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異世界で用心棒   作者: 鈴ノ木
46/49

肆拾陸

 「ご主人様、突入部隊の準備は出来ています。」


 大介がウラヌス王国の王都ティータニアの王城に戻って来ると、恭しく腰を折ったガンガーが異邦人の里の守護精霊ガーディアンであるメイド達、突入部隊が何時でも大神殿に突入出来る旨を伝えてくる。


 これまでどんな戦いの時でも武装したことのなかったメイド達が今回は一人残らず完全武装をしていた。

 大神殿から漏れ出すどす黒い邪気を纏う神力から、異邦人の里の守護精霊ガーディアン達が大神殿に潜むものの力量を感じ取り最大級の警戒をしていることが見て取れる。


 「そうか、・・・突入部隊は外で待機。もし大神殿から出てくるものがいれば何だろうと容赦なく捕らえろ。大神殿の中には俺一人で行く。」

と、大介が指示を出すと、

「ですが、ご主人様・・・」

と、ガンガーは反論しようとする。が、

「お前は俺の怒りの巻き添えをくいたいのか?」

と、大介が少し怒りを開放して言うと、

ニャッ!・・・「わ、分かりました。」

と、ガンガーは尻尾や耳だけでなく体毛を全て逆立て応えた。




 巨大な月を象った神影石にティアが呑み込まれ、暫くした頃、その月を象った神影石が収縮を始めた。

 その神影石は小さくなっていくと同時に人の形を取り始める。

 そして、それは完全に人の姿となる。

 それは、黒髪に小麦色の肌の異邦人化したティアの姿だった。

 しかし、姿は異邦人化したティアだったが纏う雰囲気は全く別のものだった。


 「月神ルナティカ様、再びこの世に御降臨されたこと心よりお慶び申し上げます。」


 ガラント大教区長は恭しくそう言うが、月神ルナティカをその身に宿したティアはその言葉には応えず、何の前触れもなく月光のような輝きと新月の闇夜のような暗闇を持つ月神の神威を解放し神域を広げる。

 その神威をまともに受けガラント大教区長だけでなく夢神ムーナイに精神を乗っ取られているサリサまで平伏していた。


 ・・・その力はこの世界の主神に匹敵するといわれる神、月神ルナティカ・・・その神威がこれ程までとは・・・従属神である大地の神獣や夢神など足元にも及ばない・・・くそ、大地の神獣の力で作った土人形のこの体がもたない・・・それだけではない遠隔地にある私自身の精神力がガリガリと削られていく・・・かといって、何故かリンクを切断できない・・・このままでは不味い・・・


と、ガラント大教区長が考えていると、

『汝は我があるじを崇める者か?』

と、頭の中に月神と一体化したティアの声が響く。


 「は、はい。げ、月神ルナティカ様。わ、私は、し、神界の神ガーディン様を崇める者です。」


 ガラント大教区長は平伏したまま脂汗を流し苦しそうに応えた。


 ・・・・。

『そうか、ならば楽にするがよい。』


 その言を聞くとガラント大教区長は、それまで全身全霊に受けていた凄まじいまでの神威による殺人的な圧力から解放される。


 『そして、これから始まる戦いとその結果をその小さな脳に確りと記憶せよ。そして考えよ。己の進む道を。』

 バアン!!!

 「なっ!?」


 ルナティカの言葉が終わるか終らないかというときに、地下大聖堂の扉が弾け飛びガラント大教区長は驚きの声を上げ、直ぐに身構える。


 「預けておいたティアを返してもらいに来た!!」

 『救い人よ。残念ながらそれはまだできぬ。月神われを継ぐ者が我があるじから隠されているため主の支配下にある我にも探すことが出来ぬ。その為、代わりに我は我が主の命により、この娘の体を使い我が夫、日神となる者を産まなければならぬ。』


 ・・・・・。


 『聞こえておるか?救い人よ。』


 地下大聖堂の扉を弾き飛ばした人物は、一声上げたあと暗闇の中でもティアの姿を確認し、一瞬、ホッとしたようだったが直ぐに警戒するような気配に変わる。

 そして、少しの間、ティアの様子を伺っていた。


 ルナティカは、ハアッ、と一つ息を吐くと、

「救い人よ。神代の頃、我ら、世界の救いの求めに応じこの世界を救いに来てくれたぬしの先祖と同じく、神界の闘神、御雷の加護の影響かぬしも神力や魔法の通りが悪い体質とみえるな。」

と、地下大聖堂の出入口に立つ人物に声を掛ける。


 「お前の言っている事はよく分からん。が、そう言うお前がそちら側に囚われているという事は、この世界を救いに来たという俺のご先祖はしくじったという事だろう。・・・まあ、今はそんな事はどうでもいい。何があってもティアは返してもらう。」


 ・・・うぬ、やはり同じ説明を繰り返さねばならんのか・・・体を得たのは久しぶりだったので、つい癖で念話を使ってしまったが・・・念話など使わず、はじめから声に出して説明すべきだったな・・・「残念だが、それはまだできぬ。我があるじから隠されている月神われを継ぐ者を、そのあるじに支配されている我では見つけ出せぬ。故に我が主の命によりこの娘の体を使い我が夫、日神となる者を産まねばならぬ。」

 「ふざけるなよ、誰だか知らんが今すぐティアの体から追い出してやる!」

 ふむ、「われは、ぬしが今まで相手にしてきただろう従属神達とは違う。そんなに簡単にはゆかぬぞ。我がこの娘を手放そうと思わぬ限り、我を無理にこの娘から引き剥がそうとすれば、我と強く結び付いているこの娘の魂もただではすまぬ。・・・さあ、どうする?」・・・怒り心頭といった感じだが・・・感情のコントロールが出来ていない訳では無いようだ・・・さて、我が言いたいことに気が付くかな?・・・


 月神ルナティカに取り憑かれたティアは、目の前の強い怒りの気配を放つ人物、大介に対して挑戦するような笑みを浮かべる。


 ・・・なるほど、ここまでの会話から、ティアに取り憑いている奴は、自分は支配されているため自分の意思ではティアからは離れられない。だが、自分を支配しているものから解放してくれたら、自分はティアを解放して自分のあるべき者のところへゆく、と・・・まあ、ティアを助けたければ自分も助けろ、ということか・・・確かに、こいつは今までの(奴ら)とは違うようだ。今までの(奴ら)は、こいつほどの自我や意思は無く、大地の神獣ならば大地の性質、大気の神獣なら大気の性質を持った純粋なエネルギー体で、それを扱う者の意思によりその力を発揮していたように思う。まあ、扱いきれずに暴走させていた奴もいるが・・・


 大介は小さく息を吐き、

「ならば、貴様がティアから出ていきたくなるようにするまでだ。」

と言い、大介は左の腰に下げだ小太刀を抜き放つ。


 フハハハ、「いいだろう。やれるものならやってみろ!!」


 大介の言葉を聞くと、ルナティカは愉快そうに声を上げ笑い、その手に邪悪な神力を放つ漆黒の三日月のような刀身の弯刀を出現させる。と、瞬間移動したようにルナティカが取り憑いたティアが大介の眼前に現れる。と同時に、漆黒の弯刀の刃が大介の首に触れるか触れないかの位置あった。

 大介は右手に持った小太刀でその弯刀を何事でもないように軽く止めていた。


 フフフ、「流石だな。我が神域であるこの暗闇の中平然としている上に、今の一撃を眉根一つ動かすこと無く平然と受け止めるとは。だが、気を付けろ、この弯刀【死呪神殺刀】は我が主の神力で出来ている。いかな貴様でも刃に触れればただでは済まぬぞ。それと、我が神域ないでは我は何処にでもいるし何処にもいないと知れ。」

 ふん!「そんな事言われずとも分かっている。ならば、・・・」


 大介がそう言うと同時に大介の体から闘神気が爆発的に放たれる。その瞬間、ルナティカは瞬間移動をして大介から距離を取った。と思ったルナティカの眼前に大介はいた。と認知したと同時にルナティカは腹部に強い力を感じ空中を猛スピードで背後に飛んでゆく感覚を受ける、瞬間、背中に強い衝撃を受けた。その衝撃に耐えきれずルナティカはティアの肺にある空気をカハァッと一気に吐き出していた。


 「・・・貴様の神域を俺の闘神気で満たし俺の領域にしてしまえばいいだけの話だ。貴様は闘いの最中さなかに長話しすぎだ。だが、確かに貴様だけをティアの体から叩き出すのは、外から闘神気を打ち込むのでは無理なようだな。」

 ・・・。

 「だから言ったではないか。主は本当にこの娘を大切に思っているのか?」

 「ああ、俺にとってティアは大切な女性ひとだ。大事に思っている。だから、こうしてティアの背後に回って怪我をしないように受け止めているだろう。それに、貴様をティアの体から叩き出せるかどうかは試してみなければ分かるまい?」

 ・・・・。

 「鬼だな。」


 そう言うと、二人は勢いよく離れ距離を取った。かと思うと、瞬間的に神域と領域の奪い合いを開始する。と同時に、一瞬にして距離を詰め斬撃の打ち合いを繰り返す。その神の領域の速さと力のぶつかり合いで地下大聖堂には衝撃波の暴風が吹き荒れる。


 ガラント大教区長とサリサ神官長は月神ルナティカの加護により、その暴風から守られていた。

 ガラント大教区長は《暗視》の魔法を使い、二人の闘いを見ようとしたが人の目で追えるものではなかった。


 ・・・恐らく大気の神獣の力を使ったとしても、この闘いを見ることなど出来まい・・・あの大介という異邦人は化け物か、この世界の主神と同等の力を持つ神と互角にやりあうとは・・・


 ガラント大教区長が顔を青ざめさせそう思っていると、地下大聖堂の柱や天井が大介達の闘いで生じる衝撃波の暴風に耐えきれなくなり崩れ始める。


 「ぬしよ、そろそろこの闘いを終わらせねばこの娘の体が持たなくなるぞ。」

 「言われなくとも分かっている!」・・・くそ、どうすればこいつをティアの体から叩き出すことが出来る・・・こいつ自身はティアの体から出ていきたそうな事を言っていたんだよな・・・だが、こいつを支配している奴がそうさせてはくれない、と・・・恐らくこいつを支配しているものとは神界の邪神で、こいつとは別に感じるこのどす黒い邪気の親元か・・・だとすればこの邪気を祓えばこいつはティアの体から出ていくと・・・だが、体の外から闘神気を打ち込んでもこの邪気は祓えなかった・・・ならば、体の内に闘神気を流し込めば・・・それには・・・


 ある考えに至った大介は年甲斐もなく顔を赤くする。が、大介の目には、身体中の毛細血管が切れ血塗れになっても襲いかかって来るティアの姿が映る。


 ・・・顔を赤くしている場合ではないな・・・なんとしてもティアを助けたい・・・


 そう思うと大介は覚悟を決めた。


 大介はルナティカの操る弯刀を受け流し払いながら、相手の腕の振り弯刀の初動の位置、その軌道と角度を誘導していく。


 ・・・よし・・・


 次の瞬間、月神ルナティカに取り憑かれたティアの振るった弯刀が大介の胸を貫いていた。


 「なっ!?」

と、驚きの声を上げていたのはルナティカの方だった。


 ・・・悔しいが、間違い無く此奴の方が武力は上だ・・・なのに何故?・・・


と、ルナティカが大介の胸に突き刺さる自分の弯刀を見て困惑していると、月神ルナティカに取り憑かれているティアは大介に抱き竦められ唇を奪われた。

 突然の事に驚きルナティカは抵抗するのが遅れるが慌てて歯を食い縛ろうとする。それに構わずルナティカの抵抗の遅れにより大介はティアの口腔内に捩じ込む事のできた舌でティアの舌を絡め取る。

 大介は自分の血の味を感じながら舌と一緒に邪気祓いの闘神気を一気に流し込んだ。


 ギィヤヤヤヤーーー!!!


 月神ルナティカに絡み付き支配していた邪神の邪気が悲鳴を上げると共に月神ルナティカから離れる。

 大介はその時、ティアの暖かな魂と結び付いた感覚を受けると共に月神ルナティカとも結び付いた気がした。

 大介が口を離しティアを見ると、我に返っていたティアは幸せそうな表情をしていた。


 「ティア、決着をつけてくる。」


 そう言うと同時に大介はティアから離れ、逃げようとしていた神界の邪神の一部である邪気の塊を闘神気を纏わせた小太刀で微塵に切り刻み霧散させる。

 次の瞬間、それを呆然と見ていたガラント大教区長の目の前に大介は姿を現した。

 ガラント大教区長は心臓が飛び出すほど驚き恐怖したが、なんとか平静を装おうとしながら口を開く。


 「ざ、残念だったな、こ、ここに居る私はただの木偶だ。本物の、わ、私は大地の神獣の力でもう既に神聖ガーディン教王国に居る。何をしても無駄だ。」

 「ほう、そうかい。だが、その木偶と本物のお前はまだ繋がっているのだろ。なら、まだ呪詛返しのような事は出来るんじゃないのか?試してみようか。」


 そう言うと、大介はそのガラント大教区長の木偶に闘神気を叩き込んだ。

 すると、その土人形の木偶の腹にぼっかりと穴が空き、ギャアアア!!と悲鳴を上げガラント大教区長の木偶は腹を抱え倒れ込む。

 それを横目に大介は横に立っていたサリサの額を闘神気を込めた指で軽く突く。と、ギャア!と悲鳴を上げ邪気と夢神ムーナイの欠片がサリサの体から飛び出し神影石となって西の空に飛んでいく。と、サリサは地に倒れ込み、寝息をたて始めた。

 大介 はそれを確認すると、安心したようにフゥと一つ息を吐き地に倒れた。


 ティアに取り憑いたままのルナティカは、のたうち回っているガラント大教区長の木偶に近づくと声をかける。


 「我との者の闘いを見て、汝は何と思った?彼の者は己が身を捨ててでもこの娘を助けようとした。しかも初対面のこの我までもな。彼の者の力ならば、我を助けようと思わねば、自分もこの娘も傷つけずに娘を助けることはできたはずだ。確かに彼の者は異邦人だ。この世界の人間ではない。だが、彼の者のような力は無くとも、この世界にも彼の者と同じ行動を取る者が多くいる。汝もそれは知っていよう。ならば、この世界も捨てたものでは無いのではないか?」


 死にそうな表情で月神ルナティカが取り憑いているティアを見上げていたガラント大教区長の木偶に、「よく考えてみよ。」と言いながらルナティカが手を添えると、その木偶からガラント大教区長の気配は消え、その土人形は土塊へと変わり崩れていった。


 それを見届けるとルナティカは倒れ込んでいる大介に近付き、その脇に座り大介の頭を膝の上にのさせる。


 「ぬしも無理をするの。だが、そのお蔭で助かった。此度の事、心より感謝する。・・・主の胸に刺さっている弯刀【死呪神殺刀】は今のこの娘にならば何とか出来るだろう。やり方は主の異世界に居るもう一人の妻に聞けば分かる。」


 そう言うと、月神ルナティカは苦しそうにしている大介の頭を優しく撫で、その頬に口付けをした。

 そして、「ではぬしよ、何時かの夜にまた合おう。」と言うと、ティアの体から離れ姿を消した。


 ティアは体の自由が戻ると、大介の胸に刺さった弯刀を見て一気に顔を青ざめさせる。


 「大介さん!大丈夫ですか!」


 ティアは混乱しどうしていいのか分からなくなる。


 『・・・』


 ・・・と、兎に角、この巨大な弯刀を抜くと同時に治癒魔法を掛けないと・・・でも、月神ルナティカは大介さんの体は魔法の通りが悪いって言っていたし・・・


と、考えているうちにも大介の容態が悪くなっていく。


 『・・・・』


 ・・・兎に角、この弯刀を何とかしないと・・・


と、ティアはこの世界の最大の治癒魔法の長大な呪文を高速で唱えつつ弯刀の柄を持ち引き抜こうとする。が、ピクリとも動かなかった。


 ・・・何故?異邦人化している今の私なら大介さんを助けられるとルナティカは言っていたのに・・・


 ティアがそうこうしている内に、大神殿から溢れていたどす黒い邪気が祓われ神力が消えたのを確認したガンガー達突入部隊は大神殿に突入し、地下大聖堂までやって来た。


 『・・・・・・』


 「ガンガー、どうしよう大介さんが、大介さんが・・・。」

と、地下大聖堂に入ってきたガンガーにティアがすがるように言うと、ガンガーは大介に近付き様子を見る。


 「これは、・・・・私では何とも手立てのしようが御座いません。大介様を救えるとすれば異邦人の巫女ぐらいかと。」

と、ガンガーは悔しそうな表情で言う。


 「そんな・・・」と、ティアが泣き崩れそうになった時、『ティアさん!聞こえますか?』という聞き覚えの無い声がティアの頭に大音量で響く。驚いたティアは「『ひぁい!』」と反射的に噛みながら返事をしていた。


 『よかった。なかなか返事が無いからどうしようかと困っていたのよ。』

 ・・・・。

 「『あの、貴女は一体・・・?』」

 『私は大介さんの妻でシーナ・羽生・ダークスと言います。初めましてティアさん。』

 「『あ、初めましてティア・メトスです。・・・どうして私の名前を?』」

 『何時もというわけではありませんが、私は大介さんの目と耳を通してそちらの様子を見る事が出来ますから。貴女達の事も知っています。それよりも貴女も大介さんの妻となったのですから羽生を名乗りなさい。』

 「『えっ?!私が大介さんの妻?』」

 『そうですよ。今の貴女なら分かるはずです。大介さんの魂との繋がりを。でなければ私とこうして交信をする事も出来ません。』


 ティアはシーナにそう言われ体というか魂の内に温もりが有ることを感じる。


 ・・・これが、大介さんと繋がっている証拠・・・


と、ティアは感じ幸せな気持ちになって頬を紅に染める。


 『そんな事よりも、大介さんです。』

 「『はっ、そうでした。どうすれば大介さんを助けられるのですか!』」

 『ティアさん、御雷一族の長である大介さんに求められ受け入れられて貴女も妻となったのです。御雷一族の長の妻は何事にも動ずる事があってはなりません。』

 「『でも、・・・』」

 『状況は把握しています。その経緯もルナティカから聞いています。まだ大丈夫です。大介さんの胸に刺さっている弯刀は命に別状が無い位置と角度で刺さっています。恐らく大介さんがそのように誘導したのでしょう。ただ、問題なのは、その弯刀が神界の邪神の神力で出来ていることです。大介さんはその弯刀の力を闘神気で抑えていますが、その弯刀に付加されている神界の邪神の呪詛までは抑えきれず徐々に大介さんの体を蝕みだしています。まだ大丈夫ですが、急いでその弯刀を抜き邪神の呪詛を解呪しなければなりません。』

 「『それを、一体誰に頼めばいいんですか?』」

 『貴女がやるのですよティアさん。』

 「『えっ?!私が?でも、私にはそんな力は・・・。』」

 『何を言っているのですか?貴女は私と同じ異邦人の巫女の力が有るのですよ。しかも、大介さんの妻になった事で神界でも最強クラス闘神と言われる闘神御雷の加護を強く受けているのです。そんな貴女に出来ない訳が無いでしょう。』

 ・・・・。

 「『分かりました、やってみます。』」


 ティアが意を決したようにそう言うと、

『流石は大介さんが選んだ女性ひとです。私もホローはしますから安心してください。』

と、シーナは嬉しそうに言う。


 『先ずは自分を護り優しく包み込んでくれている力があるはずです。それが御雷様の加護の神力です。それに意識を集中し自分の中に取り入れなさい。』

 「『はい。』」

 ・・・・・・・。

 『それが出来たら、弯刀の柄を持ち私について唱えなさい。』

 「『はい。』」

 『では、いきますよ。』『「『神界に座し座して全ての世界の邪悪を祓いし闘神御雷尊且の御力を現しめ我が眼前に在りし邪悪を討ち滅ぼし祓い給え浄め給え御身の子孫たるものに邪神を討ち滅ぼし世界を浄め護る御力を与え給え』」』



 ガンガーは突然独り言をブツブツと喋りだしたティアを不思議に思ったが、ティアと大介の間に何か不思議な力が繋がっているのを感じ、そのまま様子を見ることにした。


 ティアが弯刀の柄を持ち何やら唱え出すと、ティアの体は優しい光に包まれ暖かな力を放つ。すると、大介の胸に刺さった弯刀がまるで苦しむように小刻みに震え出す。

 そして、ティアの体を包む光がその弯刀に移動していく。と、その光が触れた先から弯刀は浄化され光の粒となって消滅していく。


 ティアが唱え終わりフゥと一息ついた頃には邪悪な神力を放っていた弯刀は完全に消滅していた。


 「よかった。何とか成功したみたい。」


 そうティアが安堵の声を漏らした次の瞬間、大介の体が変化し始める。


 「そんな、・・・」


 それを見てティアは顔を青ざめさせる。が、

『少し呪詛が残ってしまったようね。でも命に別状は無いわ、安心なさい。初めてやったにしては上出来よ。』

と、シーナはティアを慰めるように言った。だが、ティアは悲しそうな悔しそうな表情で変わり果てた大介の姿を見ていた。


 そんなティアにガンガーが優しく声を掛ける。


 「よく頑張られました、ティア様。そろそろ参りましょう。もうじき地下大聖堂ここは崩れ落ちます。そちらの女性と大介様を連れて早く出ることをお薦め致します。」

まだ少し続きます。


今年中に、あと一話更新出来るか出来ないか、というところかなあ・・・

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