プロローグ
俺は兵士だ。
自慢するわけではないが、それなりに強い。
戦って、戦って、また戦って。俺は戦い続けた。
戦いの中、俺の周囲にいた人間は徐々に数を減らしていった。
だが、俺は生き残り続けていた。
それが俺が強いからなのか、あるいはただ運がいいだけなのか、はたまた何か別の要因があるのか、俺には分からない。
俺たちは戦う。
好きな人の為に。
護りたい人々の為に。
救いたい人々の為に。
国を変えるために。
自分の目的や欲望の為に。
戦う理由は人それぞれだ。
俺にだって色々と理由があった。戦うべき理由、いや、戦わなくてはならない理由が。でも今は理由なんて心底どうでもいい。
あの時、全てが変わった。俺はあの時気づいた。気付いてしまった。全ては俺の自己満足だったと。そして俺は戦う理由を無くした。だから、もう俺の戦いは終わりだ。
「待って!行かないで!」
戦わない兵士など価値はない。ここには俺の居場所は無い。
もうここは、俺が居るべき場所では無くなった。
「貴方が必要なの!戻って!」
何も聞きたくない。
何もしたくない。
帰ろう。
どこへ?
あぁ…そうだ。
俺は帰る場所さえ無くしたのだった。
でもそれさえ今はどうでもいい。
全部、捨てて行こう。
そしてどこか遠くに行こう。
「嘘つき……」
嘘つき、か。そうなるのかな。丁度いい。俺にぴったりだ。
今日からそう名乗る事にするか。
それでいい。
どこか遠くに行こう。
「世話になったな。さよなら、皆」
―――――三年後
目が覚めた。あの時の夢は度々見ていた。全て捨てて、あの場所に置いてきた筈なのにな。人間やはりそんな簡単に全て忘れられたりはしないらしい。それとも俺自身、自分で理解していないだけで、未練や後悔が残ってしまっているという事だろうか。
馬鹿馬鹿しい。もうこの事を考えるのはやめだ。最早俺には関係の無い事なのだから。
今俺は辺境の小さな村に居を構えている。そこで畑を耕し、家畜を育て、子供たちに勉強を教える。それが今の俺の生活。
当初誰とも関わりたくなかった俺は、自給自足をする事で独りで生活していこうと考えた。だがそれは簡単ではなく、考えが甘かったことを思い知らされた。結局は街の人々の助力を得て、安定した生活を送れるようになるまで半年もかかってしまった。
予定は違ってしまったものの、今はこれで良かったのかもしれないと最近考えるようになった。俺はベッドから体を起こし、カーテンを開ける。
「…っ、眩し…」
快晴だ。時間は…7時。
「さて…と」
さっさと朝食を食べて、始めますか。