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異世界で用心棒   作者: 鈴ノ木
23/49

貳拾參

 「リサナ義姉さんの言った通りの展開になっているな。」


 大介とシルヴィアンはウラヌス王国元アスティース公爵領の領都近くの小高い山の上から領都の様子を窺っていた。


 ・・・敵軍が包囲して約一ヶ月か・・・そろそろ動く頃だな・・・手を出さずに見ていろとリサナ義姉さんには言われたが・・・頃合いを見て、間接的にチャンスを作ってやっても構わんだろう・・・


と、思いながら大介は今にも泣き出しそうな空を眺めていた。




 「アラン執政官、あと一週間ほどで食料庫の食料が底をつきます。」

 「アラン大将、メンドゥーサ王女に破壊された南門がもう持ちません!」


 そう言って伝令役の者たちが作戦司令室に慌しく駆け込んでくる。


 ・・・突貫工事で修復した都市壁の南門を集中的に攻撃されたからな、一応住民達はこの領主城の第一城壁内に避難させてあるが・・・・・リサナ様が必ずアレイアス王子を連れて戻ってくると信じ頑張ってみたが、ここまでか・・・しかし、運が良かった指揮官がダメ貴族のアガバスで・・・でなければ今頃どうなっていたか・・・それに、今、飛竜は冬眠準備に入る時期で使えない、空から攻め込まれていたら今頃ここは陥落していたかもしれん。然もちょうどこの領都周辺の広大な農地の作物を収穫し終えたところだ。そうでなければ兵糧攻めを受けて一月持たなかっただろうな・・・


 齢五十近い元アスティース公爵領領主軍大将、現王家直轄地アスティース公爵領治安軍大将兼王家直轄地アスティース公爵領執政官アラン・アレイは、端から聞いていれば危機的状況のように思える現在の戦況報告を受けて不敵敵な笑みを浮かべた。


 「・・・だが、降伏条件が、俺の首というのはいいとして、アスティース公爵領の全領地の執政権をガーディン教へ譲渡するというのは飲めんな。」

 ・・・。

 「ですがアラン執政官、このままでは、ここまで頑張ってきてくれたこの領都に住む領民に被害が出る可能性が有ります。」

と、まだ年若い執政官補佐のリィンが事務的な口調で言う。

 「おいおいリィン。大将の首は二の次か?」

と、同じく二十台前半の治安軍副将のカメロが呆れたように問う。

 「執政官が命を惜しんで領民に被害が出れば、執政官はリサナ様に殺されます。どちらにしろ執政官にとっては敵に殺されるかリサナ様に殺されるかの違いで死ぬことに変わりはないでしょう。ならば、領民に被害が出ない内に降伏すべきだと私は考えます。」

と、リィンはも当然というように答える。


 ハ・ハ・ハ・「ご高説有難う、リィン執政官補佐。優秀な部下を持って俺は幸せ者だ。」

と、腹心の部下である執政官補佐の〈上官の命などどうでもいい〉と言うような発言に、乾いた笑いを溢しながらアランは感情の籠もっていない声音で言う。


 戦況は危機的情況の筈なのだが、何故か作戦司令室内に危機感を感じることは出来なかった。


 「だが、ガーディン教に執政権を渡せば、代々のアスティース公爵とリサナ様が守り育ててきた、この土地的にも経済的にも豊かなアスティース公爵領は間違いなくガーディン教に食い物にされる。そうなれば領民は困窮の極みに追い込まれるだろう。それだけは回避しなければならん!」

と、アランは強い決意の籠もった声で言う。


 「とは言え、大将・・・兵力差は八百対五千、食料はあと少しで底を突く。この状況でどう戦います?」

と、カメロが真剣な顔でアランに問いかける。


 ・・・相手は五千の大軍を一ヶ月も維持し続けている。そろそろ兵糧の補給に苦慮し始める頃の筈だ。然も相手の兵の士気は此方と比べると遥かに低い。士気が低いという事は兵の疲弊の仕方も此方より早いだろう。その証拠に都市壁の門一つ落とすのに一月も掛かっている。此方の兵の錬度が遥かに高いというのもあるだろうが、時間が掛かりすぎている。だとすると、そろそろ相手も焦り始めていい頃だろう・・・・・頃合いだな・・・


 アランは少しの間、沈思黙考した後、


「よし都市壁の守りを放棄する・・・都市壁の守備に就いている者達を全てこの領主城に引き上げさせろ。」

と、カメロに指示を出す。

 「・・・・なるほど・・・この領都の市街地に誘い込み各個撃破しようというんですね。そうすれば兵力差が大きくても何とか戦える。流石大将!」

と、カメロが納得したように言う。



 このアスティース公爵領の領都の市街地は、領主城の第一城壁に近づくにつれ壁は高く道は細く入り組んだものとなり袋小路も多くなる。

 住み慣れた者でなければ中々領主城へは辿り着けない作りとなっていた。


 因みに行商人が領主城に商品を運ぶ時は領都の衛士に先導されて領主城まで行く決まりとなっている。



 「分かったら早く行け!敵兵を誘い込み各個撃破出来るように適所に兵を配置しろ。それが出来たら都市壁の守備兵に伝令を走らせろ!」

と、アランは語調強く言い、対して、

「わっかりました!」

と、ビシッと敬礼をして楽しそうに返事をすると、カメロは伝令役を連れて部屋を出て行こうとする。

 「待て!」

と、それをアランが止めた。

 「はい!?」

と、カメロは驚いたように止まる。


 「あと腕の立つ者を二十、いや三十人程選抜しておけ。」

と、アランが真剣な顔で指示を出すと、

「・・・了解。」

と、カメロは笑顔で返事をして今度こそ部屋を出て行った。


 ・・・。


 「それでは私は食料の分配方法と、城内に避難させている住民たちの不安緩和の為の方策を指示してきましょう。」

と言って、リィンも伝令に来た執務官を連れて部屋を出て行く。

 その後姿に、「ああ、頼んだ。」と、アランは声を掛けた。




 「どうなっておる!食料調達の道を断ち、平行して五倍近くの兵力差で一月近くも攻め続けているというのに、まだ都市壁の門一つ抉じ開けることも出来んのか!」


 齢四十を越える王家直轄地アスティース公爵領領都奪還軍総大将のアガバス・デ・グラン伯爵は焦っていた。


 ・・・くそ!目論見が外れた・・・この時期は丁度アスティース公爵領の農地の収穫期だから、この広大な農地の作物を兵糧として活用しようと考えていたのに・・・もう収穫を終えていたとは・・・・一月間五千二百もの兵を維持していた為にそろそろ兵糧が底を突く、他の領地から兵糧を調達してはいるが時間が掛かりすぎる・・・・・それに、早くこの領都を落とさねば、ワシの立場が悪くなる。王都からは早く落とせとの矢の催促だ・・・・・・それよりも、問題なのはメンドゥーサ王女が戻ってくる前にこの領都を落とせていなかった場合だ。下手をしたらワシはメンドゥーサ王女に殺される・・・


 そう考えるとアガバスは肥太ったその身をブルルと震わせる。



 一月半前、メンドゥーサ王女はアレイアス討伐部隊を引き連れて、ここ王家直轄地アスティース公爵領の領都にアレイアス王子と黒衣の魔女リサナを追ってやって来た。

 その数日後にアガバスがメンドゥーサ王女の近衛部隊と共に王家直轄地アスティース公爵領領都奪還軍を引き連れやって来たのだ。


 メンドゥーサ王女達は領都の南門を破壊し、領民に被害が出ることを恐れたアレイアス王子とリサナは領都から離れ大森林南部の森に向かった。

 メンドゥーサ王女はアレイアス討伐部隊を引き連れてその後を追っていった。


 それから、数日で領都奪還軍は領都を囲う川のような水掘を越えるために都市壁の東西南北の門に対して橋を掛ける事に成功したのだが、その間に南門の修復も済んでしまっていた。

 しかも、運が悪いことに突貫で橋を掛けた為、橋が攻城兵器の重量に耐えられず、攻城兵器が使用できなかった。


 その後、領都奪還軍は攻勢をかけるも治安軍の錬度と士気は非常に高く、この一月間一門も落とせずにいたのである。


 アガバスはメンドゥーサ王女がアレイアス王子達を追って行く時、

「アガバス、私が戻って来るまでに領都を落としておけ!」

と、命じられていた。のだが、戦いの中アガバスはその後の、

「だが、兵を無闇に死なせるな!私の近衛部隊のグランデの意見を聞き退くべき時は退け!」

という言葉を完全に聞き落としていた。


 そして、兵の疲弊度と兵糧を見てグランデはここまでに数度、アガバスに一時撤退すべきだと進言していた。が、アガバスはグランデの進言を〈臆病者〉と鼻で笑い拒絶していた。



 その時、アガバスの居る本陣の天幕に伝令が駆け込んできた。

 その伝令に対し、「何事か!」と、アガバスはイラついた声を叩きつける。


 「は!お伝えいたします。領都の南門ただ今抉じ開けました。」


 「やっとか!」

と、アガバスは不機嫌な表情をしながらも、

「第一軍は領都に入り次第西門と東門に向かい門を開け!第二軍はそのまま反乱軍を蹴散らし領主城に向かえ!北門にいる第七軍は西門へ第八軍は東門に向かうように伝えよ!西門と東門が開き次第、第一軍共々第三軍から第八軍は領主城へと攻め込め!」

と指示を出す。と、伝令は「はっ!」と応え天幕を出て行く。


 「アガバス殿、このアスティース公爵領の領都は迷宮のような作りになっている。しかも、貴方の領都奪還軍は疲弊しきっている。一門が開けたからといってこのまま無理に攻め入るのは得策ではない。無駄に兵を死なせることになるぞ!」

と、メンドゥーサ王女の近衛部隊隊長のグランデが進言する。

 「何を言う騎士グランデ殿!この領都を攻め始めて一月、やっとの思いで開いた門だぞ、ここで退けるわけが無いだろう!」

と言って、アガバスはグランデの進言を拒否する。と同時に、

「メンドゥーサ王女の近衛部隊はこのまま本陣の守備に就いていて頂く。宜しいか?グランデ殿。」

と、尋ね口調ではあったが有無を言わさぬ雰囲気を纏いアガバスはグランデに言う。


 ・・・・・。


 「ああ、この本陣の守備はメンドゥーサ様から命じられているからな。」


 そう言うとグランデは天幕の出入口を乱暴に開き外へと出ていった。


 フン!「下級貴族の小倅が!メンドゥーサ王女の近衛部隊とは言え、平民までもが混じっている部隊の隊長風情が!偉そうに差し出口をたたきおって!」

と、そのグランデが出ていった出入口に侮蔑の視線を向け、アガバスは吐き捨てるように言う。

 「全くですな・・・中には我らガーディン教の主神ガーディン様を信奉しない者もいると聞きます。」

と、アガバスの後ろに控えていた従軍神官のメノースがアガバスに声を掛ける。

 「アガバス様、奴には気を許してはなりませんぞ。」

 「分かっておるわ。」




 「シューリエ!」

 「はい!隊長。」

 「何時でも撤退できるように準備だけはしておけ、と皆に伝えろ。」

 「はい!」

 「それと敵の襲撃にも備えろと伝えておけ。」

 「・・・わかりました。」


 グランデはアガバスのいる天幕を出ると、外に控えていた腹心の部下であるシューリエを呼び、近衛部隊に撤退の準備と敵の襲撃に対する備えをするように指示を出す。


 ・・・この戦、負けたな・・・領都奪還軍の兵達は皆疲弊しきっている・・・守りの要の一つ都市壁の門が開いたことにより、領都奪還軍の者達は殆どの者が攻めることに気を取られ、身近な危険性にも気付きにくくなっているだろう・・・下手をすれば、反乱軍が何もしなくてもアスティース公爵領の住宅街の迷宮で自滅する可能性さえ有る・・・だが、俺ならば例え何もしなくても勝てる戦だとしても、自分の守るものを踏みにじられるような事をされては黙っていられないだろうな・・・恐らく、あの人もそうだろう・・・だが、本陣の守備には俺達メンドゥーサ様の近衛部隊五十と、グラン伯の私設騎士団五十が就いている・・・さて、どう出てくるか・・・


と、グランデは考えながら、


ォォォォォ‥‥‥‥‥


という獣の遠吠えを遠くに聞き、今にも泣き出しそうな雲天どんてんを仰ぎ見る。


 ・・・この天気・・・吉と出るか凶と出るか・・・




 南と東西の門が開き、王家直轄地アスティース公爵領領都奪還軍は領都に雪崩れ込んだ。


 その領都奪還軍の兵の殆んどが・・・こんな戦い早く終わらせて、家に帰るんだ・・・という思いで必死に剣を振るっていた。



 ウラヌス王国では前王シルベウスが倒れ、その後を継いで第二王子のカイルスが王位に就いて一年。


 シルベウスは王位に就くと同時に、その権威と権力により中央や各領地の政界に強い影響力を持ち、その力により国民からありとあらゆる物を搾取し苦しめていたガーディン教をあらゆるまつりごとから追い出していた。

 だが、カイルスが王位に就いて直ぐガーディン教は力を戻し再び国民から搾取を始めていた。


 この一年、ガーディン教の影響で政は乱れ始め、生活に困窮した者が多く現れ始めた。

 そんな者達をアガバスが食料を餌に掻き集め王家直轄地アスティース公爵領領都奪還軍に仕立て上げたのだ。


 都市壁や防護柵の外に出れば危険な獣や魔獣が跋扈ばっこする世界である。

 農民でも身を守るために剣を振ることは出来た。が、少し訓練しただけのそんな寄せ集めの軍隊で士気が高くなる訳がなく、領都を攻め始めて半月程たった頃には食料の支給も僅かとなり奪還軍から逃亡する者が現れ始めた。


 そんな中、グランデが止めるのも聞かず、アガバスは捕まえた逃亡兵を全て見せしめの為に斬首した。

 アガバスは恐怖で兵達を縛り付けたのだ。



 奪還軍は住宅街に入ると各軍とも道幅に合わせて複数の部隊に分かれた。

 ある部隊は敵兵を補足しそれを追い。

 ある部隊は領主城を目指して進軍した。

 この時既に、奪還軍の殆どの者が空腹や疲れで正常な判断が出来ない状態になっていた。

 そんな状態で迷宮のようになったアスティース公爵領の住宅街に入ったのだ。

 どの部隊も高い壁に囲まれ迷宮と化した住宅街に入ると直ぐに視覚と平衡感覚に異様な感覚を覚える事になる。


 視覚的には上り坂なのに平衡感覚的には下り坂になる坂道でドミノ倒しになる部隊が多発し、同じく錯覚を利用した騙し絵のような壁の建て方に突然現れたり消えたりする道や壁に錯乱する兵も多発した。


 「くそ!ここも行き止まりか!一体どっちに行ったら領主城に辿り着けるんだ!」

 ・・・・。

 「お、俺、聞いた事がある・・・黒衣の魔女が住まうアスティース公爵領に入り込んだ悪意のある者は黒衣の魔女の迷宮にはまり生きては出て来られない、と。」

 「バッ!縁起でもないこと言うな!」

と、行き止まりに突き当たった領都奪還軍の一部隊の者達が話していると、


バシャッ!!

「「「うお!?冷て!!」」」

ガラララ!バン!!


と、頭の上から黒い水を掛けられた。と同時に、行き止まりの道の入口が巨大で頑強そうな木造の戸で閉じられ、

「ようこそ、黒衣の魔女の迷宮に。」

と、頭上から声が掛かる。


 「おい!この臭い、燃える水じゃないか?」

と、奪還軍の兵達が不安の声を上げる。

 「その通り、焼け死ぬか武装を解除して投降するか、好きな方を選べ!」

と、建物の上にいる治安軍の兵が火魔法を使い指先に種火を付けて言う。


 それを見て、

「わわ、待て待て!投降する!」

と、奪還軍の兵達は慌てて剣を捨て鎧を脱ぎ始めた。


 何とか正常な判断ができ進軍していた部隊の大半も住宅街の迷宮に填まり込み、治安軍に各個撃破されていた。


 そんな中、

「お、降り始めたな。今朝方はそんなに降らんかと思っていたが・・・この雲だと、じきにこの地方名物の滝雨になるぞ。」

と、空全体に立ち込めた黒雲からポツリポツリと落ちてくる水滴を肌に感じ、アランはそう呟いた。

 「大将、今の状況だと大将がわざわざ危険をおかす必要性を感じないんですが?じきにこの領都に雪崩れ込んできた敵軍は全員投降するように思われるのですが。」

と、カメロが疑問を口にすると、

「例え、何もせずに戦に勝てても、理不尽に攻められ領民の生活と生命が危険に晒されたのだ。敵軍の指揮官を無傷で帰しては俺の気が収まらん!」

と言って、アランはリサナから貰った名槍、魔法槍【豪雷の槍】を振るう。と、ブウウウン!と蒼白い雷光を纏った【豪雷の槍】は光の尾を引く。


 アランとカメロが話をしているうちに雨脚が強くなり、直ぐにバケツをひっくり返したような降り方になる。

 そして、隣で話している人の声も聞き取り辛くなる。


 「よし!野郎共行くぞ!!」

と、アランは声の限りに叫んだ。




 「アガバス殿、今回の戦いは我らの敗けだ。直ぐに撤退を。」

と、大雨の中から天幕に入って来たグランデがアガバスに進言する。

 「何をバカなことを、この程度の雨で撤退など出来るか!」

 「恐らく、この領都に・・・いや、黒衣の魔女の迷宮に入っていった者達は殆んど戻っては来れまい。」

 「黒衣の魔女の迷宮だと。はっ!そんな噂話など貴様は信じておるのか?」

 「アガバス殿はこのアスティース公爵領の領都に入ったことはあるのか?」

 「・・・いや、ないな。」

 「俺は公用で二度ほど有る。その時は衛士に先導され領主城まで行ったが・・・あれは本当に住み慣れた者でなければ迷い込んで出られなくなる。住み慣れた者でさえ、たまに迷うと言っていた。そんな所に精神的に負荷がかかり疲労が溜まっている者が入れば確実にその迷宮に迷い込む。」

 ・・・・。

 「そんなバカな・・・。」

と、アガバスとグランデが話していると、

「失礼します。」と言って、シューリエが天幕に入ってきてグランデに耳打ちする。


 「来ました、蹄の音が三十ほど聞こえるとのことです。」

 「分かった。」


 シューリエはグランデの返事を聞くと直ぐに天幕を出ていく。


 「アガバス殿、敵がこの本陣に向かって来ているようです・・・この豪雨はこの時期に降るこの地方独特のものだと聞いた事があります。しかも、アスティース公爵領の治安軍の者達はこの豪雨の中でも自由に戦えるように鍛えられているそうです。貴方の私設騎士団はどうでしょうかね。」

と言って、グランデは天幕を出ていく。


 そのグランデの後ろ姿を見送り、

「ふ、ふん!青二才が、臆病風に吹かれおって!この豪雨の中誰が奇襲など掛けるものか。」

と言いながらも、アガバスは顔を青ざめさせていた。


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