拾玖
アトース達はカレンと別れ通路を進んで行くと、少し行った所に部屋の扉を発見する。
その辺りから、通路の両側にポツリポツリと部屋の出入口である扉が見られるようになった。
アトース達は、その部屋を一つ一つ警戒しながら慎重に調べていく。が、アトースは微妙に違和感を感じ始めていた。
・・・何だかおかしい・・・この違和感は、建物の中に全く罠が仕掛けられていないからか・・・それとも、奥に進むにつれて何か嫌なものを感じるせいか・・・
と、考えていると、一つの扉が目に入った。
その扉には、{{治療室}}という看板が掛けられていた。
アトースは中に人の気配がないか警戒しながらその扉を慎重に押し開き中を覗き込む。と、その部屋の奥にある仕切りカーテンの隙間からベッドが見え、そこに誰かが寝ているように見えた。その時、
『〈〈アトース!アルテミスの第三王子だ!〉〉』
と言う、ファーラスからの部隊内思考通信が入る。
アトースが部屋を覗き込んだ時、そこから随分と離れた部屋からアルテミス王家の第三王子が顔を覗かせたのをファーラスが見つけたのだ。
第三王子もアトース達に気が付くと、一目散に逃げていく。
それを見たファーラスはアトースに【金環】を使って部隊内思考通信を送ると、アルテミス王家の第三王子を追うために駆け出していた。
『〈〈待て!ファーラス!一人では危険だ!〉〉』
『〈〈大丈夫だ!異邦人の力を持たないアルテミス王家の者達など私一人で十分だ!〉〉』
ファーラスはアトースの制止を聞かず走っていってしまう。
・・・チッ!ファーラスの奴・・・まぁ、確かに黒衣の魔女や黒髪の男でもないかぎり大丈夫か・・・嫌な感じはするが・・・私にはシャドーのような感知能力は無い・・・恐らく、敵地のど真ん中にいるせいでそう感じているだけだろう・・・
と、アトースは考え、
「サディは私といなさい。」
と、アトースは自分の後ろにいるサディに声を掛ける。と、
「はい。」
と言う返事が帰ってくる。
その返事を聞くと、アトースは{{治療室}}の中へと、周囲を警戒しながら入っていく。
その頃、神殿のような建物(天魔宮)の外でアルテミス王家の者達が逃げたしてこないか見張っていた、西側を見張っているウィードと東側を見張っているミーリスは、それぞれその神殿のような建物(天魔宮)の中腹辺りから誰かが顔を覗かせ辺りを窺っているのに気が付く。
ウィードとミーリスは、何者が顔を除かせているのか確認するために、それぞれ音も無くその場所へ向かってゆっくりと移動する。と、その者達もウィードとミーリスに気が付いたのか、慌てて神殿のような建物(天魔宮)の中へと逃げ込んで行く。その時には、ウィードとミーリスはその者達が何者かその顔を確認していた。
『〈〈アルテミス王家の第二王妃を確認した。後を追う。〉〉』
と、ウィードが【金環】を使って部隊内思考通信を送ると、
『〈〈こちらもアルテミス王家の第三王妃を確認した。後を追う。〉〉』
と、ミーリスも【金環】を使ってアレイアス+アルテミス王家暗殺部隊全員に部隊内思考通信を送る。
そして、ウィードとミーリスはアルテミス王家の第二、第三王妃を追って天魔宮の中へと突入していった。
同時刻、天魔宮南の出入口で異邦人の魔力を天魔宮に殆んど吸いとられ本来の金髪碧眼の姿に戻っていたシャドーは、地に腰を下ろし壁に背を預け満天の星空を眺めながらカレン達の任務完了の報せを静かに待っていた。
「いい星空ですね。」
突然、声を掛けられたシャドーはビクリと体を震わせ、その声のした方へ顔を向ける。そして、その人物を確認すると表情を険しくする。
シャドーは身動きが取れない訳ではなかった。が、我が身よりも仲間達がどうなっているのか、事態を把握する事を優先させる。
『〈〈カレン隊長・・・・カレン隊長聞こえないか?〉〉』
・・・。
『〈〈メンドゥーサ様・・・・〉〉』
シャドーはカレンとメンドゥーサに、なけなしの異邦人の魔力を使い連絡を取ろうとしたが返事はなかった。
・・・既に【金環】の思考通信波を乗っ取られているか・・・・・・だとしたら、あの黒髪の男に見事に我等は嵌められた事になるな・・・
と、現状どういった事態になっているのか大体の予測のついたシャドウは頭に嵌めた【金環】を片手で外すと、ハァ、と一つ息を吐き、
「確かに、今生最後に見るには最高の星空だ。」
ふふ・・「諦めが早いですね。」
・・・・・。
「アルテミス王家第一王妃に見えるが、お前、この異邦人の遺跡の守護者だな。」
・・・。
「やはり、最初に貴女を無力化しておいて正解だったようですね。異邦人の力を失った状態で私の正体に気が付くとは、大した感知能力です。」
フン!「お世辞はいい・・・私が黒髪の男の漏らした情報を鵜呑みにして、確りと情報の裏をとらずにメンドゥーサ様に伝えた結果、メンドゥーサ様達を危機的状況に陥らせたのだ。私は万死に値する。」
と、シャドウは言い奥歯に仕掛けられている毒を噛み砕き飲み込もうとした時、不意に目の前が暗くなり意識を失う。
「申し訳ありませんが、貴女を死なせる訳にはいかないのです。誰も死なせるな、というのが我等がご主人様のご命令ですから。」
と、意識を失ったシャドウに話し掛けながらアルテミス王家第一王妃は光に包まれその姿を猫系メイドに変えて、「これで、二人ですね。」と、呟いた。
アルテミス王家第三王子は逃げ出すと、直ぐ近くの通路が二つ交わった角を右に曲がった、ファーラスもそれを追って右に曲がり足を止める。
・・・おかしい、もうすぐ手が届く所まで追い付いていたのに・・・角を曲がったとたん第三王子の姿が消えた?・・・
ファーラスの曲がった先は部屋の扉も何もない、ただの壁に囲まれた通路があるだけだった。
ファーラスは周囲を警戒しながら壁に何か仕掛けがないか注意深く探りつつ歩いていく。と、
・・・!?・・・
いきなり後ろから誰かに抱き竦められ心臓が飛び出したと思うほど驚いた。
・・・バカな、警戒していたというのに、全く気配を感じなかったぞ・・・
と思いながら、後ろに目をやるとファーラスに抱き付いていたのはアルテミス王家の第三王子だった。
・・・バカめ、自ら殺されに来たか・・・
と思い、ファーラスはその束縛を解こうとする。が、
・・・なに?・・・か、体が動かない・・・
と思うと、ファーラスの体を抱き竦めている第三王子の手がファーラスの体を舐めるように弄り始める。と、ファーラスの足下に魔法陣が浮かび上がり、ファーラスは全身から魔力が吸い上げられていく感覚を覚えると同時に頭の芯が痺れるような快感を感じ、
「ひっ・・・ぃやあぁあああ!や、やめろ、やめっ!てぇえええーーーー・・・ぁあ゛っ!おっぉぉんっ!んんあっ!あっ!あっーーーっ!!!」
と、甘い絶叫を残して気を失った。
そのファーラスを優しく床に横たえさせると、「ご馳走さまでした・・・これで三人。」と、第三王子は猫系メイドに姿を変え呟く。
同じ頃、ウィードとミーリスもファーラスと同じように目に遭い果てていた。と同時に、アルテミス王家の第二、第三王妃に化けていた猫系メイド達はその人数を数え上げる。
アトースは室内のベッドで横になっている人物以外に人がいないことを確認すると、その部屋の奥にある仕切りカーテンに近付き、その奥のベッドに横になっている人物を確認する。
・・・見つけた、リサナ姉様を唆し私達を裏切らせたアレイアス王子だ・・・
と、その人物がアレイアス王子であることを確認すると、アトースは仇でも見るような憎しみの籠った目で睨み付ける。
そして、
『〈〈メンドゥーサ様、アレイアス王子を発見しました。殺害許可を・・・〉〉』
と、アトースが【金環】を使ってメンドゥーサにアレイアス王子の殺害許可を求める。すると、
『〈〈待て!・・・〉〉』
という返事がメンドゥーサから戻ってきた。
・・・やはり、裏切り者の異母兄とはいえ父親の同じ兄妹・・・流石のメンドゥーサ様でも殺害は躊躇されるか・・・
と、アトースがメンドゥーサの想いを慮っていると、
『〈〈・・・いや、いい、せめて苦しまぬように一思いに殺してやってくれ。〉〉』
と、メンドゥーサから殺害許可が下る。
それに対し、『〈〈了解しました。〉〉』と、アトースは返し腰に差した剣を引き抜き、その切っ先をアレイアス王子の左胸に当て剣を垂直に立てる。次の瞬間、アトースは一息にその切っ先をアレイアス王子の左胸に突き下ろす。が、その時には、そこにアレイアス王子の姿は無く、アトースの剣は誰もいないベッドを貫いただけだった。
・・・バカな!確かにアレイアス王子は居た筈だ!・・・魔力や気配もあった、《投影》の魔法ではなく、アレイアス王子はそこに存在していた筈だ!・・・
と、アトースが混乱していると、
「きゃっ!」
と言う、サディの小さな悲鳴が後ろから聞こえてきた。
その悲鳴に、アトースが振り返ると・・・!?・・・目の前に痩せ痩けたアレイアス王子顔があった。
アトースは心臓が爆ぜそうな程驚き、そのアレイアス王子の目と目が合うと不意に目の前が暗くなり意識を失った。
そのアレイアス王子はアトースが気を失ったのを確認すると、その姿は光に包まれ執事姿の猫系美女インドーラへと姿を変える。と、
「誠に申し訳ありません。私は妹達と違い同姓を愛でる趣味は御座いませんので、ただ単に気を失っていただきました・・・」
と、気を失ったアトースに頭を下げつつ、
「・・・この二人でこの天魔宮に入り込んだネズミ、七人全員ですね。」
と、インドーラは一人呟き、
「《我が主の命により異邦人の里の守護精霊インドーラが命ずる、異邦人の里の魔法システムよ、その全の機能を目覚めさせよ!》」
と、インドーラが魔法システムの起動命令を唱えると、天魔宮から魔法システムの魔法陣の光が異邦人の遺跡全体に広がっていく。
それにより、崩れかけていた遺跡の建物達が急速に再生し始めて、異邦人の遺跡は本来の異邦人の里の姿へとその姿を変えてゆく。
「後はご主人様の奮闘次第ですね。」
インドーラは、本来の姿に再生した天魔宮の屋上に転移し、満点の星空を仰ぎ見ながらそう呟いた。
・・・げっ、バレた?・・・
大介はメンドゥーサの気配の変化を感じ取り、自分達の謀に気付かれたことを悟った。その時、大介の持つ杖の青い点と赤い点が一緒に点滅する。と同時に、
・・・青い点の点滅、と・・・赤い点の点滅・・・ということは、やはり・・・中に入った者達は全員捕らえたが、同時にメンドゥーサ達にバレた、か・・・
と思いながら、大介は、くおぉぉぉーー・・・と、御雷真明流に伝わる特殊な呼吸法を使い瞬間的爆発的に闘神気を高め一気に身体の芯に圧縮し閉じ込めると共に気配を消す。同時に、今まで大介を激しく攻め立てていた周りの者達の気配も変わる。その時には、大介は目の前に居た二人の懐に入り一撃を加え昏倒させる。と同時に、腰のポシェットから一センチ程の金属の玉を一つ取りだし右手の親指で弾く。と、大介の左側に居た、踵を返し走り出そうとしている者の膝をその闘神気を纏った金属の玉は骨ごと貫く。と、その膝を骨ごと撃ち抜かれた者は転倒し撃ち抜かれた膝を抱え七転八倒する。
大介は指弾を撃つと同時に、少し下がりながら、しゃがみ込むようにして右足を伸ばし右回転で円を描くように光速の蹴りを出し、大介の右側にいた者と後ろにいた者の足を払い飛ばし転ばすと、その回転の勢いを利用して右に跳び右側にいた者の溝尾に蹴りを入れ気絶させ、立ち上がろうとしている後ろにいた者の顎に蹴りを入れ気絶させる。
・・・チッ!メンドゥーサともう一人、逃したか・・・
と、考えるよりも早く、ドン!!と、大地と空気を震わせ超加速して大介はメンドゥーサの後を追っていた。と、少し離れた所を少女が猛スピードで走っているのが目に入る。大介は走りながら小石を拾うと、その少女の足に向けて投げる。その小石は走っている少女が上げた足を地に下ろそうとし始めたところに、ボッ!と足の裏を掠めその小石は砕け散る。その衝撃に少女はバランスを崩し転倒し数回転げて止まった。それを横目で確認しながら大介はメンドゥーサを追う。
メンドゥーサは神殿のような建物の脇から、あっという間も無く異邦人の遺跡の端に着いていた。が、そこで一瞬メンドゥーサは動きを止めた。そして、
・・・なっ!?いつの間に・・・
と、その目の前にある物に数瞬絶句する。が、直ぐ様、その手に持つ神殺しの雷の剣に力を込めて右下段から袈裟懸けに鋭く振り上げ《大神の雷霆》よりも数倍強力な雷を纏った真空の刄を生じさせ、目の前にある異邦人の遺跡をぐるっと囲っているだろう高さが数百メーターは有りそうな山のような垂直な壁を両断する。が、その壁の向こうから、
オオオオオ・・・・・
オオオオオ・・・・・
と、獣の遠吠えが聞こえてきたかと思うと、瞬時に、その両断された巨大な壁が再生していく。それを見て、
チッ!・・・シャドウの報告にダイスケという異邦人は二匹の犬を連れていた、というのがあったが・・・・まさか地の精獣の子だったとは・・・・ははは、これでは勝てる訳がない・・・ここまでうまく情報を利用されては・・・・いや、違うな・・・これは間違いなく私の判断ミスだ・・・
と、メンドゥーサが完全に動きを止めた時、
「もう、逃げるのは諦めたのか?」
と、後ろから声が掛かった。
そして、足元に異邦人の里の魔法システムの光が満ちる。
「ああ・・・完全に異邦人の遺跡の魔法システムも立ち上がったようだしな・・・私達の完敗だ、他の者達も全て捕まったのだろう?」
「ああ、その筈だ・・・少なくとも、俺の相手をしていた者達は完全に動きを止めておいたから、今頃俺の仲間が縛り上げている頃だろう。」
「そうか・・・ならば、せめて貴様の命だけでも頂いておこう!!」
と言って、神殺しの雷の剣を右下段に構える。
「ほぉ、まだやろうと言うのか?面白い相手になろう・・・」
と言い、大介は杖をゴッ!と大地に突き立て、利き腕でない左手で小太刀の柄を持ち小太刀を引き抜く。と、ぶらりと下に下げ、
「・・・今度は本気で相手をしてくれるのだろうな・・・さっきまでは他の者達と連携を取るために力を押さえていただろう?」
「その言葉、そのまま貴様に返そう。貴様はこの前といいさっきといい全く本気では無かったであろう。」
と、メンドゥーサは油断無く大介を睨み付け、ジリジリと左に移動しながら言う。
それに対し、大介はそのメンドゥーサの動きを目だけで追い、
「そんな事は無いぞ。俺はどんな相手でも相手に合わせた力で本気で相手と対峙している。」
と、子供のように二ッと笑って言う。
「・・・・ふざけおって!貴様は知らんのか?それを手抜きと言うのだ!!」
と、メンドゥーサは大介をその眼力で殺すと言わんばかりに睨み付ける。
「・・・・ならば、俺の本気の本気、もう一刀の小太刀を抜かせてみるか?・・・それが出来たら貴様を見逃してやってもいい。」
と、右手でもう一振りの小太刀の柄をボンポンと叩いて、本当に楽しそうに笑って大介は言う。
・・・・・・。
「いいだろう、望むところだ!」
と言うが早いか、右下段に構えている神殺しの雷の剣を右下から袈裟懸けに大介に切りつけようとメンドゥーサは動こうとした。が、一瞬早く大介が小太刀を持った左手はダラリと下げたまま、メンドゥーサに対して左半身となり右手は右の腰に差した小太刀の鞘の口付近を持つようにして立つ。そして、大介は笑顔のままでその視線は柔らかく、一点に集中するのではなくメンドゥーサの姿全体を眺めていた。
メンドゥーサはその大介の立ち居姿と目を見ただけで動けなくなってしまった。
・・・一体なんだ?何故動けない?・・・隙だらけの奴からは殺気どころか気配さえ感じないというのに・・・気配を感じない?・・・バカな奴は闘気を放っている筈だ・・・・それを感じさせないというのか?・・・・・一体何なんだ!・・・
と、メンドゥーサは困惑しながら嫌な汗が全身からジワリと滲み出すのを感じる。
対して、大介はその笑みを深めて、
「どうした?来ないのか?」
と、弟子にでも声を掛けるような語調でメンドゥーサに声を掛ける。
「嘗めるな!!」
と、メンドゥーサは吠えると、
「《我は雷の剣なり、我は神をも打ち倒すものなり!》」
と、防御を完全に捨て自身を神殺しの雷の剣に変える攻撃に特化した魔法の呪文を唱えた。瞬間、
カッ!!!!
と、その身を雷に変えたメンドゥーサが大介を襲う。が、大介はその場を動かず、雷と化したメンドゥーサの斬撃を左手で持つ闘神気を纏った小太刀を肘を軸に円を描くように振るい、
カッ!カッ!!カッ!!!
ドッッッゴゴゴゴゴーーーー・・・・!!!!
と、その全て受け流す。その受け流された雷の余波が大地を抉り吹き飛ばした。
「もう終わりか?」
と、大介は左手で持った小太刀で自分の左肩をトントンと叩きながら楽しそうに言う。対して、メンドゥーサは神殺しの雷の剣を大地に突き立て、杖代わりにして両手で体を支え肩で息をしながら、
・・・バカな!・・・あれで私は黒衣の魔女から三本中一本は取れていたのだぞ・・・・・それを、こうもあっさりと受け流されようとは・・・
と、考えていると、
「次は、こちらから行くぞ。」
と、大介は言い、先程のメンドゥーサの動きと比べると無駄の無い滑るように滑らかな動きだが、スローモーションのようなゆっくりとした速度で大介はメンドゥーサに近付き、その左手に持った小太刀をメンドゥーサの脳天に降り下ろす。
・・・バカにするな!そんな、亀のようなスピードで、この私を斬れるとでも思っているのか?・・・
と、メンドゥーサは思い躱そうとする。が、・・!?・・その瞬間、メンドゥーサはその小太刀の刃が巨大に見え、何処に如何躱そうがその刃が自分を脳天から両断する想像しか出来ず足が竦み身動きが取れなくなる。と同時に、メンドゥーサはその小太刀に一瞬にして両断され意識を失った。
だが、メンドゥーサは自分の血の海には沈んではいなかった。
何故なら、大介が振り下ろした小太刀から放たれる何ものをも両断するような鋭く強烈な気によりメンドゥーサは小太刀に両断されたと思い込んだだけで、実際には大介が小太刀の刃がメンドゥーサの脳天に当たる直前に刀身をひっくり返して峰の方でメンドゥーサの脳天を強打したに止めた為だった。
「よし!これで全員捕らえたな!」
脳天を小太刀で強打され、気を失い倒れかけたメンドゥーサを抱き止めた大介がそう言うと、
「ご主人様、お見事で御座います。」
と、後ろからインドーラが尊敬の念を込めた声音で大介に声を掛けた。
「・・・見てたのか?」
「はい。ご主人様の勇姿をしかとこの目と、この異邦人の里の魔法システムのライブラリに焼き付けておきました。」
と、インドーラは心底嬉しそうな顔をして言う。
そんなインドーラに対して、大介は、
「そんな事せんでいい!消せ!」
と、心底嫌そうな顔をして言うと、
「何故ですか!こんなに綺麗に撮れたのに!」
と、インドーラは初めて大介に対して反抗的な態度を取って、今さっき撮ったばかりの撮りたてホヤホヤの画像を各場面毎に区切った画面で空一杯に映し出す。
しかも、各画面毎に凝った音響効果を付けて・・・・
「やーー・めーー・ろーーーー!!」
それを見て流石の大介も恥ずかしさの余り、地に頽れていた。
今回の戦いで大介に唯一ダメージ(精神的に)を与えたのはインドーラであった。
その後、ティアとメルティスのたっての希望で天魔宮の一室で、その上映会がも催されたのは言うまでもないだろう。