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異世界で用心棒   作者: 鈴ノ木
42/49

肆拾貳

 そして、倒れこむガイウス大神官の手から離れた支配の神杖を、大介は闘神気を纏わせた小太刀で断ち切り霧散させる。


という文章を書き足しました。11/25

 王の執務室の重厚な扉が音も無くゆっくりと開いていく。


 大介が左手で右の腰に差した小太刀を引き抜いた時、銀の光線が王の執務室から壁を射し貫き、右から左に横一線、壁と扉諸とも大介の胴を両断しようと襲い掛かる。が、大介は引き抜いた小太刀に闘神気を纏わせ、その小太刀により光線を跳ね返していく。光線は城の外まで貫き外壁をも切り裂いていった。が、大介には傷一つつけることは出来なかった。


 「おいおい、顔も見せずに、ご挨拶だな。」

と言いながら、上下に分断された扉の向こう側が覗き見えるほどまでに開いていた扉を大介は弾き飛ばすようにしながら王の執務室へと押し入った。と同時に、光線剣が大介の胴を凪ぎ払おうと襲い掛かってくる。 「っとぉ!」・・・なかなかに、いい攻めをしてくる・・・と思いながら、その光線剣を相手の力を利用するように受け流し相手の体勢を崩す。が、相手の左手に浮いている光玉から先ほどと同じ光線が放たれ大介の胴体を貫こうと襲う。咄嗟に、大介はその光線を小太刀で弾きつつ相手から距離を取る。


 チッ、・・・懐に入らせてもらえなかったか・・・

 「なかなか、やるなあ。」

と、舌打ちしながらも大介は楽しそうに言い、相手を見遣みやる。


 ふむ、・・・黒髪黒眼に小麦色の肌か・・・完全に異邦人の因子を持ち、異邦人の力が発現した者の姿だな・・・しかし、魔女の部族の体質のせいか、異邦人の因子を持っていても、男で異邦人の力を発現させる者は珍しいと聞いていたが・・・リサナ義姉さん達から聞いた特徴からして、恐らく、こいつが現ウラヌス王カイルス陛下だよな。双子だというだけあってメンドゥサ王女によく似ている・・・・・・しかし、カイルス陛下が異邦人の力に目覚めている、等とは一言も聞いていないのだが・・・頼むよ、リサナ義姉さん・・・


と、大介が盛大に溜め息を吐きたい気持ちになっていると、そのカイルス陛下の背後から凄まじいまでの神力を纏った巨大なマグマの塊のような無数の火球が、城の壁や天井など無いが如く溶かし吹き飛ばし減速すること無く高速で飛来して大介に襲い掛かる。が、大介はその全ての火球を左手に持った小太刀一本で王都ティータニアの外まで弾き飛ばした。


 「貴様、何者だ?」

と、カイルス陛下の後ろから姿を現した焔を纏う人物が大介を睨みながら問い掛ける。

 「うん?ああ、火達磨のあんたがガイウス大神官か、・・・俺は、黒衣の魔女リサナとアレイアス王子、それにメンドゥサ王女から依頼を受けて、ここに来た御雷大介という。まあ、見知っておいてくれ。」

と、大介は応えた。

 ・・・・。

「なるほど、メンドゥサ王女達の反応が感じられなくなったと思っていたが、・・・どうやったかは知らんが、メンドゥサ王女達に掛けた呪縛を解いたのは貴様か?」

と、ガイウス大神官は憎々しげに大介を睨み付ける。

 「まあ、そんなところだな。」

 ふん!「アレイアス王子達の依頼でここに来たということは、私を殺しに来たか。」

 「いや、サリサから頼まれていてな、カイルス陛下を救う序でにガイウス大神官、あんたも助ける事になっている。まあ、そのサリサも助けてやらにゃあならん状況になっているようだが。」

 「何を訳の分からぬことを、・・・まあ、よい。貴様はここで死ぬのだからな。カイルス、行け!」


 ガイウス大神官が火球を放つと同時に異邦人化しているカイルス陛下に命じる。と、カイルス陛下は大介との間合いを一気に詰める。


 大介はカイルス陛下の光球が放つ光線と光線剣での斬撃、ガイウス大神官の火球を、舞いを舞うようにかわし受け流し弾きながら、


・・・さて、どうしたものかなあ・・・カイルス陛下は完全に精神を支配され感情も無いようだ・・・恐怖心や迷いが無いせいで、最良の踏み込みで間合いを詰め攻めてくる。しかも、間違いなく実力はメンドゥサ王女よりも上だ。・・・ガイウス大神官はガイウス大神官で、カイルス陛下がいるにも関わらず、平気で火球を叩き込んでくる。そのお陰で、カイルス陛下に何発か当たっている。が、メンドゥサ王女と同じ性質の物だろう闇のように黒い魔力の鎧が殆んど防いでいる。・・・だが、それでも多少はダメージを受けているようだ。あまり長引かせるのは不味いか・・・


 そう思いながら、大介はガイウス大神官に目を向ける。


 ・・・それらよりも、ガイウス大神官の方が不味くないか?・・・取り付かせている神獣に食われかけているように見えるが・・・


 その時、ガイウス大神官は焦っていた。


 ・・・くそ!何なんだ!この男は!・・・私とカイルスの攻撃を難なく捌きよる・・・


と思いながら、ガイウス大神官は自分の手を見る。と、指の先が焦げ始めていた。


 チッ、・・・これ以上長引くのは不味い・・・


 それを見てとり、大介は、ハア、・・・無理しやがって・・・「しょうがない、少し気合いを入れるか」と呟くと、カイルス陛下とガイウス大神官の攻撃を捌きながら、フウゥゥゥ……と、息を吐く。瞬間、大介の気配は消え、カイルス陛下とガイウス大神官の視界から消える。

 次の瞬間、パン!!ガバッ!と、カイルス陛下の闇の鎧は弾け飛び、鳩尾に強烈な衝撃を受けて呼吸困難に陥る。


 「悪いな、カイルス陛下。少しの間、退いていてくれ。」

と、大介は言い、そのまま上空高く突き飛ばした。と同時に、大介はガイウス大神官の懐に飛び込み、

「手遅れだったら、済まん。」

と言いながら、炎の神獣フレイをその身に宿したガイウス大神官の鳩尾に拳を叩き込む。と同時に、闘神気を叩き込み炎の神獣フレイと、それを縛る邪悪な神力をガイウス大神官の体から叩き出した。

 ガイウス大神官から叩き出された炎の神獣フレイは、一緒に叩き出された邪悪な神力の塊のような神影石に吸収され、その神影石は西の空へと飛んでいった。


 そして、倒れこむガイウス大神官の手から離れた支配の神杖を、大介は闘神気を纏わせた小太刀で断ち切り霧散させる。


 ・・・神影石が飛んでいった方角からしてガラント大教区長は、もう既にこの王都を離れているか・・・


と、大介は考えながらガイウス大神官に目を向ける。と、そのガイウス大神官の体は大気に溶けるように崩れ始めていた。と、その時、上空に飛ばしたカイルス陛下が落下してくる。それを大介は両腕で軽く受け止め、カイルス陛下の首に掛かるガーディン教のネックレスに闘神気を流し込み霧散させる。そして、床の上にそのカイルス陛下の体をゆっくりと横たえさせた。


 ・・・これで、カイルス陛下とウラヌス王国の重臣達に対するガーディン教の呪縛は解かれるはずだ。後は王の守護役達だが、リサナ義姉さんなら、うまくやっているだろう。・・・問題はガイウス大神官だな・・・


と考えながら、大介は床に横たわっているガイウス大神官に近づく。


 ・・・やはり、手遅れだったか・・・


と、大介が思っていると、うっ、と呻きガイウス大神官が目を覚ます。


 「こ、ここは?」

との問い掛けに、大介は、

「ここは、王城の王の執務室だった所だ。」

と応える。

 「ああ、・・・そうか。」

と、ガイウス大神官は壁も天井も吹き飛ばされ、見晴らしのよくなった王の執務室だった所の床に横たわり、頂点近くまで上がった日に照らされながら呟いた。そして、

「私は、なんという事をしでかしてしまったのか。」

と、後悔の念を含んだ苦しい声を上げる。


 「仕方があるまい。抗し難い力に操られての事だ。」

 「いや、私に操られるような心の隙が無ければ、このような事にはなっていなかった。」

 ・・・。

「それよりも、済まん。お前を助けてやれなかった。」

 ・・・・。

「いえ、私は貴方に救われましたよ。この罪の罰を受け償う時間が無いのが、心残りではあるが。最後に正気に戻してくれたのだから。」

 ・・・・。

「済まん。」

 「そんなに気にしないでください。これも、避けられぬ定めだったのですよ。」

と、ガイウス大神官は微笑みながら言い、

「貴方は、優しい人ですね。私が自分を責めないようにしてくれている。私を止めてくれたのが貴方でよかった。・・・最後に、私が謝っていたとサリサに伝えて頂けますか?」

と、大介に頼み、「分かった。」と、大介がガイウス大神官の頼みを聞くと、ガイウス大神官は笑みを深めて完全にその姿を消滅させた。


 その時、「ご主人様。」と背後から声が掛かる。

 ・・・・。

「インドーラ、首尾は?」

 「はい、城内の戦力は全て無力化致しました。・・・ただ、・・・」

 「ただ、どうした?」

 「・・・誠に申し訳ございません。ティア様を連れ去られたように御座います。」

 「なに!?」




 「しかし、凄いな。異邦人の遺跡の伝承や伝説は話には聞いた事があるが、・・・その守護精霊ガーディアンだっけ?メイド姿の猫族のような彼女達は・・・これでは、俺達の出番が無いんじゃないか?」


 大介達が王の執務室に向かって駆けて行った後、直ぐに騒ぎを聞き付けた近衛兵数人がアーガストとティアのいる五階に駆け付けて来た。のだが、メイド達は近衛兵が姿を見せたはしから、目にも留まらぬ早業で昏倒させていったのだ。


 「ティア様はもちろん、ご主人様のお知り合いの方の手を煩わせるような事では御座いません。」


 ・・・王国軍の兵である近衛兵を相手にして、そんな瑣末さまつ事のように言われた事を聞いたら、軍務卿兼大将軍のガヴァナード殿や黒衣の魔女リサナは、いい笑顔で王国軍をシゴキまくるだろうなぁ・・・


と、アーガストが苦笑いを浮かべながら思っていると、王の執務室の方から眩いばかりの閃光が走り、咄嗟にアーガストは隣にいるティアを抱き抱えて倒れ込む。と、アーガストの頭上ギリギリのところ、人の胴の高さの辺りを真横に、その光線は城の壁を焼き切りながら高速で移動していく。


 ・・・やっべー、もう少し反応が遅かったら頭を焼き切られていたな・・・


と、冷や汗をかきながらアーガストが思っていると、

「わたし、いかなきゃ。」

と、アーガストに抱き抱えられたティアが生気の抜けた表情で呟く。

 「ティア?」

と、嫌な感じを受けアーガストが声を掛けたとき、フッとアーガストの腕に感じられていたティアの体からの反発力が無くなる。「なっっ!?」と、アーガストが驚くと、みるみる内にティアの体は靄のような闇に姿を変えてゆき完全に消えてしまう。と同時に、「・たっ!」と、ティアの影に潜んでいたシーリンは弾き出されていた。


 「一体、どうなってやがる?」


 その状況に理解の追い付かないアーガストは、困惑するばかりだった。


 「どうやら、してやられたようですね。」

と、メイド達は悔しそうに呟き唇を噛んでいた。




 「そうか、分かった。」


 インドーラから報告を受けると、大介は一言そう応えた。

 その時の大介の表情と声は落ち着いたもののように見え聞こえたが、大介から力を授かっているインドーラと全てのメイド達は、その大介の感情を敏感に感じ取り、緊張の余り少しの間、耳の先から尻尾の先まで総毛立っていた。


 その時、「大介殿、済まない。」と、大介の背後からアーガストの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。

 そちらに大介が目をやると、シーリンも悔しげな表情をしてアーガストの後ろを付いてきていた。


 「いや、アーガストの所為ではない。ティアの変調に気付いていて何の手も打てなかった俺の責任だ。」

と、大介は落ち着いた表情で応える。


 「インドーラ、ティアの位置は把握できているか?」

 「は、はい。この近くにある、どす黒い神力に覆われた大神殿の中だと思われます。ティア様が姿を消したのと同時に、大神殿からそのどす黒い神力が吹き出しましたから。」

 「そうか、分かった。そこから出てくるものは、猫の子一匹逃さないように結界を張れ。」

 「はい。もう既に、その様にしてあります。ですが、その為に、杖による異邦人の里の力場を許可なく拡大致しました。申し訳ございません。」

 「構わん。」


 大介は、そう応えると一瞬の間を開け、小さく息を吐いてから口を開いた。


「よし、ならば先ずは、・・・」

と言うと、大介は努めて明るい声で、

「・・・インドーラ、アレイアス王子にご帰還いただこう。」

と、声高に言う。



 その後、ウラヌス王国王都ティータニアの王城にアレイアス王子の個人旗が掲げられ、ガーディン教大神官ガイウス・ガルディンの反乱に終止符を打たれた。




 「ガヴァナード殿。いい歳して、そんなに無理すると後で後悔する事になるぞ。」

 「ほざけ、若僧!まだまだ、お前に負ける俺ではないわ!」


 アスティース公爵領治安軍の大将アランとウラヌス王国大将軍ガヴァナードは、軽口を叩き合いながらも魔力を最大に込めた愛槍を、相手を切り殺さんとばかりに鋭く打ち込み合っていた。


 ・・・このままでは、本当にどちらかが死ぬことになる。・・・大介殿、まだか・・・


と、アランが思っていると、

「アラン!何を考えている隙だらけだぞ!」

と、ガヴァナードは叫びアランの胴を凪ぎ払おうとした、・・・しまった!・・・と、アランはガードしようと槍を引く。が、・・・間に合わん・・・と、覚悟を決めようとした時、「ぐがっ!」と、ガヴァナードが苦痛に顔を歪めよろける。と同時に、首に掛けられていたガーディン教のネックレスが弾け飛んだ。

 ガヴァナードが、よろけた事により槍の軌道がズレた。そのお陰でアランの引いた槍が間に合い、その柄でガヴァナードの槍を防ぎ弾き飛ばした。その勢いでガヴァナードは翻筋斗打もんどりうって倒れる。


 ・・・あ、危なかった・・・後少し遅かったら、俺、死んでたな・・・助かったよ、大介殿。・・・


と、アランが思っていると、

「ガヴァナード大将軍の敵を打て!!」

オオオオオ!!

と、ガヴァナード大将軍が殺られたと勘違いしたウラヌス王国反乱討伐軍が、アスティース公爵領治安軍に対して突撃を掛けようと駆け出した。


 チッ、・・・そう来るか・・・


と思い、アランが身構えてアスティース公爵領治安軍に指示を出そうとした時、

「待てい!!!」

と、ガヴァナード大将軍が愛槍【極炎無尽】を杖に立ち上がりながら大気を揺るがすような大音声で叫んだ。


 「ウラヌス王国反乱討伐軍は降伏する!皆、武器を捨てアスティース公爵領治安軍に投降せよ!!」


 そのウラヌス王国大将軍ガヴァナードの声に、駆け出しかけていた討伐軍は緩やかに停止して、その場に少しの間佇んだ。

 その表情は、皆、何処と無くホッとしているようにも見えた。


 ウラヌス王国反乱討伐軍の降伏をうけ、アスティース公爵領治安軍とガイアスティア公爵領領主軍は勝ち鬨を上げる。




 「やれやれ、やっとのご登場ですか。」・・・ほんと、ギリギリでしたね・・・


 黒衣の魔女リサナは、王の守護役達の動きを見ながら、その攻撃を受け流して魔力が弱まり始めていた五元の玉に魔力を補充するタイミングを計っていた。


 ・・・無駄に魔力を消費せずに済みましたか・・・


 そうリサナが考えていると、そのホッと一息ついたような表情が無意識に表に出ていたのだろう。そのリサナの表情が、シャクティアには諦めの表情に見えたのか、

「我等の攻撃に流石の黒衣の魔女も覚悟を決めたか!」

と叫び、最後の一押しとばかりに力を込めてリサナに斬り掛かろうとした。その時、

「シャクティア。例え、相手が油断ならない強敵であっても、実戦ではもっと周りの気配に気を付けなさい、と私は教えた筈ですよ。貴女達は、私への攻撃に意識を集中し過ぎましたね。」

と、ため息混じりにリサナが言うと、「何を・・・」と言いかけ、ハッとしてシャクティアは振り向き様に頭上に自身の魔法刀【光刃斬神刀】を構える。そこに、稲妻を纏った魔法剣が襲い掛かった。

 「なっ!?メンドゥサ王女?!」

 「助けに来ましたよ。シャクティア。」

 ・・・。

「言っている事と、やっている事が全く違っているのですが?」

 「間違ってはいません。貴女達を止めることが、貴女達を救うことになるのですから。」

 ・・・・。

「無駄です、メンドゥサ王女。私を混乱させようとしているのでしょうが、・・・本物のメンドゥサ王女かどうか分かりませんが、私は貴女が敵と認識しました。」

 「ほぉう。ならば、どうします?」

 「黒衣の魔女と共に全力で倒します。」

 ・・・・。

「今まで、貴女が相手をしていたのは誰ですか?世界最強と言われる人物でしょう?そんな相手から目を離しすぎですよ。」

と、メンドゥサ王女がシャクティアと鍔迫り合いをしながら言うと、

「全くですね。」

と、背後から残念そうな黒衣の魔女リサナの声が聞こえ、シャクティアが背に冷たいものを感じ周りを見る。そして、自分達が完全に敗北していることを理解した。何故なら、他の王の守護役達も自分と同じくメンドゥサ王女の部下に動きを封じられていたのだ。それは、世界最強と言われている黒衣の魔女を自由な状態にしている事を意味していた。


 ・・・チィ、こうなればメンドゥサ王女だけでも・・・


と、シャクティアが捨て身の攻撃を仕掛けようとした時には、

「シャクティア、遅すぎます。この騒動が収まったら一からシゴキ直してあげますからね。」

と、リサナはいい笑顔で言い、五元の玉に魔力を補充して、五元の玉を拘束魔法《神縛綱》に作り替えていた。そして、「《縛!》」と、一言唱えると、《神縛綱》は王の守護役達を絡め取り身動きが出来ないように縛り上げる。


 「くそっ!この裏切り者共が!」

と、シャクティアはリサナとメンドゥサ王女達に噛み付くが、

「うるさい口ですね。その口も封じておきましょう。」

と、リサナは言い、指を打ち鳴らす。と、《神縛綱》が伸びシャクティアの口を封じる。

 「因みに、知っているとは思いますが、その《神縛綱》は神力や魔力、刃物等で傷付けようとする力を受けると、その力を吸収して強度が上がりますからね。余り無駄な足掻きはしない事です。」

と、リサナが言うと、《神縛綱》から脱け出そうと身動ぎしていたシャクティア達、王の守護役は諦めたように動くのを止めた。


 それから少しすると、少し離れた所からアスティース公爵領治安軍とガイアスティア公爵領領主軍の勝ち鬨が大気を震わせリサナ達の元に届く。


 「これで、一年以上に渡ったこの騒動も終わりですね。」

と、リサナが遠くを見るようにして言うと、

「リサナ。貴女は直ぐに王都に向かいなさい。きっと今頃、大介様がアレイアス兄様を呼び出している頃です。アレイアス兄様が民衆の前に立つ時には、私は兄様の隣に貴女に居て欲しいのです。」

と、メンドゥサ王女は微笑みながら言う。

 メンドゥサ王女の言葉を聞き、「ですが、・・・」と、リサナが反論しようとすると、

「これまで、どんなに愛し合っていても貴女が歴代のアスティース公爵の求婚を断ってきた事は知っています。また、その理由も理解できます。が、もう既に、我が父、シルベウスが貴女の反対を押しきって純血では無いとは言っても異邦人の因子を持った者を妻として王家に迎え入れいるのです。もう、貴女が求婚を拒絶出来る理由は無くなりました。これは、ウラヌス王国の第一王女である私の命令です。今すぐ我が兄ウラヌス王国第一王子の元に馳せ参じなさい!そして、我が兄の求めに応じなさい!反論は許しません!」

と、メンドゥサ王女はリサナに厳命を下す。対して、リサナは顔を赤くして恥ずかしそうにしながらも反論しようと数回口をパクつかせたが、何故か反論が出ず、「早く行きなさい!」と、メンドゥサ王女に急かされ、リサナは反論を諦めメンドゥサ王女に一礼して王都ティータニアに向かって空を駆けて行った。


 リサナが王都のある方角に振り向く時の、一瞬の表情を確認したメンドゥサ王女は、〈よしよし〉というように嬉しそうな表情をしていた。

えっと、アルテミスとダイスとの戦阻止、ティアの救出、ちょっとした後日談等を書いて一区切りとしたいと思っています。


出来るだけ今年中には、区切りを付けられるように頑張りたいと思っていますので、もう少し〈異世界で用心棒〉にお付き合いください。

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