表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Noble Desire  作者: 蓮
第1章 逃げ出した少年
1/55

プロローグ

 俺は兵士だ。

 自慢するわけではないが、それなりに強い。

 戦って、戦って、また戦って。俺は戦い続けた。

 戦いの中、俺の周囲にいた人間は徐々に数を減らしていった。

 だが、俺は生き残り続けていた。

 それが俺が強いからなのか、あるいはただ運がいいだけなのか、はたまた何か別の要因があるのか、俺には分からない。

 俺たちは戦う。

 好きな人の為に。

 護りたい人々の為に。

 救いたい人々の為に。

 国を変えるために。

 自分の目的や欲望の為に。

 戦う理由は人それぞれだ。


 俺にだって色々と理由があった。戦うべき理由、いや、戦わなくてはならない理由が。でも今は理由なんて心底どうでもいい。

 あの時、全てが変わった。俺はあの時気づいた。気付いてしまった。全ては俺の自己満足だったと。そして俺は戦う理由を無くした。だから、もう俺の戦いは終わりだ。


「待って!行かないで!」


 戦わない兵士など価値はない。ここには俺の居場所は無い。

 もうここは、俺が居るべき場所では無くなった。


「貴方が必要なの!戻って!」


 何も聞きたくない。

 何もしたくない。

 帰ろう。

 どこへ?

 あぁ…そうだ。

 俺は帰る場所さえ無くしたのだった。

 でもそれさえ今はどうでもいい。

 全部、捨てて行こう。

 そしてどこか遠くに行こう。


「嘘つき……」


 嘘つき、か。そうなるのかな。丁度いい。俺にぴったりだ。

 今日からそう名乗る事にするか。

 それでいい。

 どこか遠くに行こう。


「世話になったな。さよなら、皆」






―――――三年後 



 目が覚めた。あの時の夢は度々見ていた。全て捨てて、あの場所に置いてきた筈なのにな。人間やはりそんな簡単に全て忘れられたりはしないらしい。それとも俺自身、自分で理解していないだけで、未練や後悔が残ってしまっているという事だろうか。

 馬鹿馬鹿しい。もうこの事を考えるのはやめだ。最早俺には関係の無い事なのだから。

 今俺は辺境の小さな村に居を構えている。そこで畑を耕し、家畜を育て、子供たちに勉強を教える。それが今の俺の生活。

 当初誰とも関わりたくなかった俺は、自給自足をする事で独りで生活していこうと考えた。だがそれは簡単ではなく、考えが甘かったことを思い知らされた。結局は街の人々の助力を得て、安定した生活を送れるようになるまで半年もかかってしまった。

 予定は違ってしまったものの、今はこれで良かったのかもしれないと最近考えるようになった。俺はベッドから体を起こし、カーテンを開ける。


「…っ、眩し…」


 快晴だ。時間は…7時。


「さて…と」


 さっさと朝食を食べて、始めますか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ