29.人に人が救えたら、
似非ボーイズラブ表現有のタグが活躍の兆し。
椋太郎のアパート前で車が停まる。柾輝が出ようとするのを制してから、佐々木に向かって云った。
「二時間後迎えに来てくれ」
「は――?」
「俺一人で行くって事だよ。……火々池、ドア開けて」
「そんな、お一人では」
「知人の訃報を届けるのに、大人数で行くのもアレだろ」
「ですが」
「大丈夫だから」
彼らが渋るのは、何も龍治に意地悪をしているからではない。龍治を一人にして何かあったら、その全責任が彼らにかかって来るからだ。減俸、降格で済めばいいだろうが、最悪はクビである。彼らの不始末に対して龍治自身が良しとしても、雇い主である治之が許さない。何らかの形で絶対に責任は取らされる。それを避けてたいと思うのは、人として当然だろう。
しかし龍治も、彼らに厭がらせしている訳でもなければ、己の身を軽んじている訳でも無い。
ただ――椋太郎と一対一で話したいだけなのだ。
それだけの事で彼らに余計な責を負わせるのは心苦しいけれど。それでも今、龍治はそれを譲れない気持ちになっていた。
「椋太郎さんと話して来るだけだから。頼むよ」
「……」
龍治の護衛と云う任において、この場で最も高い責任を負う火々池に重ねて頼む。火々池は生真面目な顔を僅かに顰めると、一度目を閉じて細く息を吐いた。
「……ここで待機、で宜しいでしょうか」
「火々池さん!」「火々池さん……っ」
「何かあったらご連絡を。場合によっては、一時間後にお迎えに向かう事もありうると、ご了承ください」
「悪いな」
「いえ……我らも久遠様を疑っている訳ではありませんが」
「職務に忠実な護衛で安心してるよ」
「……勿体ない」
腰を浮かせた柾輝と佐々木であったが、龍治達の間で話が決まってしまうと不承不承座り直した。火々池がドアを開けて降りる。龍治もそれに続いた。
「それじゃぁ行って来る。――柾輝、良い子で待ってろよ」
「……行ってらっしゃいませ、龍治様」
「お気を付けて……」
普段であれば、柾輝は頑として龍治の単独行動を認めなかっただろう。自分だけはついて行くと云い張ったと思われる。
それなのに割と素直に応じたのは、柾輝が諒太郎を気に入っているからか、それとも、先ほどの発言が尾を引いているからなのか。
わからないが、龍治は柾輝に向かってもう一度「行って来るよ」と告げておいた。車に背を向けてアパートへと歩き出す。ドアを閉めた火々池がついて来たが、龍治が視線をやるとアパートの出入り口辺りで立ち止まって頭を下げた。見送りだけは行うらしい。龍治は火々池の目を見て一度頷いて、椋太郎の部屋へと向かった。
*** ***
「お前一人なんて珍しいな。柾輝はどうしたんだ?」
「置いて来ました」
「何で。連れて来いよな」
あれからもう二週間が経ち、亜麻音とのいざこざで崩れかけた椋太郎もすっかり元に戻っていた。いや、元通りどころか以前にも増して龍治に信を置いてくれている。こうしていきなり訪ねて来ても、嬉しげに家へ上げてくれるくらいには。
それでも相変わらず、髪はくしゃくしゃだし眼鏡は黒ブチで服装はダサい。初めて会った時から、見た目は何一つ変わらない。不潔でない事だけが救いのようなありさまのままだ。
(まぁ、まともにすれば乙女ゲーに相応しいイケメンなんだろうけど)
まだ確かめた事はないので、確信は出来ないが。確かに前髪の間や眼鏡の奥に見える瞳は綺麗なアーモンド形をしているし、鼻筋もお約束ながらスゥと通っている。身なりを整えればイケメンになる可能性は高かった。
勧められるままにぺったんこな座布団に正座する。目の前のちゃぶ台には、コップに入ったウーロン茶。冷蔵庫から出されたばかりなので、氷が入っていなくとも冷えている。わざわざ温かいお茶を所望するのは図々しい気がして、ここで出される物に注文を付けた事はなかった。
「……いきなり申し訳ないです」
「いや別にいいって。遠慮する関係でもないだろ」
ちゃぶ台を挟んで正面に座った椋太郎の言葉に、龍治はふと笑みが浮かんだ。椋太郎との交流は三ヶ月を少々過ぎたくらい。それも毎日会っていた訳ではなく、時間がある時にふらりと立ち寄って会話をする程度だった。とても、そんな言葉を貰えるような時間を共に過ごしてなどいない。
ならば彼のこの言葉は、言葉から滲み出る信頼は、亜麻音との騒動を経た事で得られた物なのだろう。彼女とのいざこざがなければ、龍治と椋太郎は未だにたまに会話するだけの知人に過ぎなかったに違いない。障害が人の距離を縮めると云うのは、本当の事だったのだ。
不謹慎な事に龍治は、亜麻音に感謝している。彼女が妙な行動を起こしたお陰で、この信頼が成り立ったとしたら、それは――
(ああ、浅ましい)
己の思考回路に反吐が出て、龍治は自嘲してしまった。どうして自分はこんなにも。
その顔を見て、椋太郎が驚いた表情になる。
「どうした? 何か、あったか?」
「ありました」
素直に頷けば、椋太郎は神妙な顔になった。無言で続きを促されている事を察して、龍治は僅かに目を伏せる。
椋太郎の顔を見て、話す事は出来なかった。
「麻倉亜麻音が、亡くなりました」
前置きもなく、ストレートに龍治は云った。どんな言葉も弄する気にはなれなかった。ただありのままの真実を告げる事しか、出来なかった。
眼鏡の奥で、椋太郎が目を見開く。口がぱくぱくと酸素不足の金魚のように開閉した。音を立てそうな勢いで、血の気が引いて行って、最近はよくなっていた顔色が悪くなる。
「なん、で」
掠れた声で、呟かれた。
そのなんでが、「何故死んだのか」なのか「何故お前が知っているのか」なのか「何故自分にそれを伝えたのか」なのか、そんな事は龍治にはわからない。だから一番最初の疑問なのだろうと勝手にあたりをつけて、答えた。
「分かりません。死因は、事故か他殺のどちらか、との事ですが。まだ詳しくは」
「……」
椋太郎は無言で龍治を見つめ続けた。どれだけ時間がたったか。部屋の隅にある目覚まし時計の秒針が動く音ばかりが聞こえてくる。
のろのろと両手を動かして、椋太郎は額を押さえ己の髪をぐしゃりと握った。
「――……っ」
泣いているのか、低い吐息が聞こえてくる。
(泣くのか、あんたは)
泣けるのか、とも思う。
散々迷惑をかけられて来た相手だろうに。
話を聞けば、椋太郎は損害しか被ってない。周りの人間に罵詈雑言を吐かれて、恋人だと偽りを叫ばれて、心を抉られるほどに付きまとわれて、職すら奪われて。
それでも泣けるのかと、そう、思った。相手の死を嘆く事が出来るのかと、ぼんやりと、“驚いた”。
「――……て」
「……?」
掠れた呟き。よく聞こえず、思わず顔を近付けた。
俯いて、押さえた手の下で、椋太郎は云った。
「すくって……やれ、な、かっ、た……」
「――」
目を見開いた。
――そんな事を。
よくも、思えるものだ、と。
親しい間柄ではなかった。本人も否定していた。事実迷惑がって逃げ惑って怖がっていた。現に龍治があの時否定したら、彼は拒絶しなかった。龍治を良い子だと云って、一緒にいると安心するとまで云ったのだ。
それなのに、そう、思うのか。それは、偽善か。いいや違うと、“龍治だけは理解する”。
『久遠椋太郎』は、そもそも根本的に人間が好きなのだ。
人間と云うものが好きで、愛しくて。それは妙な意味でもなく、変な意図もなく、ただ純粋に己が生を懸命に生きる人間と云う生き物の尊厳へ対する敬意であった。
だから、人が生きる手助けが出来ればいいと、彼はカウンセラーと云う職を選んだのだ。
それは無償の愛とやらなのか。それとも自己満足を満たすためなのか。そんなものは龍治に決められないし、誰かが決めつけて良いものではない。
ただ、『ヒロイン』は――彼の幼馴染は、云った。
――誰かの為にがんばる椋ちゃんが好きだよ――と。
そこにはきっと、ただの愛があった。彼女はその時の『椋太郎』にとって、確かに愛の化身に他ならなかったのだ。自分の生を肯定し、微笑み、愛してくれた少女は彼にとっては確かに――ふれられる愛そのものだった。
――すくってやれなかった。
その生き様故の、言葉と思いなのだろう。例え自分が傷付けられようと、一度二度と拒絶しようと、救えるものなら救ってやりたかった、と。
龍治には云わなかったが、椋太郎は心の内では一度距離を取ってほとぼりが冷めてから、亜麻音と向き合おうと思ってでも居たのだろうか。多分、そうなのだろう。そうでなければ、出て来ない言葉だ。
あぁまったく―――どうしようも、ない。
(ここは、肯定してやるのが、正しい)
攻略手順に従うのなら、龍治は椋太郎の生き様を肯定してやらなくてはいけない。『ヒロイン』がそうだった。その選択肢が、正解だった。救えなかった事を一緒に嘆いて、それでも願う貴方が良いのだと告げてやれば良い。
それに龍治自身も、救えるものなら救ってやりたいと云う感情の元動いている。背を向けて逃げる選択肢もあれば、諾々と“運命”に従う選択肢だってある。けれど龍治は、自分を含めた周り全てを救いたくてこんな事をしているのだ。抗うために、幸福を獲得するために。だから龍治は、いや、龍治だからこそ、ここで椋太郎を肯定してやるのが正解だろう。
けれど――口から出た、言葉は。滑らかに動く口が、声にしたものは。
「――人間は、人間を、救えません」
椋太郎の動きが止まった。それでも、龍治の口は止まらない。
「救えないものは、どう足掻いても、救えないんです」
それは――“龍治の言葉ではなかった”。人を救えない人を見た、ゼンさんの言葉だった。
ゼンさんは普通の人だったから、困ってる人を見れば極自然に助けてやりたいと思った。それは偽善ですらなく、ただの莫迦正直な善意だった。「目の前で困ってる人を助けるのに、理由がいるの?」なんて言葉を素で云える人だったのだ。勿論、自分の全てを投げ打つような自己犠牲の塊ではなかったけれど、「どうしよう」と困ったり悩んだりしている人が居たら、当たり前に声をかけれた人だった。
そんなゼンさんの友達には、とても優しい子がいた。まるで聖女のように献身と自己犠牲に溢れた、心清らかな少女だった。
その少女が、どうしても救えなかった女がいた。
傍から見て、どうしようもない女だった。
彼女は、あまり良い人生を歩んでいなかった。家庭環境はぐちゃぐちゃで、友人もおらず、自分の身の上を嘆いて、誰かに救いを求めていた。「どうして誰も私を幸せにしてくれないの」なんて言葉を平然と云うから、周りから引かれて自然と孤立して行っていた。
ゼンさんは悪人ではなかったけれど、そんなある種の痛々しいタイプに自ら近寄るほど善人でもなく、「なんか怖いなぁ」と思って避けていた。
けれども少女は声をかけた。大丈夫? どうしたの? と。莫迦みたいに。
その頃のゼンさん達はまだ幼かった。高校生。子供と大人の中間点。子供と云うには物事を知っていて、大人と云うには幼すぎる、そんな年齢。まだ純粋で、潔癖と云って差し支えないほどに綺麗なものしか見ていない、当たり前の少女だった。
少女は幸福な少女だった。家族仲はとても良く、少女自身の見た目もよくて勉強も得意。運動は少々苦手だったがそこが可愛いと周りに愛されていた。ゼンさんを始めとして大勢友人が居て、ギャル系から「ぶりっ子」と云われ嫌われる事もあったが、それを庇ってくれる人が当然のようにいた。
それはそれは当たり前に幸せだったから――少女の言葉は、彼女には届かなかった。
少女がいかに真摯に声をかけても、向き合っても、彼女にとっては哀れみや同情、または優越感から来るお情けとしか映らなくて。「大丈夫?」と云えば「あんたに関係ないでしょ」と突っぱねられて、「どうしたの?」と聞けば「何も知らない癖に、気安く声をかけないで」と睨まれて、「何でも話して、私は聞くよ」と訴えれば「同情なんていらないのよ!」と怒鳴られていた。
どうしようもなかった。少女の言葉は、どう足掻いても彼女には正しく届かない。
ゼンさん達周りは止めた。放っておきなよ、構ってもどうしようもないよ、厭な思いするだけだよ、と。それに少女は「でも放っておけないよ」と云って拒否したから、周りが強引に引き離したのだ。
極普通に、当たり前に愛されていた少女だったから、周りはみんな悲しんで欲しくなかったし、厭な思いもして欲しくなかったのだ。ゼンさんは苦笑して少女に「距離感って大事だよ」と云っていた。
周りから説得された少女は、徐々に彼女から距離を取った。自分の善意が彼女にとってただ迷惑なだけなのではないかと思い始めたからだ。そうして事実、彼女は少女に声をかけられても顔を顰め怒りを顕わにして拒絶するばかり。
少女は最終的には折れて、彼女との関わりを絶った。その方がよいと、思ったのだ。周りに散々云われて、少女自身も「彼女の心を私は本当にはわかってあげられない」と悲しんで。
誰が悪かったのかと云われたら誰も悪くないし、全員が悪かったとも云える。
少女が諦めずに居たら、彼女がもっと心を開いていたら、周りがちゃんと協力していれば――防げた悲劇だったかも知れないのだから。
彼女が何を思ったのか、考えたのか、そんな事はゼンさんにもゼンさんの記憶を閲覧する龍治にもわからない。ただ少女が、「今までしつこくしてごめんね。厭な思いさせてごめんね。もうつきまとったりしないから」と云ったその日から、彼女は学校に来なくなった。
誰も気にしなかった。元々嫌われ者の爪弾きだ。少女は「どうしたんだろう」とゼンさんに云ったけれど、前日もう関わらないと云った事もあり、積極的に何かしようとはしなかった。ゼンさんも「あまり気にしない方がいいよ」と云って慰めた。それだけだった。
そうして半月後、彼女が学校を辞めた。みんな「ふぅん、辞めたんだ」程度の反応で、少女のようにショックは受けていなかった。キツめの性格の子たちが「目障りだったから辞めて良かったじゃん」と云った事に関しては云い過ぎだと思ったが、怒りを持ち得るほどではなく。哀しそうに俯く少女の背中をさすって、「あんたが悪いんじゃないんだから」と当たり前の慰めを口にした。
そうしてさらに月日が過ぎて、半年後。――彼女の死亡が、新聞に載った。
ありきたりと云えばありきたり、よく新聞やテレビを騒がせる、いわゆる出会い系による殺人だった。サイトで知り合い交際関係になった男性に、刃物で刺されて死亡したと。
クラスの皆は驚いたけれど、それだけだった。お通夜に行くかどうかコソコソ話し合い、大半の人間は「話した事もないし」「顔も覚えてない」と云って行かなかった。ゼンさんは少女が行くと云うので、自身の親友も伴って三人一緒に行った。彼女の両親は面倒くさそうな顔で座っていた。少女が挨拶をしたけれど、「あぁわざわざどうも」程度の言葉しかなく。周りはざわめいていたけれど、彼女の死を嘆いている人は少女以外に見当たらなかった。
少女は泣いた。何も出来なかったと自分の無力さに泣いた。彼女との関係を諦めた自分の莫迦さ加減に泣いた。どんなに迷惑がられても必死に追いすがっていれば、こんな結末を彼女は迎えずに済んだのではないかと。自分はどうして、諦めてしまったんだと、泣いて。
そんな少女に、ゼンさんは云ったのだ。
自分を不幸から救えるのは自分だけだから、君が救えなくて当然でしょう――と。神様にでもなったつもりか何様のつもりだ、驕り高ぶるなと罵りまでした。
ぽかんとする少女に、ゼンさんはさらに云い募る。
――本気で救われたい人は、藁でも塵でも掴むんだよ。不幸に溺れてなるものかって足掻いて必死になるものだよ。あの子、君に縋らなかったでしょう。“不幸に酔って救われたくなかったんだよ”。不幸な目にあって苦労してる自分は偉いんだって顔して、幸せな君を見下してたじゃない。そんな奴を救えるのなんて、それこそ本当に神様だけだよ。君神様じゃなくて人でしょ。無理だよ。周りに居る人間全て救おうなんて人間の分際でおこがましい。君は君に助けてって素直に云える人だけ助けてればいいんだよ。余計な事するから莫迦を見て傷付いてるんでしょうが。人の死を悲しむのはしてもいいって云うか当たり前だけど、救えなかったなんて嘆くのは“人間に対する冒涜だよ”。――
我が前世ながらとんでもない事を云う。
案の定少女は怒ってゼンさんをブッ叩いたけれど、ゼンさんは絶対に撤回しなかった。
――救いを求めてない人を救うなんて出来ないよ。人間、どう足掻いてもさぁ――
それはそうかなと、龍治は少し思う。自分は不幸なままでいい、これでいいと思っている人間に、他人から齎される救いの言葉なんて届かない。そう云う人間に届くのは、同類の互いを哀れみあう泥のような言葉だけだ。
少しでも、ほんの少しでも良い。こんなのは厭だ、救われたい、どうにかしたいと思っていたら――その人は勝手に救われる。些細な光でも、希望と見なして。自分はまだやれるのだと、奮起出来るから。
だから――そんな言葉を前世が告げる。その前世の言葉に頷ける自分が居るから、声にする。全部を助けたい自分が、敢えて紡ぐ。“戒めのように、胸に刻む”。
人間は、そう云うものなのだと。
「――」
椋太郎が絶句した。まるであの少女のように。
そうして次の瞬間には怒りを露わにして龍治を睨みつけて。
「お、前が」
「――?」
「お前が、俺に、それを云うのかッッ――!」
肩が痛いほどの力で掴まれたと思った次の瞬間には、背中に衝撃を受けてむせた。視界がぐるりと回ってちゃぶ台と畳みが消えた。代わりに見えるのはシミのある木の天井と安物の電灯。頭のどこかが冷静に、「そりゃちゃぶ台程度の距離、大人の腕なら届くよな」と呟いている。ギシと床が軋んだ。影が被る。あ――まずい、と思ったけれど。
龍治は抵抗すら出来ず、椋太郎の手で床へと押し倒されていた。椋太郎の右手が龍治の肩を掴み、左手は手首を握りしめて床に押し付けている。龍治は小学五年生の平均より力は上だが、当然大人に敵うほどの膂力はない。足も間に体を入れられたので、蹴飛ばせはするが急所狙いは無理だろう。そもそも椋太郎相手に乱暴はしたくないのだが。
(やばい)
ひやりと汗をかく。
龍治の言葉が、椋太郎の逆鱗に触れた事を悟るがもう遅い。抵抗する術は奪われた。叫べばいいかも知れないが、口を大きく開けば気付かれてすぐに塞がれるだろう。手足が封じられた今、口だけが龍治の武器である。早々に奪われては――もう、どうにもならない。
だから龍治は黙ったまま、憎悪に歪んだ椋太郎の顔を、見上げる事しか出来なかった。
あーぁ……。
まぁ龍治も人だし子供だからしくじる事もありますよね……。問題はそのしくじりをどう挽回するかと云う事です!
頑張れ龍治! なんか似非BL表現有のタグが活躍の兆しに(ガタッ)したけど、お前なら出来る! 軌道修正出来るって信じてる!←
そして良いところで切ってみる。いや、書こうと思ったんですけど、二万字行きそうな……気が……して……。
次回に続きます。(´・ω・)
人が人云々は本で読んだこともありますが、実際に人から云われた事があって割とショッキングだった覚えがあります。
でも別にその人は私を傷つけたくて云った訳じゃなくて、心配して云ってくれたんだよなぁと今になって思う訳です。
人の優しさって千差万別ですね。生きるって難しい。




