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メイン攻略キャラだけど、ヒロインなんていりません!  作者: くもま
一章 向かう所敵なしのお子様、小学生篇
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37.怒涛の初体験

 こんばんは。大っ変お待たせ致しました。申し訳ありません。

 龍治とともにぐちゃぐちゃ悩んで出来あがりました37話です。

 相変わらずの文字数ですが、ご容赦下さい。


 ※この物語はR-15の鬱展開ありです。

  それをお心にとめて、お読みいただけると幸いです。

『瑛光学園』は広大な敷地を有しているが、初等科・中等科・高等科の校舎は散らばる事なく一つの区画にまとまっていた。

 生徒会・委員会・部活動などの組織の縦繋がりを大切にしている為だからなのか、隣接しているから縦繋がりを意識するようになったのかは不明であるが。中等科と高等科は渡り廊下で繋がっていて容易に行き来が出来、初等科は渡り廊下こそないが、中等科との間にある庭園を通れば五分と掛からず行く事が出来た。

 その分、高等科へ行くには中等科校舎の中を通るか、一度初等科から出て煉瓦道を歩き、高等科の正面玄関から入る必要があり少々距離がある。

 縦繋がりを意識していても、初等科と高等科は中等科が間を取り持って入る様な、少しばかり疎遠な雰囲気であった。

 だからこそ、雪乃介を始めとした現初等科生徒会も龍治自身も高等科へ注意を払っていなかった。

 中等科なら可能性はあるが、まさか高等科が首を突っ込んで来るとは思っていなかったのである。初等科生徒相手に高等科の生徒がそんな大人げない事をする訳がない、と思い込んでいたとも云う。

 故に今回の出来事は、龍治にとって大変頭が痛かった。



 *** ***



「悪い奴じゃないんだ、悪い奴じゃ……」


 今回の主犯であろう綾小路ようの存在を思い出して、龍治は唸る様な声で云う。それに対して謡の事をよく知っている柾輝と花蓮、眞由梨も同意してくれた。

 ただ、眞由梨は。


「でも良い人かって聞かれたら、あたしは首傾げちゃう」


 そう、的確な言葉も付け加えた。それに対して、今度は龍治が同意してしまう。



 綾小路謡。

 龍治の親戚はとこに当たる青年で、現在は高等科二年生だ。

 性格に少々難はあるが、特別悪い訳ではない。『瑛光学園』に在学する子女らの中で、“典型的”なお坊ちゃんタイプとでも云うのだろうか。

 庶民を見下しはするが、だからと云って虐めたり弾圧する訳ではない。――“弱い者イジメ”は『綾小路家』の人間として恥ずべき行為だからだ。

 勝負する時は正々堂々闘うが、負けても諦めない。――負けず嫌いと云えば聞こえがいいが、しつこ過ぎる感があるので、勝負を挑まれる側からは煙たがられていた。

 無神経な発言をよくするが、自分に非があると分かれば素直に謝罪する。――この点はお坊ちゃんらの中では良心的であった。ただし、分からなければ断固として謝らない。

 龍治には親切だが、時折それが行き過ぎてしまう事がある。――龍治が『綾小路家』の第一後継者であり、それに納得が行くほど優秀なので、本人としては“援護”しているつもりなのだ。


 総括すると。

 悪い奴ではないが善い人では決してなく、色々と中途半端なので扱いに困る人、となるのであった。


 血縁的に近いし、能力的には優秀な部類なのがまた困る。無碍な扱いも出来ないし、かと云って重用するには不安が残る。将来的には緩衝材になりそうな補佐を付けて、どこぞの支社長でも任せようか、と云うのが無難な所であった。

 色々な人間を扱い切れてこそ、頂点トップに立てると云うものだが。今はまだ小学生のお子様であり、この場合には前世の記憶ゼンさんもあまり役に立たないので要修業であった。

 ゼンさんが、「貴腐人に何を期待しているのかね、君は」とまるで上司のような口調で云ったような気がした。それはそうなのだが、なんだかイラっと来る。



「“基本的には”、龍治様のご迷惑にならないようにしていらっしゃるけれど……」

「今回は百パーセント迷惑を被った。どうしてくれよう」


 苦笑気味の花蓮の言葉に、龍治は犬歯を剥いて笑う。自分にしては珍しく野蛮な表情だと自覚はあるが、見ているのは隣りを歩く柾輝だけなので別にいいだろう。

 周りに居る人々が「見てはいけないモノを見た」とばかりに視線を逸らしている姿など、見えないったら見えない。


 向かう先は初等科と中等科の間にある庭園の奥まった場所である。先に向かった雪乃介がメールで武田たけだ風迦ふうかに、その場所を知らせてくれたそうだ。

 通り過ぎるだけなら気付かないし、謡とて使うだけの頭はある。人払い程度はしているだろう。『綾小路』の名があれば、この学園で通らない事は“ほとんど”無い。まさにやりたい放題だ。

 しかし同じ『綾小路』なら、直系であり次期当主である龍治の方が格上である。だからは武田は龍治を呼びに来たのだから。



 *** ***



 庭園へ足を踏み入れると同時に、人払いの役割を仰せつかっているだろう高等科の男子生徒二人がこちらへ気付いた。高圧的な表情で横暴な眼差しで「近寄るな」とでも威嚇するつもりだったようだが、すぐに龍治の存在に気付いて顔色を青くした。

 頭は悪くないようで何よりだ。

 荒々しい足取りで近付くと、わたわたと慌て出す。何か云うために口を開いたが、それより先に龍治が云い放った。


「宗吾達はこの奥だな?」


 二人は同時に首を上下に振った。それはもう、精一杯。顔色の悪さと合わせて、情けなさ全開の様である。

 小学生相手に高校生が心底怯えているのだから、事情を知らない人間が見たら何事かと首を傾げる事だろう。だが、『瑛光学園』では当たり前の光景であり、これでこの二人が龍治に歯向かおうものなら、そちらの方が一大事であった。

 年齢が上がれば上がるほど、現実認識の精度は上がって行く。『瑛光学園』の高等科ともなれば、大人とほぼ同様の状態である者も多い。

 親からの言葉だけでなく、自身の目で『綾小路家』を始めとした五大財閥の恐ろしさを悟る頃なのだから。


 それなら何故このような暴走に加担しているのかと云えば。

 首謀者が『綾小路』の傍系であった事。まさか宗吾の為に龍治自らが乗り込んで来るとは夢にも思っていなかった事、だろう。

 一生徒、それも生徒会長選挙におけるライバルである宗吾の事など、棄て置くと思っていたのだ。そう云う意味では、彼らはまだ認識が甘く、初等科と疎遠であるが故の失敗とも云えた。

 つまり、龍治の情報は上っ面だけで、身近で見ている訳ではないから見誤ったと云う事だ。

 ――まさに、龍治が恐れていた事態なのである。


(俺の甘さのせいで俺の周りに迷惑がかかったと云う典型的な話だろうこれ!)


 初等科では高等科への影響力が云々、と云う云い訳も可能だが。それでも自分へ燃え上がるような苛立ちが噴出してしまうのだった。


 その怒りを抑え切れず滲み出るどころかモロリ状態だったので、高等科の二人はもう半泣きである。別にこの程度の事で彼らに何かしようとは思わないが、これに懲りたら軽挙妄動は控えて欲しいし、やらかす謡を抑えて欲しいと思う。

 故に、特にフォローはせずその横を通り過ぎた。


「行こう。宗吾が心配だ」


 肩越しに婚約者を始めとした友人らへ声をかけると、彼女らは言葉もなく、同時に大きく頷いたのである。まるで人形のような動きだった。



 *** ***



 奥とは云っても森林が広がっている訳でも無く、小道も存在している。背の低めな木々が生い茂ってはいるが、日差しを完全に遮っている訳ではないので、今日のような晴れの日は充分に明るかった。

 これが夏なら木漏れ日揺れる素敵な小道なのだが。

 ちなみにこの庭園の木々は冬でも葉が残る常緑タイプである。秋に紅葉こうようが見たいなら、別の場所をお勧めしたい。


 そうして少し奥へ進むと、案の定云い争う声が聞こえて来た。耳の良い龍治には、一つは謡の声だとすぐに判別出来た。残りの声は武田が云った通り先行していたらしい雪乃介と、龍治には聞き覚えのない少年の声だった。

 不思議な事に、一番騒いでいそうな宗吾の声が聞こえない。それについて、龍治の背にひやりとした物が流れた。


(声が出せない状態にされてるなんて事になってないよな?!)


 厭な想像に足が速くなる。柾輝が心配するような声で龍治を呼んだが、それに応える余裕も無かった。


 開けた視界。まずは高等科の生徒五人が目に入る。見覚えのある背中が一つ。その背中へ向けて、龍治は声を上げた。


「何をしている、謡!」


 何をしているかは大体予想はつくものの、定番な言葉を云っておく。自分で想定していたよりも、固く鋭い声が出たようであった。目に見えて、五つの背中が硬直したからだ。

 すぐ様振り向いたのは、やはり謡であった。他の四人より龍治への耐性があるからだろう。


 光りに当たると金に見える茶髪が、動きに合わせて揺れる。振り返った顔は見知ったもの。

『綾小路』の一族らしく、綺麗に整った顔立ちだ。彼の場合婿入りした父親が欧米系なので、その血もよく表れていた。少し彫が深く、色素が薄いのだ。目の色も日本人のダーク・ブラウンより薄い、ヘーゼル色だった。

 身長もすらりと高いが、肉が薄い。隣りに葛定を並べたら、間違いなく頼りない印象を受けてしまうだろう。そんな、「優男」と云う言葉がぴったり合う容姿であった。


 普段から自信ありげな顔が、今は怒りに歪んでいる。それは龍治へではなく、今まで云い争っていた相手へのものだろう。

 その謡は何故か、龍治を見て“安堵した”顔になった。


「やぁ龍治。ご機嫌いかがかな?」

「さぁ? 貴方次第、と云った所だな」


 こんな場面でなければ乗ってやる所だが、今はそう云う場合ではない。

 きょとんとする謡に歩みよる。彼の取り巻き達が、一歩後ずさりした。それとは逆に、柾輝や花蓮達は龍治に倣って彼らへと近づく。顔は見えないが、各自気張った表情をしているだろう。


「こちらの質問に答えて貰おうか。何をしているんだ?」

「聞き分けのない子供達に、世の道理を説いているんだよ」

「――物は云いようだ」


 ぼそり、と云うには結構大きな声で、武田が云った。謡の目線が彼女へと動くが、余計な攻撃を武田へ加えられてはたまったものではない。ただでさえ現初等科生徒会の『綾小路』へ向ける感情は悪化していると云うのに、これ以上溝を掘られては困るのだ。

 武田女史は普段、このような場面で挑発的な事を云う女子ひとではない。決して気弱な人ではなくむしろ強気な人だが、相手を煽るような事は云わないのだ。その武田が思わずと云った様子で口にした言葉に、龍治はますます頭が痛い。間違いなく、武田の中で『綾小路』への好感は下落の一途だと察したからだ。

 龍治は溜め息をつく事で、謡の視線をこちらへと戻した。


「俺に断りなく、勝手な事をしないで貰おうか」

「君の為にしているんだ。そう邪険にしなくてもいいんじゃないかい?」

「余計な世話だと云っている」

「……随分怒ってるじゃないか。“僕のために”此処まで来てくれたんだろう? 怒りをぶつける先が違うんじゃないかな?」

「……」


 その言葉を聞いた龍治は、謡の頭の中を考えてみた。


 人間と云う生き物はどうしても、どう足掻いても、自分にとって都合の良い情報を信じやすい。こればかりは“感情の生物”である人間である以上、仕方のない事だ。年を重ねて経験を積んでも、いつの間にか、と云う事はよくある話だ。それでも経験則から自分にとって都合の悪い情報を拾う事も出来るようになる。それを怠るようでは、経験値の意味もない。

 だが年齢が若く、経験に乏しい者には難しい。自身にとって都合の良い情報だけ拾って、都合の悪い情報は“無かった事にする”なんて、往々にしてよくある事。これもまた、仕方ない事である。

 だが。情報の取捨選択に関しての責任は、年齢関係なく負うべきだろう。信じた情報が嘘であれ真であれ、“信じると選んだのは自分自身”なのだから。それを他人や環境へ押し付けるのは甘えと怠慢でしかない。


 つまり何が云いたいかと云うと、だ。今現在、謡の頭の中には彼にとって都合の良い情報しか詰め込まれておらず、それしか信じていないのだ。

 だから龍治を自分の味方だと思い込んでいる。ここに来たのは、“謡に加勢するため”なのだ、と。

 故に龍治の怒りが理解出来ない。正しく認識出来ていない。今龍治が抱く怒りを理解出来る情報を、彼は何一つ拾っていないのだ。

 例えば、龍治が宗吾を名前で呼んでいるだとか、バレンタインに友チョコを渡しただとか、そう云った交流の情報が何一つ。仮に取り巻きから得ていたとしても、彼にとっては都合の悪い情報だから適当な理由を付けて破棄したと思われる。

 そうでなければ、「龍治はじぶんの味方である」と此処まで思い込めやしないだろう。



 そこで龍治は、選択肢を思い浮かべる。

 謡をどうするべきかと云う選択肢だ。


 謡を宥めて有耶無耶うやむやで終わらせる。

 ――全員の好感度が下がる。却下。

 謡の態度を好ましくない物として、自省へと向かわせる。

 ――謡はいいだろうが、他の面子に禍根が残る。却下。

 謡の大人げない態度を叱責し、場を治める。

 ――謡からの好感度は下がるだろうが、他の面子の溜飲は下がる。


 三つ目がこの場において最も良い選択だと思えた。しかし謡を完全な悪者へ追いやってしまう冷血な選択とも云えた。

 僅かな迷いが龍治の中に生じる。確かに今回の件で謡には怒りを感じているが、それでも血縁に違いはなく、さらに相手は――傍迷惑とは云え――龍治への好意でやらかしている訳だ。

 すっぱり切り棄てるのは情が無い気がした。

 しかしそんな龍治の迷いも――謡達の背後に、ちらりと見えた宗吾の顔色の前に霧散した。


 龍治以外の人間にとっては僅か二秒。龍治にとっては熟考に値する二秒で決断した。



「貴方は何を勘違いしているんだ? 綾小路謡」



 龍治の声色が変わったと、流石に気付いたのだろう。謡は息を飲んで、視線を泳がせた。彼の周りに居る取り巻き達は、既に青息吐息である。主犯格より共犯者の方が現状理解が早いようだ。


「貴方の中の俺が一体どうなっているかは知らないがな。俺は、この手のやり口が大嫌いなんだ」

「だ、だけどね龍治。こいつは、こいつらは、我々『綾小路』に盾突く輩で」

「“だからどうした”。うちは別に独裁者じゃない。“ただの”一財閥だ。異論反論、俺は大歓迎だね。思考統一の停滞の方が唾棄すべき事態だ。そんな下らないもの、俺は欲しくない」


 予期せぬ事態なのだろう。謡は目に見えておろおろし始めた。どうして龍治が自分を咎めるのか理解出来ず、精神が安定を欠いたのだろう。

 人間は、自分が理解出来ない物へ不安と恐怖を抱く。今の謡にとって、怒りを露わにする龍治は色々な意味で理解が出来ない。


 傍から見てる分には、高校生が小学生相手に怯えていると云うシュールな光景だ。

 ゼンさんが「ぺろっ……。これは、ショタ攻め……?!」とか云い出した気がしたので、本当に今は黙っていて欲しいと意識の奥へ追い込んだ。何で腐れと云う存在は、こうも業が深いのだ。

 まぁ、余裕の表れと云えばそうかも知れないが。厭な余裕の出し方だ。


「龍治、だ、だけど」


 謡の理屈も分かる。安定した組織運営の為に、不穏の目は早めに潰すと云うのは当たり前と云えば当たり前の行為だ。

 しかし、それを行使する時と場合を選んで欲しい。

 確かに『瑛光学園』において生徒会と云う組織は重要な立ち位置にある。反勢力を押さえ込むのは平穏な学園生活の為、大切な業務の一つだ。だが、それをやるのは龍治本人でなくてはならない。龍治の指示なしで勝手にやられては、迷惑な事もある。それがこの時だ。

 特に龍治はこの生徒会選挙に対して、「正々堂々勝負をする。手出しは無用」と婚約者かれん親戚まゆり経由でお達しを出しているのである。これが無ければ謡の行動も間違いとは云い切れなくなるが、龍治がはっきり「手を出すな」と云っているのだ。それに逆らわれて良しとしてしまうのは宜しくない。龍治の水面下の目的がぽしゃってしまうのだから。


「はっきり云わせて貰おうか」


 眉間にくっきり皺をよせ、謡を睨み付けながら龍治は云った。


「――お前のやる事は全部余計な世話だ。俺の為を思うなら、すっ込んでろ」


 全面拒否を示すその言葉に、謡は餌を前に殴られた犬のような顔になる。取り巻き達など呼吸すら忘れているのではないかと云うほど、顔色が青かった。


 これでいいだろうと、龍治は心の中で呟く。悪く云ってしまえば、「頭の良いおばか」である謡にもきっちりと伝わったようであるし。これでまた龍治関連で何事か問題を起こせば、冗談では無く大叔父へ連絡のち龍治すら半泣きになるお説教コースだ。

 龍治の祖父・幸治郎はのんびりとして穏やかな人柄なのだが、その弟である大叔父は何と云うか、軍人系と云う感じの方なので、そのお説教の怖さはお察しと云う奴だ。龍治が個人的にお説教を喰らった事は、過去一度しかないけれど。思い出すとぶるっと震えが来るくらいには怖かった。普段から怒りっぽく鬼軍曹みたい、ではなく、平時の際はちょっと強面の爺さん程度なのだが、その分怒る時は壮絶に恐ろしいのだった。時には拳も飛ぶらしい。

 今回の件などその大叔父にバレたらお説教確実なのである。


 さて、謡への釘刺しはこれでいいが。落とし前はどうしようかと云う話である。

 宗吾達へ謝らせた所で、それでは「こうやって謝ってるんだから、謡を許せ」と強要したと取られかねない。と云うか、そう云う話になってしまう。龍治が人に謝らせると云うのは、そう云う事なのだ。龍治にその気がなくても、背後にある『綾小路』の圧力がそれを強要してしまう。

 では此処は、身内が迷惑をかけたと龍治が謝るべきかと一歩踏み出した時だった。



「――はっはぁ、御見事おんみごとぉ。身内相手に容赦ねぇなぁ、龍治よぉ」



 ぱんっ、と扇子を勢いよくたたむ音と共に、そんな軽快な声が飛び込んで来た。

 龍治だけでなく、その場に居た全員が声の方――後方へと顔を向けた。よくよく聞きなれた声であり、何でここにと思うと同時に、来ても可笑しくはないかとも龍治は判断する。


葛定かつさださん――瓜生うりゅうさんも」


 高等科生徒会長の南九条みなみくじょう葛定が、彼の腹心の友である瓜生凍一とういちを連れて立っていた。

 名前の通り、底冷えする冷気を放つような眼差しの青年である。寒さが苦手な龍治は少々構えてしまう相手だった。別にその眼差しに物理的冷気が宿っている訳ではないのだが。気分的に、である。


「まぁ、“舞台の整え方”と“始末の付け方”が、まぁだ甘いけどなぁ」


 閉じた扇子で己の肩をとんとんっと叩きつつ、堂々とした足取りで彼曰く“舞台”に上がり込んで来た葛定は、ちらりと視線を何故か花蓮へと投げた。どうして今自分へ視線を向けられるのか分からないのか、花蓮は怪訝な眼差しでそれに答えている。

 葛定はそれをふすっ、と鼻で笑うと――その態度に、恵理香と莉々依の目がギラリと光った。怖い――、龍治の側まで歩いて来た。その後ろを、瓜生が影の如く付き従って来る。

 龍治の頭をぐしゃりと撫でながら、屈みこんで顔を近づけて来た。耳元で、静かに囁かれる。


「今回は俺が自分で来てやったけどよぉ、次からは“ちゃんと呼べ”よぉ。――お前はさぁ、龍治ぃ。“手前てめえで動きすぎ”なんだよなぁ」


 助言、なのだろう。しかし龍治には、その言葉が理解出来ない。何故わざわざ葛定を呼ぶ必要があるのか。確かに謡は高等科の生徒だが、それ以前に綾小路家の者である。武田とて龍治を呼びに来た。なら龍治が治めるのが最良なのではないか。自分で動きすぎている、なんて事は無いと龍治は思う。

 そう、思うのだが――その龍治の考えを見透かしたように、葛定はまた鼻で笑った。「まだ甘い」と云うように。

 そうして、屈めていた体をむくりと起こす。すると、その葛定の動作で我に返ったらしい謡が、ひっくり返った声で“怨敵”の名を呼んだ。


「み、みな、南九条葛定! どうしてお前が、しゃしゃり出てくるんだっ!」

「おめーが高等科の生徒で、俺が高等科の生徒会長サマだからだよ。この唐変木とうへんぼくがぁ」

「んなっ……!」


 久方ぶりに聞くなぁ、その貶し文句、と龍治はのんびり思ってしまう。どうやら葛定は、この“舞台”とやらの締めをする気らしい。

 任せてしまうのはどうなのだろう。無責任すぎやしないかと思う龍治の肩を、冷たい手がそっと押さえた。瓜生の手だ。ブレザーを着ているのに冷温が伝わるとは、どう云う事なのだろう。別の意味で寒気がしそうだった。


 葛定はたたんだ扇子を、己の掌へと叩きつける。

 ぱんっと小気味よい音がした。


「こうやってくっだらねぇ事ばっかしてっから、おめーは俺に負けんだよ。なぁ、『綾小路』でありながら、高等科でも生徒会長になれなかったお謡ちゃぁん?」


 挑発しまくりな葛定の言葉に、謡の顔色がカッと赤くなった。


 そう、この二人はかつて初等科、中等科、高等科において生徒会長の座を争ったライバルなのである。ただし好敵手と云う漢字は当てられないだろう。初等科を除く全ての生徒会選挙において、葛定が圧勝したからである。

 初等科の頃は良かった。まだ初めての学科と云う事もあり、『綾小路』の威光がギラギラに輝きまくった上、その七光を謡が存分に活用していた。初めての生徒会選挙は謡の圧勝だったのだ。

 しかし中等科に上がってからは、そう上手くは行かなくなった。

 まず、中等科からは外部生――“外様”と呼ばれたりもするとか――が増える。初等科の伝統などは知らない子供達だ。謡は己の存在感を過信していたので、彼らに注意を払わなかった。しかし葛定は短い選挙活動期間中で、堅実に自分が応援する会長候補の知名度アップに力を尽くした。

 次は初等科からの生え抜きも、謡の弱点を突いて抱き込んだ。確かに『綾小路』の名は強大かつ恐ろしいが、その名を持つ謡は直系ではない。傍系の上、年下の龍治しんせきに後継者の座を既に“獲られている”。さらにその後継者は無関係の争いに首を突っ込んで、『綾小路』の強権を振りかざすような暴君あほでもない。だからこちら側についても大丈夫だと、囁いた訳である。

 そして最後に、謡相手に“おべっか”を使った。「よいしょ」して油断を誘ったとも云う。慢心したって君は負けないよ、だって『綾小路』じゃないか~みたいな事を云って、余計な行動をさせなかったのだ。その耳触りの良い言葉を初等科の時代に争った相手から云われて、謡は有頂天になった。ようやく自分の凄さが分かったか、と。――実際には莫迦うかつさ加減がよくよく理解されてしまった訳だが。

 そうして上手く謡を転がして動きと情報みみを封じ、自分達は懸命に選挙活動をすれば――結果は自ずとついて来た。

 葛定が応援した人が生徒会長となり、一年でありながら自信満々に出馬した謡は落選したのである。

 その時の謡の顔は見物だった――とは葛定談。本当にイイ性格をしている。

 そうして葛定は確固たる足場を手に入れた。葛定の根回しによって会長の座を得られたその人は、強い信頼を葛定へ向け、次代の会長は葛定だと明言すらした。

 こうなるともう、葛定の独壇場だ。それ以降の生徒会選挙の内容は推して知るべしである。

 謡も対抗手段を講じれば良かったのに、葛定の行為を「悪辣で卑劣な行為」などと考えて真っ向勝負しかしないから足元をすくわれまくる。『綾小路』の名の元に、一定数の派閥を維持するだけで限界なのだ。

 まぁ腐っても鯛と云うか、負けても『綾小路』なので、“没落”はしないが――どうあがいても頂点トップには立てなくなってしまった。

 なんだかもう、あらゆる意味で中途半端な親戚はとこである。ちょっと哀しい。


「言葉を……慎めよ、南九条っ! この僕を誰だと思ってる?!」

「綾小路謡ちゃんだろぉ? 中途半端で恥さらしまくりの可哀想な子だよなぁ」

「――ッ!」


 龍治とて内心「中途半端」と云ってしまっているが――それは、口に出して直接云ってはいけない言葉ではなかろうか。真っ向から「お前って中途半端だよな」と云われて傷付かない人はあまり居ないだろう。謡は確実に傷付く側の人間だ。

 本人は認めないだろうが――自覚があるのだろう。だから余計に、『綾小路』の名を振りかざしてしまうのかも知れない。


「本家の龍治はこぉんなに優秀でイイ子なのに、なんでお前さんはそうなんだぃ?」


 人を比較対象にしないで欲しい。子育て中、一番やってはいけない事である。


「黙れ……っ」

「龍治はさぁ、一度でも他人を貶めたか? 勝負をする時、卑怯な根回ししたかぁ? しねぇよなぁ、だってその必要がねぇからさぁ。黙して語らず結果を出すから、勝手に周りが盛り上がってこいつに付いてくんだよなぁ。――王者ってぇのは、そう云うもんだぜぇ?」


 葛定の言葉がズガンズガン心臓に突き刺さって来る。

 ついこの前、いたいけ――疑問は残るが――な少女を思い切り貶めるために裏で卑怯な根回しした身分なので。

 それを知らないだろう葛定は、一応は龍治を褒めてくれているつもりなのかも知れない。

 ひょっこり表層に出て来たゼンさんが「葛定くんは言葉責め派か……」とかぽつりと云った気がした。ダメージが倍増する。やめて欲しい。


「それがおめーと来たら、こっんな薄暗い所にガキ引っ張り込んでいびってんだから、情けなさすぎて泣けてくるわなぁ。あんまりショボイ事しないでくれよぅ。おめーと会長の座競った俺の格まで下がっちまうだろぉ?」


 ぶるぶると謡が震えだす。その顔は真っ赤に染まり、憎しみに表情が歪んでいた。

 流石に不味いのではと龍治は前へ出ようとするが、瓜生に両肩をがっちりとつかまれてしまった。口を開けばさっと片手で封じられた。動きを読まれ過ぎである。そんなに分かりやすいか。それとも瓜生が鋭いのか。生き物の体温を感じないくらい、手が冷たいのだが。怖い。

 柾輝が駆け寄って来て、瓜生の服の端を掴みながら「龍治様に失礼な事しないで下さい」と抗議してくれたが。その柾輝の口も瓜生はがっと掴んで塞いでしまった。強引すぎる。この人実は面倒くさがりなのか?


 龍治達がもだもだしている間に、葛定はつかつかと謡に歩み寄った。取り巻き達は一歩下がったが、謡はその場から動かず葛定を睨みつけている。

 ここから葛定の顔は見えないが、恐らく、強気で皮肉気な笑みでも浮かべているのだろう。そんな気配が背中から滲み出ていた。


「引き際くらいわきまえろよぅ。そんくらい分かっだろぉ?」

「お、まえっ……!」

「――話は終わりだ。とっとと消えな」


 そう云って葛定は、追い払う様に扇子で謡の肩を叩いた。ぱしん、と乾いた音がする。謡は口を開いたが、葛定は一方的に話を終わらせて今回の被害者――宗吾へと体を向けた。

 宗吾は雪乃介達に庇われながら、青い顔で葛定を見ている。その宗吾の様子を見ると、龍治の腹は怒りの炎でちりりと炙られた。


高等科うちの生徒が迷惑をかけた。こちらの監督不行き届きだ。申し訳ない」


 普段の間延びした口調を改めた葛定が、宗吾へ向かって頭を下げて謝罪する。宗吾も雪乃介ももう一人の龍治が直接面識のない少年も――制服からして、中等科の生徒だ――目を見開いた。

 まさか葛定に謝罪されるとは、夢にも思っていなかったのだろう。


 この場で葛定が謝罪する事は、一応筋が通っている。

 本人が云う通り、謡は高等科の生徒である。しかも親しくは無いが――浅からぬ縁がある相手だ。葛定はよくよく謡の性格を把握してもいる。そしてお互いに、五大財閥の一員でもあった。

 それらの理由から、謡の暴走を止められたのは高等科においては己だけであったと。それなのに防げなかったと、葛定は謝っているのである。

 とまぁ、つらつらと語ったが。結局は葛定と謡は他人である。親しくないどころか大層仲が悪い。なのに葛定は、謡の為に謝ったのである。

 ――謡の立場が、完全に無くなった。


(えぐい)


 人には「身内に容赦ない」と云っておいて、これである。場を治めに来てくれたのか、それとも謡に止めを刺しに来たのか。どっちだ。


「どちらもだと思われます」


 瓜生がぽつりと呟いた。心を読まないで頂きたい。それから、柾輝の頬をむにむにして遊ばないであげて欲しい。涙目になりながら厭がってて可哀想だ。


 謡はぽかんと口を開けて呆気に取られた後、“自分が何をされたか”気付いて、また顔に血の気を上らせた。これ以上に無い程屈辱だと云う顔で頭を下げたままの葛定を睨みつけたが、それ以上何か云う事はなかった。そこまで愚かではないらしい。もう何を云っても、どうしようもない。泥沼にハマって行くような物だ。

 葛定を凄まじい目付きで睨んだ後、謡はふいと顔を逸らし、小さく龍治に頭を下げて“舞台”から退場した。乱暴な足取りと尋常ではない様子に、彼の進行方向にいた花蓮達は無言でさっと避ける。引き留めるような事をする者はいなかった。眞由梨辺りが噛み付かないか内心ひやひやしていたので、龍治もホッとする。

 安堵ついでに、瓜生はそろそろこちらを解放して欲しいものだ。


 謡が退場している間に、宗吾達と葛定の落とし前は終わったらしい。葛定は頭を上げていて、雪乃介に「後輩思いじゃねぇの」とからかいの言葉を投げていた。それに対して雪乃介は、「ほっとけ」と云ってそっぽを向いている。なんだかんだで、仲が良いように見えた。五大財閥若年層で、龍治は割とハブられ気味なのに。何だか寂しい。


 瓜生の手が外れた。思わず振り返って見上げると、小さな笑みを浮かべて頷いて来る。もういいよ、と云う事なのだろう。一緒に柾輝も解放されたが、柾輝は恨みがましい目で瓜生を睨み上げている。その顔が面白いとでも云わんばかりに、瓜生は柾輝の頬をつんつくつついた。

 二人のじゃれ合いを眺めていたい気持ちにもなったが、それよりも先に宗吾である。


「宗吾っ」


 名前を呼びながら駆け寄る。宗吾は俯いていた。あの宗吾がそんな態度になるほど、謡に酷い事でも云われたのだろうかと、そう焦る龍治であったが。



「―――ふ、ざけんなッ!」



 血を吐くような声音の叫びと共に、パァンと乾いた音が響いて、龍治の視界が揺れた。

 ぶれる視界に見えたのは、今にも泣きそうな程水分を含んだ、宗吾の目。


 武田や恵理香、莉々依の悲鳴が聞こえた。花蓮の声は聞こえない。眞由梨が「龍ちゃんッ!」と既に半泣きな声で云う。玲二が「ちょっと?!」と怒った声を上げて。「バカッ!」と叫ぶ雪乃介の声。震えた声で「宗吾様ッ!」と誰かが呼ぶ。「うぉわ」と葛定が間の抜けた声を出す。柾輝はどうしたのか。また瓜生に口でも塞がれたのだろうか。

 左頬がジンジンと痛む。叩かれた――と気付いて、あぁ、人から叩かれた“経験”を初めて得たなと、妙に冷静な脳が把握する。“今生で初めて”の、他人から与えられた物理的な痛みだった。

 それらの衝撃に頬へ手を当てる事も出来ず、龍治は強制的に横へ向かされた顔をゆっくりと正面へ戻した。

 宗吾が泣いている。龍治の顔が逸れている間に、泣き始めてしまったようだ。

 眉間に深い皺を刻みつけて、頬を真っ赤にして、噛みつくような眼差しで泣いていた。濡れた瞳は真っ直ぐに、こちらを射抜いていた。

 泣いている人間と云うのは、多くの場合瞳に弱々しい色を宿すものだと思っていたのだけれど。宗吾の目に燃える色は、驚くほどに強かった。


「人を、莫迦にすんのも大概にしろよッ! 誰が助けに来いなんて頼んだ?! 俺がいつ、アンタに助けてくれなんて云ったんだよッッ! 当たり前に下に見やがって……ふざけんなッ!」


 胸倉を掴まれる。顔がぐっと近づいて、宗吾の怒気を真正面からまともに浴びた。

 声を出せなかったのは、叩かれた衝撃故なのか。それとも、口を挟む事を宗吾の目が許していなかったからか。


「俺はアンタに守られたくねぇ! 守ってもらうつもりなんて、さらさらねぇんだよ! 他の奴らと一緒にすんなッ! 俺が! アンタに頭撫でられてへらへらするような犬に見えんのかッ?! 俺は、俺は、アンタと……ッッ!」


 そこまで云って、宗吾は黙った。云いたい言葉がありすぎて口が回らないのか、もどかしいと云わんばかりの表情だ。

 宗吾の目が龍治の背後へと走る。そこに何を見たのか、思い切り目を見開くと一転して哀しげな顔になった。

 龍治の胸倉から手が離れる。そうしてその手は、龍治の胸元を思い切り突き飛ばした。そのまま倒れると龍治は思ったのだが、誰かに受け止められた。見上げると、愉しげに笑う葛定の顔。何がそんなに愉しいのか。目が狐のように歪んでいた。


「――地獄に落ちろ! ばかやろうッ!」


 最後に思い切り怒鳴って、宗吾は駆け出してしまう。「おい!」と雪乃介が呼び止めるが、それを振り切って行ってしまった。

 宗吾の名を呼びながら、中等科の生徒が走り出そうとして、はたと足を止めて龍治へ深々と頭を下げる。


「我が主が大変失礼致しました。正式な謝罪は後ほど……。――雪乃介様」

「行け。オレがどうにかしとく」

「……頼みます」


 軽く雪乃介へ頭を下げ、もう一度龍治にも頭を下げて、彼は宗吾と同じ方向へ走り去った。

 それをなんとなく見送っていると、葛定が呵々大笑かかたいしょうする。


「やりゃぁがったなぁ、あいつぅ。大したタマじゃぁねぇの」

「……笑ってんな葛定さん! あいつ、とんでもねェ事しやがってェ……!」

「雪。武田と一緒に、あいつら宥めすかしとけよぉ。俺ぁ龍治に話があらぁ」


 宗吾へ怒りを爆発させている眞由梨達を扇子で示しながら、葛定が気だるげに云う。雪乃介は面倒臭い、と云う顔をしながら舌打ちしつつ、「仕方ねェなァ……」と呟いて彼女たちの方へ歩み寄って行った。

 そうして未だ声を出せない龍治の額を、葛定は後ろからぺちりと叩く。


「男前になったじゃねぇの。龍治ぃ?」

「……なんで」

「ん?」

「なんで、宗吾は怒ったんでしょう……」


 理解が追いつかない龍治は、そう呟いていた。どうして怒られたのか、どうしてあんなに泣かせてしまったのか、龍治には解らないのだ。

 身内の不始末に巻き込んでしまって、厭な思いをさせてしまった事は確かだ。けれど何故、あんな風に怒鳴られてしまったのか。どうしても、解らなかった。

 下になんて見ていない。龍治の事で厭な思いなんてして欲しくないから、守りたくて――友達を、守りたいと思っては、いけないのだろうか。


 そんな龍治に溜め息をついて、葛定は扇子で龍治の頬を撫でる。ひりひりと痛いそこは、微かな刺激にも反応してさらに痛みを増した。


「分っかんねぇかなぁ。お前も男だろぉ? 分かってやれよぉ、男心って奴をよぉ」

「男心?」

「男にとっての屈辱ってぇの、教えてやろうかぁ?」


 上から龍治の顔を覗き込んで、葛定はニンマリと笑った。


「好いた女に格好悪い所見られる事と、対等だと思ってる奴から一方的に助けられる事だぜぇ?」


「だっせぇだろ、そんなの、最悪だろぉ」と続けて葛定は云う。

 ぱちりと一度瞬きをして、――そうか、と龍治は納得した。


 男の面子とか云うと、莫迦らしいと云う人もいるかも知れないけれど。そう云った物を蔑ろにしてはいけないのだ。胸を張って生きたいなら、矜持は掲げるべきである。名誉も、誇りも、大切にしなくては、龍治達はまともに生きていけない。

 それを今回、龍治は、真正面から潰してしまったのだと気付いた。


 龍治だって、花蓮には格好悪い所なんて見られたくない。だから夏休み中へこみにへこんでいた時には、あれこれ理由を付けて会おうとしなかった。

 今回の件は龍治からすれば身内の不始末だが。宗吾からすれば、売られた喧嘩を横から掻っ攫われた上に落とし前さえ付けられてしまって、踏んだり蹴ったり状態である。その上、横から掻っ攫ったのは、好きな相手の婚約者で、落とし前を付けたのは龍治そいつの関係者だ。

 庇われて、守られてばかりだった宗吾はその様を、花蓮に見られてしまった。よりにもよって、好きな女の子に、である。

 宗吾の心情は察するに余りあった。

 だが、そこで疑問に思う。

 彼は、下に見るなと、云った。


「宗吾は……」

「あん?」

「俺を、対等の相手だと、思ってくれてたの、でしょう、か」

「……そうじゃなかったら、誰が“綾小路龍治”の横っ面ぶっ叩けんだよぉ」


 叩かれた頬をさする。龍治からは見えないが、掌に感じる熱と痛みの具合からして、赤く腫れているのだろう。それは宗吾の感情の強さを、分かりやすく表していた。


(俺が友達になりたいって云ったのに)


 龍治自らが、彼の面目を潰してしまったのだ。酷い話である。

 真っ向から怒りをぶつけてくれる程、宗吾は龍治を受け入れてくれていたのに。

 裏切ったのは、自分の方だった。


「――龍治。お前はな、言葉が少ないんだよ。いつだってな、お前は最良で最善だ。俺から見ればな、公平すぎて怖いくらいだ。だからな、他の奴らにとっては言葉が足りない。何を考えてんのかわからない。わからないって事はな、“怖いんだよ”。お前が自分をどう思ってるのか推し量れない。へたすりゃどうとも思われてないように感じる。――最短で正当な結果を出す事を否定する訳じゃないけどな。お前はもっと、“無駄な事”をしておけよ」


 普段のだるだるした口調を改めて、葛定は云った。真剣な眼差しで、諭すかのように。

 だがすぐにその穏やかな様は消えて、にへっと目が細くなった。


「無駄な事も、長い人生、結構必要だぜぇ?」


 一文の中に矛盾を込めて、葛定はいつも通りの調子で云う。最後にぺちりと龍治の額を叩いて、葛定は離れた。


「今日は岡崎連れてぇれ。その面ぁ見せたら、学園中大騒ぎになっちまうぜぇ」


 それがいいのだろう。宗吾や謡の事も考えたら、きっと、その方がいい。経緯からしてあらぬ噂が立つかも知れないが、火消しは得意だ。どうとでもする。


「柾輝」


 どうやら、瓜生と格闘していたらしい柾輝を呼ぶ。いつも柔らかくセットされている髪がくしゃくしゃになっていた。結構新鮮な姿である。

 多分と云うか確実に、龍治を叩いた宗吾に飛び掛かろうとでもしていたのだろう。それを止めてくれた瓜生には感謝だ。


「は、はい」

「帰ろうか」


 痛む頬で小さく笑うと、柾輝は口をきゅっと「M」の形にして頷いた。

 その間に、くしゃっとなった頭を瓜生が手櫛で直してやっている。その手を柾輝がうざったそうに払うので、少し笑った。瓜生の方は意外と柾輝を気に入っているようだが、柾輝はそうでもなさそうだ。龍治に雑な態度を取ったからか、それとも行動の邪魔をされたからか?


 柾輝を連れて、花蓮達の元へ行く。葛定も混じって雪乃介、武田が落ち着くように云っていたが、花蓮以外の面々は眉尻を吊り上げてお怒り状態であった。聞こえて来る声は、龍治の為に宗吾へ怒りをぶつけていた。


「みんな、ごめんな」


 思ったままを口に出すと、そんな言葉になった。みんなが驚いた顔で龍治を見る。あまりに揃った表情に、龍治はつい笑った。


「巻き込んで悪かった。こんな所まで付いて来て貰ったのに、厭な思いさせたな。ごめん」


 龍治が謝れば、みんなが許してくれる事を知っていた。知っていたけれど、云わなくていい事だったかも知れないけれど、龍治は云いたかった。

 みんなは優しいから、龍治が傷付けば怒ってくれる。普段は呑気な玲二や穏やかな莉々依まで、叩かれた龍治を想って感情を露わにしているのだ。宜しくない感情を覚えて、らしくなく激昂してくれている。

 有難い事だろう。龍治の為に感情を乱してくれているのだ。龍治への好意故に。

 けれどそれは同時に、哀しい事だ。怒りと云う抱くには苦しい感情を与えてしまったのだから。


(俺がもっと考えなくちゃいけない事は、“こう云う事”だ)


 最善を、最良を、間違いをなく適切に。合理性に特化した、龍治の思考。

 葛定が云う通り、このやり方は悪い訳ではない。だが、“宜しくもない”。感情を置いてけぼりにした思考の特化は、今回のように容易く人を傷付けてしまうのだと改めて思い知った。


 龍治は以前柾輝から、「女心が分かっていない」と云われた事がある。それはそうだろうと、納得した。自分は男で、前世は乙女からは程遠い貴腐人だった。

 乙女回路より萌え思考を優先する特殊な人種である。「女心? あぁ物語のスパイスだよね」程度で流してしまえるような人だ。それよりも男同士の些細な接触に興奮するような人に、乙女おんな心を尋ねても無駄過ぎる。

 かと云って男心はどうか。今回葛定に云われてしまったが、確かに男心も分かってない。

 前世が腐っても女性であった影響なのか。男の本能さがはなんとなく分かっても、ともすれば現代では無駄と切り捨てられてしまいそうな男のプライドがよく分からない。龍治達の生きる世界で必要な要素だとは分かっているが、構造を把握出来ていないのだ。

 何が琴線に触れてしまうのか、どこまでが許容されるのか、踏み躙ってはいけないラインが見えて来ない。

 嘆かわしい事だ。

 出来る限り人を傷付けたくないと思っているのに、スタートラインに立つ前から躓いている事に今の今まで気付いていなかっただなんて。


(眞由梨の時から学習出来てない。本当に、俺は駄目だ)


 感情のままならなさは知った。なのに、そこから進めていなかった。気付けば合理性の信者に戻って、整合性に満足している。間違っていないと満足して、莫迦丸出しだ。


 他人の感情なんて、人は理解出来ない。声音で、表情で、仕草で、推測するだけで、理解なんて出来やしない。そんな事は、当たり前の事だ。相手の事が完全に理解出来たら、人はもっと生きやすく――いや、逆に生き辛くなっているかな、と考える。ゼンさんが読んでいた小説の中に、「国に住む全ての人がテレパシーを使えるようになったら」みたいな話があって、その話では心が通じ合う事はむしろ暴力的な事で、分かり合うが故に側に居られなくなる、と云う結末であった。考えている事が筒抜けだなんて、よく考えなくても恐ろしい事じゃないか。

 けれど龍治は、感情を推測する時点で躓いているのだ。きっとそうだ。“龍治の欠損はそこだ”。多分――人を分かってやれない。分かろうと努力しても、ずれてしまう。

 それはゼンさんのせいだろうか。そうだ、と云えるだろうし、そうじゃない、とも云える。龍治がまだ、歪な自分を把握し切れていないと云う事だ。自分の全体像を把握出来ないと、龍治は先に進めないのだ。

 だが、鏡を見ても分からない。自問自答を繰り返しても、一人じゃ答えなんて導けない。


 きっと今の龍治には――宗吾が必要なのだ。

 ずっとずっと先でも、宗吾のような存在がいないと駄目なのだ。駄目になってしまう。どろどろに溶けて、どうしようもなくなってしまう。

 まるで鶏と卵のようだ。どちらが先か? どちらが後か?

 龍治が感情を理解しないと宗吾に近付けないのに、理解のためには宗吾が必要だと云う。

 なんだか命題を突き付けられた気分だ。


 柾輝が悪いのではない。花蓮だって悪くない。眞由梨も玲二も恵理香も莉々依も、椋太郎も、他の誰もが悪くない。

 龍治が駄目だから、宗吾じゃないと駄目なのだ。

 糖分だけで人は生きていけない。塩分だって必要だ。そう云う事だ。笑えるくらいに当たり前だ。でも塩分だって過多じゃ――


(あぁ違う。そうじゃない)


 またずれる。そう云う事じゃない。軸をぶらせるのは、いい加減にしたらいい。

 そうじゃないだろう、自分。


 ゼンさんが軽やかに笑った気がした。もし隣りにゼンさんが立っていたとしたら、彼女は“あの”優しい手で、龍治の肩を叩いたかも知れない。

「友達に、なりたいだけでしょう?」――そう、ゼンさんが云った気がした。


(難しいなぁ)


 単純な事のはずなのに、こんがらがって難しくなって、頑張って解こうともがいたら余計に絡まって、がっくりして肩の力を抜いたら、また簡単な答えがぽろりと出てくるのだ。


(人って、難しい――)


 そこまで考えて――実に三秒と云う長い時間だ――、花蓮達の顔色の変化に気付いた。みんなが何やらもじもじしている。照れているような、そんな表情だ。照れる? その感情が出てくる要素はどこだ。


「りゅ、龍治様」

「うん?」

「あの、わたくし共は、気にしておりません、ので」

「――ありがとう。みんな、優しいな」


 云うと花蓮を始め、女子陣が顔を真っ赤にして俯いた。発熱要素はどこだ。玲二が微妙な顔をして、「その笑顔はちょっと……」と呟いた。そんな変顔してただろうか。ショックだ。


「……我が侭云うけど、ここでの事は他言無用でお願い出来るか?」

「な、なんで? 龍ちゃん叩かれたんだよ! 伊達の奴、許せないよ!」


 がっと眞由梨が大声で云う。恵理香と莉々依は同意らしくこくこくと頷いていたが、花蓮は困った顔だ。花蓮は宗吾と付き合いが長い。真っ向から非難するのははばかられるのだろう。

 龍治は一歩前に出て、眞由梨の頭を撫でた。それだけの事なのに、眞由梨の表情から険しさが無くなる。


「俺が悪かったんだ。だから叩かれても仕方ないし、俺は嬉しかったぞ」

「ちょ、龍治君」

「あいつの怒りって真っ向から直球で来るから気分いいよな。むしろもっと云って欲しい」

「ちょっとー! その扉開けないで龍治くぅん?!」


 顔色を青くした玲二が、がっくんがっくん龍治の肩を揺さぶった。何かおかしい事を云っただろうか?

 ゼンさんが割と呆れた感じで、「いやその発言、もろどMだから」とか云った気がした。何だと。とんだ名誉棄損である。ただ龍治は、他の人間が全くと云っていいほど龍治へ向けて来ない、直球な怒りの感情が心地よかっただけだ。歪曲した感情のやりとりはよくするから、尚更そう思ったのだ。

「いやそれがどM……もういいや」とかゼンさんが諦めた気配がする。何だか凄く失礼だ。


「何でそんな慌ててるんだよ」

「だってとんだどエム宣言じゃないか!」

「なんだ玲二まで」

「え?」

「あ、いや、こっちの話。て云うか、そう云う事じゃない。俺を真正面から怒鳴りつけてブッ叩くなんて、あいつが初めてだったから。気分が良くて」

「だからー?!」

「え?」


 玲二が何をそんなに慌てているのかはよく分からない。眞由梨なんて「あいつのせいで龍ちゃんがー!」と蹲って泣いているし、恵理香と莉々依が慌てて慰めてるし、花蓮と柾輝が顔を見合わせて何か怖い笑顔しているし。どうしたのだろう。

 ふと気配を感じて振り返ると、雪乃介と武田がぽかんと口を開けていて、葛定が腹を抱えてぶるぶる震えながら蹲っており、瓜生がその背中を一定のリズムで叩いている。どう云う状況だろうか。推測が難しいのだが。


「雪さん、そう云う事なんで」

「は、ェ、何、何が?!」

「え? だから、宗吾が俺を叩いたりした事は、内密に、と」

「あ、あァ、そうだな。うん。その方が、オレも助からァ……」

「あの、そのだな、龍治様」

「はい?」


 武田がえらく云い難そうな感じで、龍治に声をかけて来る。それに答えて首を傾げると、武田女史はその端整な顔をまた微妙に歪ませて、深呼吸を繰り返し――何故か目を逸らした。


「いや……何もない……」

「そうですか?」

「うむ。……それより。頬を早く冷やした方が良かろう。そのままでは腫れ上がってしまうぞ」

「あ、そうでした」


 うっかりである。今日の早退は致し方ないとして、腫れ上がって明日まで休む破目になったら最低だ。

 柾輝が慌てて龍治の手を取り、「早く保健室へ」と云う。花蓮も頷いて付いて来てくれようとしたが、それに葛定が待ったをかけた。


「花蓮。おめーは戻りなぁ」

「まぁ、何故ですの? 葛定様」

「龍治が早退したってなったらよぉ、初等科が騒がしくなるだろぉ? それを捌くなぁ、おめーさんの仕事だぜぇ?」

「ですが、わたくしは龍治様を……」

「こんな時こそさぁ、内助の功だろぉ?」

「内助の功……!」


 はっとした顔になって、花蓮は口元を押さえた。

 それから数秒沈黙して、きりっとした顔で龍治を見る。


「龍治様、後の事は花蓮にお任せ下さいませ。初等科くらい、わたくしの手で捌いてみせますわ!」

「え、お、おう?」


 確かに、龍治が突然早退となったら騒ぐ連中がいそうだが。花蓮がそこまで強く決意する程の事だろうかと、少々疑問に思ってしまう。

 だがやる気になってる花蓮は可愛い。ここは宥めたり止めたりするより、任せる方が良さそうだ。

 それに、花蓮は日頃は龍治の陰に隠れているが、決して統率力やカリスマが無い訳ではない。むしろ、小学生女子としては驚きの能力持ちである。龍治がいなくとも、彼女の号令一つで派閥の女子達は鋼の結束を見せるし、眞由梨の派閥とて龍治の為とあらば協力は惜しまないでいてくれる。

 その女子二大派閥の前に、龍治を欠いた男子はほとんど無力だ。任せても何ら問題はない。何より、こんなやる気になってくれている花蓮に水を差すのは駄目だろう。


「分かった。宜しく頼むな、花蓮」

「はい、龍治様!」

「後で連絡…………いや、学校が終わったら、一度俺の家に来れるか? 多分、今日はもう外に出れないだろうから、来てくれたら嬉しいんだけど」

「もちろんです! 喜んで参りますわ!」

「ありがとう」


 顔を赤くしてやる気に満ちる花蓮が可愛くて、頭をよしよし撫でる。相変わらずつやつやの美しい髪は手触りも良かった。


 そうして気付けば、昼休みも残り数分であった。慌てて全員揃って初等科へ戻る――のだが、何故か葛定がついてきた。瓜生は高等科へ戻っているのに。


「なんですか、葛定さん」

「可愛くねぇ顔すんじゃねぇよぉ。保健室まで付き添ってやるってんのにさぁ」

「えぇー。何でですか……」

「おめー一人で、騒ぎ起こさず保健医に説明出来んのかぃ?」

「う、それは」


 初等科の養護教諭は年配の女性なのだが。いわゆる“おばちゃん”にありがちな、お節介な部分が結構ある。龍治が頬を腫らして保健室に来たりしたら、説明する前に一騒ぎ起きそうではあった。


 ちなみにだが。「保健医」と云う職業は実は存在しない。保健室の先生、養護教諭とは医師免許を持たない――つまり医師ではないのだ。だから「保健“医”」と云うのは、本来おかしいのである。

 つまりは造語だ。誰が初めに使ったかは知らないが、サブカルチャーでそう呼ばれるようになり、それが一般に浸透してしまったのである。

 間違ってはいるが、意味は通じるので、あまり積極的に直されないのかも知れない。保健室の先生と呼ぶと長いし、養護教諭と云うと堅苦しいからかもなぁ、と龍治は思う。


「あ、雪さん」

「ん? なんだよ」

「あの人……えぇと、宗吾を追い掛けて行った人に、謝罪はいりませんって伝えておいて貰えます? 俺が悪かったんですし、これで伊達家に何かすると云う事は絶対にないので」

「……あー。わかった、云っとく」

「お願いします」


 あの人は結局誰だったのか。宗吾を様付けで呼び、我が主と云っていたから、世話役とかお目付け役と云う人なのだと思うが。そう、思うが――雪乃介には確認しなかった。

 宗吾の口から教えて貰いたいと、思ったから。



(……謡のフォローもしといた方がいいかなぁ。藪を突くような気が、しないでもないけど……)


 と、云う訳で。

 龍治の怒涛の初体験でした。(何か如何わしい)


 活動報告で申し上げた通り、最初は葛定出なかったんです。そうしたらどうあがいても、宗吾が龍治の友達になってくれない落ちになっちゃって……。

 うんうん悩んでいたら、ふと「そんな時はちょい大人の出番じゃねぇ?」と葛定が脳内に降臨してくれたので出したらどうにか、こうにか……!

 葛定登場以降全部書き直しました。全然別の話になってる……(戦慄)


 思わぬ所で龍治の弱点が露呈した話でもありました。本人は欠損とも云ってましたけどね。

 龍治は頭が良い(設定)ですし、本人は男なのに前世は女と云う齟齬そごのせいで、割と軸がぶれているようです。全体的に見れば整っているのに、中心だけ見ると歪んでると云うか。その歪みを見過ごすと面倒な事になっちゃうよ、みたいな。考えないと先に進めないのに、考えれば考えるほどずれて行くと云う。そこら辺はまた本編で詳しくやりましょう。

 面倒な主人公だなぁ……と作者が云っちゃいます。←


 ちなみに次回予告ですが。

 次の話は龍治視点から少々離れます。でも本編です。何故かと云うと、龍治が自分の事でいっぱいいっぱいになって来たので、他の子たちの動きがよくわからないだろうなぁと思いまして。宗吾は龍治の後ろに何を見たのか、とか、花蓮がすぐに動かなかったのはどうしてか、とか。

 龍治視点の続きを書いて行くにあたって、そこら辺ちゃんと書いておかないと躓くだろうなと判断致しました。読者様おいてけぼりは良くないですよね。なので次は補完的な話になりますかねぇ。

 タイトルは「右腕たちの憂鬱」(予定)です。お楽しみ……してもらえる、かなぁ……(遠い目)



 更新しばらく停滞していましたのに、お気に入り登録が5000件を超えておりました。

 皆様、ありがとうございます。今後ともメイヒロを宜しくお願い致します!



※感想欄で考えさせられる感想をいただきましたので追記します。

 このお話はR-15の残酷描写ありの鬱展開ありです。

「俺TUEEE」や「100%悪者を倒して気分爽快」な展開はほとんどないと思います。むしろ読んだら胸がもやっとするような重苦しい話が今後増えて行きます。それの清涼剤としてギャグ・ほのぼの要素が入る、と云う所でしょうか。

 27話の「痛ましい事故でしたね?」の時にも手厳しい感想を沢山いただきましたが、これはそう云う物語です。こう云う書き方です。

 軽くテンポの良い話を私は書けません。ずっしり重くて濃い話ばかりになると思います。

 駄目だと思われた方は、今のうちに見限ってやって下さい。お願い致します。

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