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Noble Desire  作者: 蓮
第1章 逃げ出した少年
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無謀

「リューゲルや」


「はい」


「お前はどう考える?」


そうだな…。

正直金貨100枚ずつの支払いなら3年分以上余裕で払える。

しかしそれをしたところで何だというのか。

村全体で盗賊の恐怖に怯えながら、

これから先暮らして行けと言うのか。

この村には子供もいるし、若い女性だっている。

奴等はああ言っていたが、身の安全は保障できない。

ならば。ならばどうする。


「…直近で払わねばならない金貨100枚に関しては、

 私が立て替えましょう」


「先生!それは!」


ダインさんを手で制し、話を続ける。


「だがそれでは、何の解決にもならないでしょう」


「そうじゃな」


「恐らく彼等は今後どんどん増長し、

 要求も果て無く上がっていくと考えます」


「うむ」


「こちらから打てる手としては、王都へ要請し、

 派兵して頂く事ぐらいかと思われます。

 しかし連中が目を光らせている以上、

 それは叶わないものと思われます」


「結局、打つ手はないのね…」


ダインさんとアマンダさんは揃って肩を落とす。

村長は考え込んでいるようだ。

そもそも、要請したところでこんな辺境の村に、

兵士たちがすぐ派遣されるとは思えない。

前線を維持するか、辺境の村3つを見捨てるか。

王としては考えるまでもないだろう。

大事の前の小事と切り捨てられるに決まっている。

だからと言ってこの状況は看過出来ない。

この村以外にどの程度吹っかけてるのか知らないが、

村人たちの生活を圧迫している事には違いないのだから。

さて、どうする。

俺は、どうするべきなのか。

4人とも考え込んでいると、扉が勢いよく開かれた。


「そ、村長!大変だ!」


「何事かね?」


「ターニャとブレッドが…!」


嫌な予感が、した。


「盗賊たちの所に行っちまったんだ!」





俺は今、森を駆け抜けている。

どこで知ったのか知らないが、

二人は盗賊の拠点に向かってしまった。

何と言う無謀。

抗議でもしようと言うのか。

そんなものが通じる相手ではない!

何故、そんな事が分からない!?

…当然だ。

そんな事は、教えていない。

俺は、自身の平和ボケを呪う。

彼等は、話し合う事が出来ると思ったのだろう。

年端もいかぬ子供たちには手を上げぬだろうと。

あんな連中にそんな理屈は通じない。

俺は嫌と言うほど知っている。

頼む。

頼むから。

二人とも無事であって欲しいと願いながら、

俺は盗賊たちの拠点を目指した。








「村を襲わないで下さい。お願いします!」


ターニャが盗賊に向かって頭を下げる。

それを聞いた盗賊は笑う。


「ははははっ!お願いされちまったよ!」


「金貨100枚を毎月なんてあんまりです!

 せめて、せめてもう少し…!」


「くくっ嬢ちゃん」


盗賊の一人がターニャのすぐ前に跪く。


「嬢ちゃんは度胸がいいなぁ。

 村で切りつけた奴らは怯えるだけだったぜ」


そう盗賊が言うと、後ろの少年は食ってかかった。


「お前が父ちゃんに怪我させた奴か!」


「あぁ?だからどうした?」


「父ちゃんは俺と母ちゃんを守ってくれるんだ!

 お前なんてやっつけてくれる!」


「は…ははははは!そうか、そうか。

 良かったなぁ、坊主。

 あんな情けない奴に俺が倒せるとは思えないけどな!」


「と、父ちゃんを馬鹿にするなぁ!」


ブレッドは飛び出して盗賊に殴りかかる。

止めようとターニャは動くが、間に合わない。

殴りかかったブレッドを容赦なく盗賊は蹴り飛ばした。


「ブレッド!!」


ターニャが悲痛な叫び声を上げた。

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