン食の日も多いし。まずは、親しくなってからですよね。転校して10日以上経つのに、まともにお話ししてないよね」


 ハイ。その通りです。


「タケシくんは、まぁ他にいないからだと思いますが、アキラくんと仲がいいようなので、アキラくんに歓迎会の相談を持ちかけたらどうでしょうか?」


「歓迎会?」


「親交を深めるチャンスです」


「……」


 すくっと、カエデは立ち上がる。


「わたし、アキラのとこ行ってくる」


 猪突猛進のカエデはその足で、教室にいるアキラのところまで、突進して行った。

 ラッキーにも、教室にタケシくんは居なかった。


「アキラぁ~」

 

 カエデは猫なで声でアキラの前に立つ。


「キショ」

 

 カエデと同じぐらいの身長のアキラが、大袈裟に、体を反らす。

 ほら。アキラになら、言われてもどーってことないんだよね。


「アキラに相談があるんだよね」


「僕にはありません」


 こ、こいつめ~!

 いがぐり頭をゴリゴリしたいのをグッと抑えて、飴をチラつかせる。 


「確か、トシヤ兄ちゃんのジャンバー欲しいって言ってたよね~。その件なんだけど、今日ちょっと家に寄らない?」


「ジャンバー、譲ってもらえるのか?」


 アキラの目が輝きだす。

 有名なアメリカのバスケットボールチームのジャンバーは、アキラの憧れだ。

 カエデには、全くわからない。


「まぁそれはさぁ、わたし次第って言うか……とにかく来なよ!」


 無理から約束を取り付ける。

 丁度、タケシくんが入って来た。

 あ。カオリちゃんや、ユウコちゃんと話している。

 いいなぁ。

 あのくらいの年の方が意識しないで、いけるんだよね。


 ハナコちゃんが、ガンバ!のポーズをしてくれている。

 うん。頑張るよ。

 隣の席に戻ったタケシくんに、微笑んでみる。


 明らかに、視線を逸らされた。

 ……。

 ハナコちゃんの口元が、ガンバと動いている。

 うー!

 頑張るよー!

 





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