柒
今から二週間ほど前。
アルテミス王国の王都レトにある王城レト城は大混乱に陥っていた。
レト城内には侵入者を報せる魔法警報装置の緊急警報が鳴り響き、城詰めの兵ばかりでなく武官や文官、女官までもが城内を慌てふためき走り回っていた。
ある者は怒声を張り上げ、ある者は悲鳴に近い声を上げて。
レト城の外敵や侵入者に対する防御システムは、異邦人の技術による魔法装置により構築されていた。のだが、この三千年以上に渡り鉄壁を誇ってきたレト城のその防御システムが、ある因子を持った一人の賊に破られたのである。
その賊はアルテミス王家の者達の喉元に、凶刃を突き付けるまでに迫ったのだ。
「幸いにして、王や王妃達、私や私の兄弟達の居所に辿り着く前に最後の防御装置に引っ掛かってくれたお陰で大事には至りませんでしたが・・・・王が私を庇い軽傷ではありますが怪我を負ってしまったのです。」
と、メルティス王女は少し辛そうに目を伏せた。
「しかし、異邦人の技術で作られた城の防御システムを、何故その賊はそこまで掻い潜れたのでしょうか?」
と、ティアが疑問を口にする。
・・・・・。
メルティス王女は暫くの間言うのを躊躇っていたが、意を決して口を開いた。
「その賊の死体を調べたら異邦人の因子を持ちその力を扱えていたようなのです。」
それを聞いたティアはビクリと身を震わせ顔を青ざめさせる。
「我が城の防御装置は異邦人の技術で作られているとは言っても、その防御能力は基本的この世界の者達を対象としています。しかし、我ら王家の者達の居所の防御装置だけは異邦人も対象になっていました。そのお陰で我々は命拾いをしたのです。」
「異邦人の因子を持つ者とは、アルテミス王家以外に異邦人の血と力を受け継ぐ者達がいるということか?」
と、大介が聞くと、
「いえ・・・祖先に異邦人を持つのは我がアルテミス王家だけだということは千年前に確認されています。それ以外に異邦人の因子を持つ者に関しては・・・」
と、メルティス王女がティアに目を向け、
「・・・ティアさんの方が私よりも詳しいと思いますが?」
と言うと、未だ顔を青ざめさせているティアは、
「し、知らない!私は何も知らない!」
と、狼狽え怯えた声をだし、瞳を涙で潤ませてガクガクと震える自分の体を両腕で抱き締めるようにして、今にも頽れそうになっている。
「どうした?ティア。落ち着け。」
と言いながら、大介はティアの体を支えてやりベッドに座らせてやる。
「そうですか・・・・まぁ、無理に聞こうとは思いませんが。」
と言って、メルティス王女はティアから目を背ける。
「私は噂として聞いただけですが・・・」
と、メルティス王女は前置きをし、
「異邦人の因子を持つのは、我がアルテミス王家のように先祖に異邦人がいたか、若しくは・・・・」
と言って、メルティス王女はチラリとティアを一瞥してから、
「先祖に人為的に異邦人の因子を植え付けられた者がいる場合だけでしょう。」
と言い、
「千年前、この世界の国々が異邦人を滅ぼした時、幾つかの大国は再び異邦人がこの世界に現れた時の対策のためとして、まだ力が発現しておらず肉体的にこの世界の者達と変わらなかった異邦人の子供達を捕らえて人体実験を行ったといいます。そして、その人体実験の成果としてその異邦人の子供達の血肉から異邦人の因子を取り出し、その大国の王族や貴族達はその因子を自分達の血族の体に移植したとも言われています。ただ、それで異邦人の力を自由に扱えた者は誰もいなかったようですが。」
と、メルティス王女は嫌悪感を露にして語った。
「それが何故、今になって異邦人の力を扱える者が現れたんだ?」
と、大介が聞くと、
「恐らくですが、因子を移植しても異邦人の力は直ぐには発現せず、何世代か世代を重ねてその因子を受け継いでいくうちに、その血族の者達の体と異邦人の因子が馴染んでゆき、その力を発現するに至ったのではないでしょうか。」
と、メルティス王女は自分の考えを口にした。
「で、その力が発現し扱えるようになった者が今回アルテミス王家を襲ったと・・・」
と、大介が言うと、
「はい・・・・その賊の持っていた異邦人の因子というのが、武に長けた者の内でも隠密行動に長けた者の因子だったようです。ただ、幸いだったのはその賊の身体強度がこの世界の普通の者達と然程変わらなかったことです・・・」
と、メルティス王女は答え、
「・・・が、それでも奴を倒すのに近衛の騎士十名と城に詰めていた兵三十名が命を落とし、近衛の騎士と城詰めの兵の多くが負傷し我が父であるアルテミス王も傷を負わされた。」
と、メルティス王女は憎々しげな表情をして言う。
「なるほど、その賊が今回戦争を吹っ掛けてきた敵国の間者だということか?」
と、大介が聞くと、
「いえ・・・・今のところ何の証拠も有りませんが、その賊は我が国に戦争を仕掛けようとしている隣国ダイス王国の間者ではなく、そのダイス王国の裏から糸を引いているダイス王国の宗主国で五大国の一つウラヌス王国の間者だと思われます。」
と、メルティス王女は眉根を寄せて答える。
「ああ、そういえばダラスも、千年も前からアルテミス王国に対する戦争は大国のウラヌス王国が裏で糸を引いているような事を言っていたな。」
「はい。全くもって迷惑な話です。」
と、メルティス王女は腹立たしそうに言い、
「しかし、今代のウラヌス王は今までのような嫌がらせのようなものでなく、本気で我が国を攻め滅ぼそうと考えているようです。」
と、真剣な顔になる。
「その意思の表明として、異邦人の因子を持った者を暗殺者として送り込んできた。と?」
「はい。我々はそう考えています。あの賊は恐らく、我が国の戦力や防衛力、自分達に寝返りそうな者の情報等を調べあげ本国に送った上で我々を暗殺しに来たのでしょう。」
「そして、異邦人の因子を持った者はその賊一人だけではない?」
「はい。恐らくは・・・ウラヌス王国は複数人の因子保有者を抱えていると考えられます。だからこそ、異邦人の因子を持った者を使い捨てにしたのでしょう。ただ、相手は本気で我々アルテミス王家の者達を殺せると考えていた可能性もありますが。レト城が普通の王城と同じような作りだったならば、それは可能だったでしょう。」
ここまで聞いて大介は、
「なるほど、既に戦いは始まっているという事は分かった。が、それと、俺がメルティス王女の用心棒になる必要性とどう関係してくるのかよく分からんのだが・・・それに、俺がグラッツィオ武具店でグラッツィオに会う前からメルティス王女は俺の存在に気付いていた節があるように感じられるのは何故だ?」
と、話を本題に戻すと共に問い掛ける。
「そうですね・・・・異邦人の因子を持った賊を退治した後、その異邦人の因子を持った者達への対抗手段を私達は考えました。が・・・・城の防御能力を上げるにしろ何にしろ時間が有りません。これまで戦争を回避するために外交ルートを使って、ありとあらゆる手段を取りましたが徒労に終わりました。二週間ほど前にダイス王国に向かってウラヌス王国からかなりの数の兵が援軍として向かった、との情報が入ったのです。恐らく、ダイス王国は一月もせずに我が国に宣戦布告する事でしょう。」
と言って、メルティス王女は溜め息を吐いた後、少し辛そうな表情をして、
「恐らく、その頃にはウラヌス王国の異邦人の因子を持った者達も我が国に入り込んでいる事でしょう。今の我等では彼等から我が身を守ることも儘ならないのです。そんな折、私は三日前に精霊達の囁きを聞いたのです。新たな異邦人が一人だけこの世界にやって来た、と。」
と言って、大介を見る。
「私は精霊を見ることも精霊と話をすることも出来ませんので、ずっと精霊達の囁きに耳を傾けていました。すると、その異邦人は我が国に向かっていると言うではありませんか。これも御雷神の御導きと思い貴方が立ち寄りそうな所に網を張っていたのです。そして、運のいいことに貴方を我が王家の遠縁に当たるグラッツィオお爺様のところで捉えることが出来たのです。」
と、メルティス王女がここまで話すと、
「貴女が言いたいことは分かった。が、貴女以外の王家の者達や王族はどうする?」
と、大介はメルティス王女がどんな返答をするか分かっていながら、それでも聞かずにはいられなかった。
「アルテミス王家の王位継承権第一位の第一王女であり異邦人の血と力を受け継いだ私が生き残りさえすればアルテミス王家を復興させることは可能だというのが我が王家の者達全員の意見でした・・・・それは、私も理解しています・・・でも、私は反対したんたです・・・父さまや母さま達、三人の兄さま達を、見捨てて・・・・私だけ生き残るなんて・・・」
メルティスも王女とはいえ、まだ十歳の子供である。ここまで言うと今まで押さえ込んでいた感情が溢れ出し堪えきれずポロポロと大粒の涙を流した。が、唇を噛み締めスカートを両手で握り締めて、大声を上げて泣き叫びたい気持ちをギュッと押さえ込もうとしていた。
それを見た大介は堪らずメルティス王女を優しく抱き寄せて、
「すまない。貴女の気持ちも考えず辛いことを聞いた。赦してくれ。」
と言って、王女の頭を優しく撫で、
「今ここには貴女が先頭に立って導かなければならない者達はいない。大声を上げて泣けばいい。」
と言うと、メルティス王女は堰を切ったように声を上げて泣き出した。
暫くの間、メルティス王女はわんわんと辺りを気にもせず大声を出して泣き続けた。
その間、ずっと大介はメルティス王女を抱き締め頭を優しく撫で続けていた。
暫くしてメルティス王女が泣き止むのを確認するとベットへと座らせ、大介は徐に口を開いた。「彼女の用心棒を引き受けよう。」と。
それを聞いてケヴィンは、「感謝する。」と言って、安堵の表情を見せ深々と大介に頭を下げた後、満面の笑みを大介に向けた。
「これは、用心棒代の前金アルテミス金貨二十枚。アルテミス王家からだ。」
と言って、ケブィンは金貨の入った袋をジャラといわせて大介に手渡し、
「この戦争が終わって、あんたが王女を無事に守りきりアルテミス王家かグラッツィオ武具店が残っていたら謝礼金も払う。」
と言うと、大介は「分かった。」と了承し、
「それじゃあ、これが約束の小太刀の代金だ。」
と言って、その袋から金貨を一枚取り出しケヴィンに手渡す。
すると、「確かに、今後ともグラッツィオ武具店をご贔屓に。」と言って、ケヴィンはその金貨を受け取った。
そして、用は済んだとばかりにケヴィンは踵を返そうとして、
「あ!」
〈忘れていた〉というような顔をしてケヴィンはケネスを見る。
案の定、ケネスは忘れられていた事にプックリ頬を膨らませ、〈私怒ってます〉というような雰囲気を全身から醸し出していた。
それに対して、ケヴィンは〈悪い悪い〉というようにケネスに近づき頭を優しくポンポンと叩きながら、
「それから、俺の娘のケネスだがメルティスの身の回りの世話をする側仕えとして連れていってくれ。武具の手入れも出来るから役に立つと思うぞ。」
と、大介に言って、ケヴィンは優しくも厳しい目をケネスに向け、
「ケネス。頑張るんだぞ!」
と、声を掛ける。と、「はい!父さま。」と言って、ケネスはピンと背筋を伸ばす。
「大介さん。ケネスは五才の時からメルティスの影武者的な役目も担っている・・・それなりの覚悟も出来ている・・・・が、次いででいい、ケネスも守ってやってくれまいか?」
と、ケヴィンが懇願するような表情で言う。
対して、「分かった。」と、快く大介が引き受けると、「感謝する。」と言って、再び深々とケヴィンは頭を下げた。
頭を上げたケヴィンは笑顔を見せて、
「それじゃあ、俺は店の準備もあるし、これで失礼するよ。」
と言って、今度こそ部屋を出ていった。
「ティア、メルティス王女、落ち着いたか?」
と、大介がティアとメルティス王女に声を掛けると、
「はい・・・・大介さん、みっともないところをお見せして済みません。」
と、ティアは大介に対して謝る。
「いや・・・・まぁ、人それぞれいろんな過去を背負っているものだろぅ。気にするな。」
「・・・そう言ってもらえると助かります。」
と、ティアは言うと隣に座り未だにシャクリ上げているメルティス王女に目を向け、
「メルティスさま大丈夫ですか?」
と、優しく抱き寄せその頭を撫でる。
メルティス王女は抵抗せずにティアに体を預け、そのままシャクリ上げていたが暫くして、
「ティアさん、」・・・ひっく。「先程は辛いことを思い出させて済みませんでした。」・・・ひっく。
と、シャクリ上げながら未だ涙で潤んだ瞳をティアに向ける。
「いえ・・・・メルティスさまは私の素性を知っていたのですね。」
・・・ひっく。「我が国も大国には諜報の為何人もの配下を忍ばせてありますから。」
「・・・・そうですか。」
・・・・。
「メルティス王女も落ち着いたようだし、朝食を食べに行くか。」
メルティス王女が落ち着いたのを確認すると、大介は朝食を食べに行く事を提案する。
「そうですね。私も泣いたらお腹が空いてしまいました。」
と、メルティス王女は涙目のまま大介に微笑みかけ、
「それと大介さま、私の事はメルとお呼びください。ティアさんも。」
と言う。
「分かった。なら俺の事も大介と呼び捨てにすればいい。」
と、大介はメルティスに応え、ティアも頷くことでメルティスに応えた。
大介達四人が宿の一階にある飲み食い処[陸の難破船]に朝食を摂りにやって来ると。
「ティアさん!」と、ティアを呼ぶ声が店の入口から少し離れた四人掛けの席から聞こえてきた。
ティアがそちらに目を向けると、ティアに満面の笑みをを向ける二人の女性がその席に座り手を振っている。
ティアも笑顔になり、「マリア、サハラ!」と二人の女性の名を呼んで、その席に足を向けた。
大介はメルティスとケネスの為に空いている席から二脚の椅子を拝借して、マリア達の席に向かう。
先に席に着いたティアにマリアが小声で声を掛けた。
「ティアさん。昨晩うまくやった?」
それに対してティアは、顔だけでなく首筋まで紅色に染めコクンと頭を下げて返事をするようにして恥ずかしそうに俯く。
それを見てマリアとサハラは、〈おお、やった!〉というような表情をし、さらにサハラが小声で問い掛ける。
「で、最後までいったの?」
それを聞いたティアは紅色の肌をさらに紅くさせてブンブンと頭を振った。左右に。
「「ええー、私達があれだけお膳立てしてあげたのにー。」」
と、マリアとサハラが声を揃えて言うと、
「でも、大介さん私がずっと一緒にいる事を許してくれた。」
と、ティアは俯いたままだが嬉しそうに言う。と、その時、「なんの話だ?」と、マリア達の席に近付いた大介が尋ねた。
大介はサハラの左前にあたるテーブルの横に椅子を置いてメルティスを座らせてやり、メルティスの左前にあたるティアの隣の空いている椅子にケネスが座る。
大介はメルティスの正面に当たるテーブルの反対側にもう一脚の椅子を置いて座る。
「初っ娘と鈍感男の話です。」
「なんだそりゃ。」
・・・・。
はぁ・・・・。
「「ほんと鈍感。」」
マリアとサハラの冷たい視線に大介は大袈裟に肩を竦めて見せる。
「ところで、此方の二人のお嬢さん達は?・・・・もしかして、大介さん幼女にしか興味が無いとか?」
とのマリアの問に、
「うわ、変態!」
と、サハラが追い討ちを掛ける。
「違うわ!!」と、大介は眉を怒らせて否定するが、「そうなんです。嫌がっている私達を無理矢理・・・」と、メルティスがハンカチを取り出し、ヨヨヨと泣き崩れる真似をする。大介がケネスに目を向けるとケネスもハンカチを取り出していた。
大介が助けを求めるようにティアに目を向けると、
「大丈夫です!大介さん、貴方が幼女趣味でも私は貴方についていきます!」
と、ティアは力強く言う。
「ティア・・・・それ、フォローになってない。」
と言って、ガックリと大介は項垂れた。
すると、そこに居る大介以外の全員から笑いが零れる。
「と、まぁ、冗談はさておいて、大介・・・さん、ご紹介お願いできますか?」
と、メルティスが楽しそうないい笑顔を見せる。
それを見て大介は、ハァと一つ息を吐き、
「その娘は俺の客だ。グラッツィオ武具店の紹介で今日からその銀髪の娘の用心棒をする事になった。」
と、告げる。
「初めまして、メルと言います。こっちは私の連れのケネスです。宜しくお願いしますね。」
と、メルティスがマリアとサハラに微笑んで挨拶をすると、ケネスも二人にペコリと頭を下げた。
「私はダラス行商隊のマリアです。宜しくね。」
「サハラよ。宜しく。」
と、マリアとサハラは笑顔で挨拶を返し、
「大介さんが用心棒なら、大船に乗ったつもりでいればいいわ。」
と、マリアが言う。
「大介さんが用心棒の仕事を請け負ったとなると・・・・ティアさん、貴女はどうするの?」
と、マリアが尋ねると、
「私は大介さんに着いていきます。」
と、ティアは強い意思の籠った表情で答える。
「そぉ、ならパーティーを組んでいる龍虎はどうするの?」
「・・・・抜ける事になるわね。」
「焚き付けた私が言うのもなんだけど・・・そうなると、私達との契約の関係上多額の違約金が発生するけど、ティアさん払えるの?」
「その程度の蓄えは有るわ。」
「そ、ならいいんだけど・・・・パーティーから抜ける事リーダーのジルバさんには話したの?」
「・・・・・まだだけど。」
「そぉ・・・・」
・・・・・。
「食事かい?」
マリアとティアが話していると、[陸の難破船]の恰幅のいい女将さんが声を掛けてきた。
「あ、はい。朝定食を六人分・・・・で、いいわよね。」
と、サハラが言うと全員が頷いて返事をする。
「あいよ!」と、女将さんは元気に返事を返し、「朝定六つ!」と言って、厨房の中に入っていった。
その時、「うー、頭いてー・・・もう、酒なんか飲まねーぞ。」と、女将さんと入れ替わるようにしてジルバを先頭に龍虎のメンバーが[陸の難破船]に入ってきた。
「噂をすれば影だな。」
と、大介が言うと、
「おぅ。大介!昨日は悪かったな。」
と、大介に気づいたジルバが笑顔を見せ声を掛けてきた。
「いや、ティアに案内してもらったからいい・・・それよりも、あれだけ酔っぱらっていて覚えていたか。」
「ああ、ボンヤリとだがな。」
と言って、ジルバは大介の肩をポンと軽く触ると、龍虎の他のメンバーを引き連れて奥の席へと向かった。
食事が済むとマリアとサハラは、「これから仕事があるから失礼するわね。」と言って、[陸の難破船]を出ていった。
「大介さん、すみません私ジルバ達に用があるので先に部屋に戻っていていただけませんか?」
「・・・・分かった。俺は居なくていいのか?」
「はい。私の我が儘を通すわけですから、先ずは私だけで話をします。その後で大介さんにもジルバと話をしてもらうことになると思います。」
「分かった。メル達と部屋で待っていよう。」
そう言うと大介は席を立ち、メルティスとケネスを連れて[陸の難破船]を出ていった。
それを見送るとティアは、パン!と両頬を手で叩き「よし!」と気合いを入れて席を立った。