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異世界で用心棒   作者: 鈴ノ木
25/49

貳拾伍

 ハァ、「グランデとは少し話をしたかったのですが・・・仕方がないですね。」

と、リサナは王都ティータニアに撤退して行くグランデ達を見て少し残念そうに呟く。


 ・・・まぁ、私の姿を確認して、私との戦力差等を勘案し直ぐさま撤退を決断したのはいい判断ですが・・・


と、リサナが考えていると、

「ご無事だったのですね、リサナ様。」

と、後ろから声が掛かる。


 「ええ、ある人物の助けを得られましたからね・・・。」

と、リサナは笑みを浮かべて答えた。

 ・・・。

「それにしても、流石、リサナ様ですね。あの大地の神獣をいとも簡単に倒してしまうとは・・・。」

と、アランが感心したように言うと、


・・・私が止めを刺したわけではないのですが・・・何処にガイウスの手の者が居るかわからない現状、本当の事は言えませんね・・・


「・・・ところで、アラン。今回の戦い、詰めが甘かったようですね。」

と、リサナは話を逸らし、キツイ視線を送る。

 「う゛・・・それは、その・・・。」

と、アランはこれ迄の自信たっぷりな態度から一変して、しどろもどろな返答をする。


 アランは、リサナに頭が上がらない様子で、歴戦の強者然としたゴツイ体を子供のように縮こまらせていた。


 「折角、大介さんが奇襲を掛けやすいように地の精獣様に頼んで、普通の雨を豪雨にしてもらったというのに・・・」

と、リサナが小さく呟くと、そのリサナの声が聞き取れず、「え?」と、アランは顔を上げる。

 「・・・いえ、何でもありません・・・まぁ、しかし、相手にあれ程の手札が有るとは私も思っていませんでした・・」・・制御はできていなかったようですが・・「・・ですから、今回は領都を守りきったという事で許してあげましょう。」

と言い、リサナはキツイ視線を収め優しい笑みを浮かべる。すると、あからさまにアランは、ホッ、と胸を撫で下ろし、

「そう言って頂けると助かります・・・」

と、安心した笑顔を見せた。


 「・・・リサナ様。こんな所で何時までも立ち話というのも何ですし、今頃は領都の方も片が付いているでしょうから、詳しい話は領主城で致しましょう。私の後ろにお乗りください。」

 ・・・。

 「そうですね。」


 アランの提案にリサナは笑顔で快諾し、差し出された手を取り、アランの乗る騎馬の後ろに乗った。


 「それでは行きますよ。」

と言って、アランは馬首を巡らすとアスティース公爵領の領都に向かって、のんびりと愛馬の歩を進め始める。

 それに付いて、カメロ達治安軍の者達も領都へと向かい。その後ろを、シルヴィアンが付いていく。


 カメロはアランの騎馬にくつわを並べると、

「流石はリサナ様ですね。あの地の精獣様を従えて戻ってこられるとは・・・。」

と、リサナに尊敬の念の籠った声を掛ける。と、

「いえ、地の精獣様は私に従っておられる訳でなく、私達に助力してくれている人に従っているのです。」

と、少し笑みを浮かべてリサナは答える。


 「先程から話に出てくる、その力を貸してくれているという方は、前に言っておられた新たにこの世界に来たという異邦人の方なのですか?その方は今何処に居られるのです?」

と、アランが尋ねると、

「そうですね・・・・領主城に着いたら会えますよ。」

と、リサナは微笑んで答えた。



 アラン達が領都の南門に着いたとき、リィンは神獣の遠吠えや急激な天気の変化、大地の大きな揺れ等の異変により不安を覚え、治安軍を百名程揃えてアラン達の加勢に出ようとしていたところだった。


 「おや、執政官殿ご無事でしたか。今から、文官の私に領都の守備を押し付けて出ていってしまった。大将と副将二人の骨を拾いに行こうかと思っていたところだったのですが。」

と、リィンは相変わらず無表情で感情の込もっていない毒舌を吐く。


 アハハハ・・・「相変わらずですね、リィン。」

と、アランの後ろに乗っていたリサナが堪らず吹き出し、リィンに声を掛けた。


 ・・・・・。

「おや、誰かと思ったら、我等を見捨てて逃げていってしまったリサナ様ではありませんか・・・生きていたのですか?」

と、コクンと首を傾げた無表情のリィンは一瞬だけ、感情の無かった声音に僅かな喜びを滲ませたようだった。

 同時に、リィンの後ろに控えている百人の治安軍の者達も、リサナに気が付き徐々にザワ付き始める。


 「姉さん!リサナ様に口が過ぎますよ!」

と、リィンの物言いを治安軍の副将でリィンの双子の妹であるメルシィナが咎める。


 「メルシィナ、大丈夫ですよ。私はリィンが、その毒舌とは裏腹にとても優しい子で恥ずかしがり屋だという事を知っていますから。」

と言って、リサナはリィンに微笑みかけ、

「リィンは私やアレイアス様の事をとても心配していてくれたのでしょう?」

と言うと、

「うっ・・・そんな事はありません。」

と言って、リィンはそっぽを向く。

 そのリィンの耳は真っ赤になっていた。


 ハハハ、「流石のリィンもリサナ様には形無しだな。」

と、アランが言うと、

「放っておいて下さい。」

と、直ぐに元の状態に戻ったリィンは無表情で返す。


 「もう、元の状態に戻ったのか・・・残念だな。何時も鉄面皮で感情を表に出さないリィンが恥ずかしがるのなんて、そうそう見れないのにな。」

と、カメロが楽しそうに言うと、

「・・・貴方と違って、私は感情に支配されない人間ですから。」

と、リィンは無表情で返す。

 対して、

ハハハ、「違いねー。」

と、カメロは楽しそうにリィンに同意した。


 「お前達、リサナ様はお疲れだ。話をするなら領主城で落ち着いてからだ。」

と言って、アランは歓談を打ち切り領都内へと馬を進めた。その進路に居た治安軍の者達は道を開け、「リサナ様、お帰りなさい」「リサナ様、無事でよかった」「リサナ様、アレイアス王子は御無事ですか?」等、それぞれリサナの無事を喜ぶ声や、アレイアス王子を心配する声をリサナに掛ける。

 それに対して、アランの後ろで馬に揺られなが、リサナは手を振り、「ただいま」「ありがとう、皆には心配を掛けました」「アレイアス様は御無事です」と、笑顔で声を返した。


 シルヴィアンは領都には入ろうとせず、領都から少し離れた所で主を待つように座っていた。



 リサナは領主城に入ると、まるで我が家に帰ってきたかの様に先頭にたって領主城の奥へと進んで行く。


 領主城の最奥には、アスティース公爵、又は、その家族の許可が無ければ入れない、歴代のアスティース公爵家の私生活の場である居所があった。


 そのアスティース公爵家の公私の境に位置する通路の途中に、千年近くアスティース公爵家を見守り、又、アスティース公爵家が家族として受け入れてきたリサナの部屋があった。


 その部屋にリサナが入ると、「失礼します」と、それに付いてアラン、カメロ、リィン、メルシィナが順に入ってくる。

 メルシィナが最後に部屋の扉を閉め、それを確認すると、リサナは徐に口を開いた。


 「先ずは皆に感謝を致します。よくこの領都、いえ、アスティース公爵領を守り抜いてくれました。」

と、リサナがアラン達に頭を下げると、

「いえ、頭をお上げ下さい、リサナ様。我等はリサナ様に領民は友人であり家族だと教えられてきました。家族ならば守って当然の事でしょう。」

と、アランが笑顔で言うと、

「おや、領民の為にしなければいけない執政官としての仕事を、何時も私達に押し付けて遊びに行こうとする人の言葉とは思えませんね。」

と、リィンが即座に突っ込む。

 「うっ、いや、それは・・・そぅ、視察に行っているのだよ、リィン君。やはり、領民の生の声を聞かなければ、良い統治など出来ないからな・・・」アハ・アハハハ・・・

と、アランは頬を引き釣らせる。


 「その引き釣った笑い、執政官にも後ろめたさはあるようですね。私の言葉に、その自分の後ろめたさを自ら意識させられ良心の呵責に苛まれるような気分にでもなりましたか?」

と、無表情で言うリィンに対し、

ハハ・・「何を言っているのかな?リィン君。何故、視察に行った事で良心の呵責に苛まれにゃあいかんのかなあ?」

と、アランは頬を引き釣らせながら問い掛ける。

 「おや?昼間から酒場で酒を飲むのが執政官の視察なのですか?」

と、コクンと首を傾げ無表情でリィンが問い返す。と、

「う゛っ・・・」

と、アランは顔を青ざめさせながら言葉に詰まる。


 ・・・。

「成る程、その話は後でアランからユックリと聞くとしましょう。」

と、リサナはいい笑顔で言い、アランは更に顔を青ざめさせ、「お手柔らかに」と、呟いた。

 「それよりも今は、今後の話です・・・」

と、表情を真剣にしたリサナは、

「・・・と、その前に、彼を紹介しなければなりませんね。」

と、表情を緩めて言い、精緻な魔法印を施された杖を、トン、と床に突き、

「インドーラ、お願いします。」

と言うと、その杖の魔法印が仄かに光り、リサナに対し腰を折った格好で、猫顔に猫耳、猫の尻尾を生やし執事姿をした美女が、その杖から投影される様に姿を現した。


 その猫系美女の執事はリサナに、「畏まりました」と言うと、背を伸ばし両腕を広げる。と、床に魔法陣が現れ淡い光を放つ。すると、その魔法陣から光が立ち上がり人の形を成すと、その光りは弾け一人の男が姿を現した。


 その様子を、アラン達は目を丸めて見ていた。


 何故なら、投影された人物が実体化するのもる事ながら、その執事は一人で転移魔法を使い一人の人間を転移させたのだ。



 この世界にも一応転移魔法はある。


 有るには有るのだが、たった一人の人間を転移させる事しか出来ないその転移魔法は、転移させる人間のいる場所と転移させる場所、それぞれに五十人以上の儀式魔法を使える魔法使いが大規模な儀式を行わなければ出来ない大規模魔法だった。


 その為、実用的でなく、その転移魔法は殆んど使われたことが無かった。



 そんな、ありえない状況を唖然と見ているアラン達を他所にリサナは口を開いた。


 「こちらが、私達に力を貸して下さっている御雷大介さんです。因みに、私のオトウトです。」

 ・・・。

 「よろしく、俺の事は大介と呼んでくれればいい。」


 リサナが大介を紹介し、大介がアラン達に挨拶をして手を差し出す。が、アラン達四人はリサナの言葉を聞いて更に目を丸くして口を大きく開き、「「「「はっ!?」」」」と、異口同音に驚きの声を上げた。


 ・・・えっと、どういう事だ・・・・・べっぴんな執事が杖からいきなり出てきたかと思ったら、その執事がいきなり転移魔法を使い一人の・・どう見ても四十前後にしか見えない男を転移させたのに驚いたのに・・・・・・・今度は、その四十前後にしか見えない男が、どう見ても二十代にしか見えないリサナ様の弟・・だと!?・・・・まあ、異邦人だし・・・それに、男でも見惚れそうなほどすこぶる渋美男ではあるが・・・


と、アラン達四人は眉間に指を立て、少しの間、悩んでいた。


 ・・・そりゃあ、ムサイオヤジが現われて、それが、慕っている若く美しい女性の弟だと突然言われたら誰だって納得いかんわな・・・


と、大介がリサナの紹介にアラン達が困惑しているのを見て、そんなふうに思っていると、

「ああ、言葉足らずでしたね。大介さんは、私の妹の夫なのです。」

と、リサナが笑顔で説明を付け加えると、その場に居た全員が得心いったような表情になる。


 ・・・えええ!?それで納得するのか?・・・


と、逆に大介は内心、驚き脱力する。


 生活環境や身分制度、婚姻制度等諸事情により、この世界には、年の差夫婦はざらにいる。

 その事に、大介は未だ気付いていなかった。


 「初めまして、俺は、今は領主不在のこのアスティース公爵領の執政官兼治安軍大将を務めさせて頂いているアラン・アレイだ。アランと呼んでくれ。」

と言って、アランは四人を代表して大介の手を握り挨拶をする。そして、

「後ろにいる者達は俺の腹心の部下で、右手から執政官補佐のリィン、治安軍副将のカメロとメルシィナだ。」

と、カメロ達を紹介すると三人とも軽く頭を下げ、大介は軽く手を上げて挨拶をする。

 「それにしても、そちらの別嬪な猫人の執事さんは凄いな、一人で転移魔法を使うとは・・・随分と力がお有りのようだ。」

と、アランがインドーラに目を向け大介に感心して言うと、

「申し遅れました。私、異邦人の里の守護精霊ガーディアンで、御雷家の執事をさせて頂いております。インドーラと申します。以後お見知りおきください。」

と、インドーラは深く腰を折ってアラン達に自己紹介をした。


 「成る程、異邦人の里の守護精霊ガーディアンか・・・これは失礼した。姿からして猫人だと・・・道理で、桁外れな力を持っておられるわけだ。」

と、アランは納得したように言い、

「お二方が、我等に味方してくれれば怖いものなしですね、リサナ様。」

と、リサナに声を掛ける。


 「そうですね・・・ですが、カイルス陛下達がガーディン教の手の内にあるうちは、下手に攻め込むわけにもいきません。しかも、大神官のガイウスは、不意を突かれたとはいえメンドゥサ様達の記憶を操作し操つるほどの力を得ています。」

と、リサナが言うと、

「だから、面の割れていない俺が密かに王都に潜り込む事になった。」

と、ニッと笑って大介が言う。


 「成る程・・・だが、大介殿は王都ティータニアの地理とか大丈夫なのか?」

 「ああ、この世界で出会った俺の連れに元冒険者がいてな、そいつが王都ティータニアを案内してくれる事になっている。」

 ・・・。

 「その方と二人で王都に潜り込もうと?」

 「ああ、まあ、そんなところだな。」


 ・・・・。

「成る程、では、我々は・・・」

と、アランがリサナの方に目を向けると、

「ええ、アランの察しの通り・・・私達は大介さんが動きやすいようにガーディン教の目を此方に向けさせます。」

と、リサナは応え、

「・・・ですが、先ずは領都の被害状況です。リィン、どうなっていますか?」

と言うと、

「そうですね・・・奪還軍の攻撃による被害は、都市壁とその入場門に集中しています。が、修復には然程掛からないかと・・・一番被害を受けたのは大地の揺れによるものでしたが、人的被害は出ていません。ただ、問題なのは食料です。捕まえた捕虜の殆どは武装を解除して船に乗せて堀から下流の王都に繋がる川に流すとして、体力的に持ちそうに無い者達はこの領都に留めざるおえないでしょう。その者達の分も考えると、あとよくもって二・三日といったところです。」

と、無表情でリィンは答える。

 「・・・そうですか。」

と、リサナはリィンの報告を聞くと、難しい顔をして呟き腕を組む。と、

 「・・・ですが、他の都市に食料の調達を命じてありますので、大丈夫かと。」

と、リィンが付け加える。

 対して、

「それを早く言いなさい。」

と、リサナは剥れ顔になる。

 「さっきのお返しです。」

と、無表情でリィンは言うが、その声音は少し楽しそうに聞こえた。


 ハア、「まったく、この娘は・・・分かりました。領都のほうは大丈夫ですね。」

と、リサナは言い、

「今のリィンの報告を踏まえて、現状アスティース公爵領で今すぐ動かせる兵員は何人いますか?アラン。」

と、アランに尋ねる。


 ・・・。

「そうですね、領都から七百、あとアスティース公爵領の二つの都市に置いてある治安軍から二百ずつ、といったところですか。」


 ・・・・。

「合わせて千百ですか・・・」


・・・王都にいるウラノス王国軍の精鋭部隊の半分、五千はダイスの援軍として遠征に出ている。とはいえ、まだ半分は王都に残っている。グランデ達が王都に着くのに五日・・・グランデ達が王都に着けば私がアスティース公爵領に戻ってきていることがガイウスの耳にも入るだろう・・・私がアスティース公爵領に戻っている事が知れれば、間違いなくその精鋭部隊とメンドゥサ様に匹敵する異邦人の力を持つカイルス陛下の守護役の内から誰か一人は出てくるだろう・・・出来れば、こちらもあちらも損害が出る前に王都での決着が付いてくれれば有難いのですが・・・


「・・・分かりました。では、アレイアス王子に頼み地方の領主達に檄文を書いていただきましょう。様子見を決め込んでいる地方の領主達もアレイアス王子が追っ手を倒し、アスティース公爵領の治安軍を率いて反攻に出たと知れば、ガーディン教を快く思っていない地方の領主達は必ずや領主軍を率いて合流してくるでしょう。」


・・・これで、何とか兵力を拮抗させて時間を稼ぐ、その間に大介さんが事を済ませてくれる事を祈るのみですね・・・


と、リサナが大介の方へ目を向けると、リサナの意図を知ってか知らずか大介はいい笑顔でビシッと親指を立てていた。


 ・・・本当にこの人は・・・何処からこの自信が来るのか・・・


と、大介を見て思わずリサナは呆れた様な笑みを零した。


 「分かりました・・・」

と、アランが返事を返したところで、

「リサナ様、それほど兵を集めずとも治安軍だけでもなんとかなるかと。」

と、リィンが口を挿んできた。


 「どういう事ですか?リィン。」

 「捕虜から得られた情報なのですが、奪還軍の総大将のアガバスはこの領都を落とすのに随分と焦っていたそうです。その理由を聞いたところ、近々アマノハラ王国からかなりの大物が特使としてやって来るため、王都からせっつかれていたようです。」

 「なるほど、アマノハラ王国に弱みを見せたくないため大っぴらに兵を動かせないと?」

 「はい。」

 ・・・・・。

「だとしても、国民にアレイアス様の健在と反攻の意思を知らしめる為にも、地方領主への檄文は必要でしょう。」


 ・・・しかし、だとすると、ガイウスの取る手は限られる・・・出世欲の強かったアガバスは寄せ集めとは言っても短期間で兵力を集めたが・・・基本中央近くの領主は兵力を持たない・・・だとすると、カイルス陛下の守護役をのみ使うことになるか・・・守護役五人中さて何人ガイウスに動かせるか・・・対して此方の被害を出来るだけ抑えるには・・・


 「大介さん、出来ればメンドゥサ様達に力を借りたいと思うのですが・・・。」

とのリサナの問い掛けに、

「・・・インドーラ、どうだ?」

と、大介がインドーラに確認を取る。


 ・・・。

 「メンドゥサ様達は神力の呪縛から完全に解放されています。なので、大丈夫かと思いますが。」

 「そうか・・・リサナ義姉さん、誰を呼ぶ?」

 「それは、後で決めましょう・・・それよりも、少し気になる事があります・・・」

と言って、少し不安げな表情をした後、リサナは口を開いた。

 「・・・その大物の特使が誰なのか分かりますか?」

と、リサナがリィンに聞くと、

「いえ、そこまでは捕虜も知らないようでした。」

と、リィンは無表情で応える。


 ・・・・・。

「大介さん、申し訳ないのですが、地の精獣様に調べてもらえるように頼んで頂けませんか?恐らく個人旗を掲げていると思います。」

と、リサナが申し訳なさそうに言うと、

「ああ、構わんぞ。」

と、大介は快諾し、足元に目を向け、

「シルヴィ、聞いてたか?」

と、声を掛ける。と、

『はい。アマノハラ王国の特使の馬車を見つけて誰が乗っているのか、馬車に掲げられているその個人を表す個人旗を確認すればいいのですね。』

と、大介の足元に居る半透明の地精がシルヴィアンの返答を返してきた。

 「ああ、頼む。」

 『お任せを。』


 それから少しすると、

『見つけました。ユリの花をバックに炎を纏う剣と雷ですね。』

と、シルヴィアンがアマノハラ王国の特使の乗る馬車に掲げられた個人旗の図柄を伝えてきた。


 それを聞いたリサナは、「うっ。」と言って絶句した。

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